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第六章その9 ~なかなか言えない!~ 思いよ届けの聖夜編
鬼に北海道は天国
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人間達が最後の夜を過ごしていた頃。
鬼神族の一行は、避難区を後にしていた。
辺りはかなり積雪していたが、彼らに雪の有無など関係ない。そのまま大の字になって眠ったところで、鬼は凍死しないのだ。
「いやあ、こっちの熊は結構でかいぞ。冬眠したばかりじゃからたっぷり肥えとる」
少し脇道に逸れていた紫蓮が、ヒグマを担いで戻ってきた。
本州のツキノワグマとは段違いに巨大だったが、彼らの爪や牙をもってしても、紫蓮には傷1つ付けられないのだ。
毒も効かず病気も寄生虫も心配ない……肉体的な強さだけなら、生態系の頂点に君臨する鬼神族。
このまま何の悩みも無く北の暮らしに馴染めそうだったが、前を歩く刹鬼姫は、何か考え込むように無言で歩を進めている。
剛角は片手で金棒を振り回し、枯れ木を払いながら声をかける。
「……なあ姫さんよ」
「何だい剛角」
「別れが惜しいなら、もっとおったら良かったんじゃないか?」
剛角が言うと、刹鬼姫は足を止めた。
振り返り、少し眉間に皺を寄せて、牙の生えた口を開く。
「下らない事言ってんじゃない、姉上とは十分話した。土産だって貰っただろ」
刹鬼姫の言葉どおり、3人は大きな風呂敷包みを背負っていたが、そこには人間達から貰った沢山の土産が入っていた。
収まりきらないカニの足が、風呂敷からはみ出ているのはご愛嬌だ。
「……そもそも一緒にいたところで、味方するわけにいかないだろ。あいつらに味方するって事は、双角天様に弓引くって事だ」
「……まあ、それだけは無理だわのお」
剛角も肩をすくめた。
いかに里を抜けたとは言え、3人は生粋の鬼である。
遺伝子レベルで忠誠を誓っている祖霊神・双角天に敵対するなど、どう考えても不可能なのだ。
だが、だからと言ってすっぱり割り切れる程、この姉妹は情が薄くないのである。
剛角は丘の頂上を指差しながら紫蓮に言った。
「せっかく蝦夷の最初の獲物じゃ。あの上まで行ったら、鍋にして食うか」
「そうじゃな剛角、あそこならさぞ眺めもええじゃろ」
紫蓮は振り返って手をかざし、人間達の灯を見やった。
冷たく澄み渡る空の下、ぬくもりのある光が避難区全体を彩っている。
「あそこなら、丁度人の避難区もよお見えるわ」
紫蓮は少しわざとらしく言って、剛角にウインクした。
「………………」
刹鬼姫はしばし黙っていたが、無理に話題を変えようとする。
「そっそんな事よりっ、他の魔族の連中はどうしてるんだろうね??」
剛角達は苦笑し、無理にその話題に乗る事にした。
鬼神族の一行は、避難区を後にしていた。
辺りはかなり積雪していたが、彼らに雪の有無など関係ない。そのまま大の字になって眠ったところで、鬼は凍死しないのだ。
「いやあ、こっちの熊は結構でかいぞ。冬眠したばかりじゃからたっぷり肥えとる」
少し脇道に逸れていた紫蓮が、ヒグマを担いで戻ってきた。
本州のツキノワグマとは段違いに巨大だったが、彼らの爪や牙をもってしても、紫蓮には傷1つ付けられないのだ。
毒も効かず病気も寄生虫も心配ない……肉体的な強さだけなら、生態系の頂点に君臨する鬼神族。
このまま何の悩みも無く北の暮らしに馴染めそうだったが、前を歩く刹鬼姫は、何か考え込むように無言で歩を進めている。
剛角は片手で金棒を振り回し、枯れ木を払いながら声をかける。
「……なあ姫さんよ」
「何だい剛角」
「別れが惜しいなら、もっとおったら良かったんじゃないか?」
剛角が言うと、刹鬼姫は足を止めた。
振り返り、少し眉間に皺を寄せて、牙の生えた口を開く。
「下らない事言ってんじゃない、姉上とは十分話した。土産だって貰っただろ」
刹鬼姫の言葉どおり、3人は大きな風呂敷包みを背負っていたが、そこには人間達から貰った沢山の土産が入っていた。
収まりきらないカニの足が、風呂敷からはみ出ているのはご愛嬌だ。
「……そもそも一緒にいたところで、味方するわけにいかないだろ。あいつらに味方するって事は、双角天様に弓引くって事だ」
「……まあ、それだけは無理だわのお」
剛角も肩をすくめた。
いかに里を抜けたとは言え、3人は生粋の鬼である。
遺伝子レベルで忠誠を誓っている祖霊神・双角天に敵対するなど、どう考えても不可能なのだ。
だが、だからと言ってすっぱり割り切れる程、この姉妹は情が薄くないのである。
剛角は丘の頂上を指差しながら紫蓮に言った。
「せっかく蝦夷の最初の獲物じゃ。あの上まで行ったら、鍋にして食うか」
「そうじゃな剛角、あそこならさぞ眺めもええじゃろ」
紫蓮は振り返って手をかざし、人間達の灯を見やった。
冷たく澄み渡る空の下、ぬくもりのある光が避難区全体を彩っている。
「あそこなら、丁度人の避難区もよお見えるわ」
紫蓮は少しわざとらしく言って、剛角にウインクした。
「………………」
刹鬼姫はしばし黙っていたが、無理に話題を変えようとする。
「そっそんな事よりっ、他の魔族の連中はどうしてるんだろうね??」
剛角達は苦笑し、無理にその話題に乗る事にした。
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