92 / 160
第六章その10 ~決戦開始よ!~ 作戦名・日はまた昇る編
山神たちの反乱
しおりを挟む
「ぐっ……だがいつまでそれがもつものか。まだまだ配下はごまんといるのだ」
仄宮は若干気圧された様子だったが、それでも何とか言葉を返す。
「残った者も、そろそろ動けるであろう? 出て来い、そして我に従うのだ! 降稲魂神も真之御佩刀神も、はようわらわを守るのじゃ!」
……だが事態は更に予想外の方に進んだ。
館が大きく揺れ動くと、複数の場所で爆発したのだ。幾多の邪神が吹き飛び、逃げ惑い、もはや阿鼻叫喚の有り様だった。
「どうした、何があったのじゃ!?」
仄宮は逃げてきた邪神の1人を掴み、片手で宙に釣り上げる。
「そっ、それが仄宮様……謀反です! 山神をはじめとした自然神が、背後から仕掛けて来まして……!」
「何だと……!?」
仄宮は眼を見開き、再び館の方を睨んだ。
ちょうど崩れた広間の辺りには、眉目秀麗な男神の姿が見えた。
鳥獣や草花が描かれた衣をまとうその神は、有力な山神たる高嶺瑞山之神である。
彼は明確な敵意を浮かべ、仄宮を睨み付ける。
「よくも騙してくれたな、仄宮よっ……! 我が鎮座地を砕き、奪い取ろうとする貴様の企み……万死に値するっ……!」
館の中は大乱戦となり、名うての武神たる降稲魂神や真之御佩刀神も、その対処に追われていたのだ。
「おのれ……おのれっ……!!!」
仄宮はしばし燃え上がる館を睨んでいたが、やがて宙に舞い上がった。
「この場は任せる、わらわは夫の元へ向かうぞ! 夫が戻れば、こんな奴らは全て灰に出来るのじゃ!」
だが空を飛び、柱に向かおうとした仄宮の前に、1人の女神が立ちふさがった。
長い黒髪に桜の花枝を挿し、古代の鎧に身を包んでいる。
手に剣を携えた彼女は、紛れも無く日の本を守る女神が1人。
富士山本宮浅間神社の祭神・木花佐久夜姫だった。
普段は笑みを絶やさぬ彼女も、今は鋭く仄宮を睨み付けている。
「……そっちじゃないでしょ? あなたの相手は私がやるわ」
「おのれ、頭に乗るなよ大山積の娘がっ……!」
仄宮は怒り狂って牙を剥き出した。
眼は怒りで燃え上がり、髪も衣裳も激しい邪気で乱れている。
先ほどまでの余裕は微塵もないが、この姿こそが魔王の后に相応しいと言えなくもない。
「のこのことしゃしゃり出おって、貴様も姉と同じ場所に送ってやる!」
「それは嬉しいわ。私の自慢の、世界一の姉なのよ」
佐久夜姫はまるで動じず、眼前に剣を構える。
「でもその前に、あなたにお仕置きしないとね……?」
「ほざけっ! やれ、貴様ら!」
仄宮の号令と共に、女官達が押し寄せてくる。
眼を光らせ、髪を振り乱した女官達は、まさしく鬼女と呼ぶに相応しい形相だった。
大混乱、大混戦。
まさしく神話の戦いであり、双方共に全力である。
邪神達は目の前の戦いに必死で、誰も正しく状況を把握していない。
…………そんな戦場を駆け抜ける、白い霊獣の姿があった。
もちろん狛犬のコマであり、彼の背には、打ち出の小槌で小さくなった誠達が乗っていたのだ。
仄宮は若干気圧された様子だったが、それでも何とか言葉を返す。
「残った者も、そろそろ動けるであろう? 出て来い、そして我に従うのだ! 降稲魂神も真之御佩刀神も、はようわらわを守るのじゃ!」
……だが事態は更に予想外の方に進んだ。
館が大きく揺れ動くと、複数の場所で爆発したのだ。幾多の邪神が吹き飛び、逃げ惑い、もはや阿鼻叫喚の有り様だった。
「どうした、何があったのじゃ!?」
仄宮は逃げてきた邪神の1人を掴み、片手で宙に釣り上げる。
「そっ、それが仄宮様……謀反です! 山神をはじめとした自然神が、背後から仕掛けて来まして……!」
「何だと……!?」
仄宮は眼を見開き、再び館の方を睨んだ。
ちょうど崩れた広間の辺りには、眉目秀麗な男神の姿が見えた。
鳥獣や草花が描かれた衣をまとうその神は、有力な山神たる高嶺瑞山之神である。
彼は明確な敵意を浮かべ、仄宮を睨み付ける。
「よくも騙してくれたな、仄宮よっ……! 我が鎮座地を砕き、奪い取ろうとする貴様の企み……万死に値するっ……!」
館の中は大乱戦となり、名うての武神たる降稲魂神や真之御佩刀神も、その対処に追われていたのだ。
「おのれ……おのれっ……!!!」
仄宮はしばし燃え上がる館を睨んでいたが、やがて宙に舞い上がった。
「この場は任せる、わらわは夫の元へ向かうぞ! 夫が戻れば、こんな奴らは全て灰に出来るのじゃ!」
だが空を飛び、柱に向かおうとした仄宮の前に、1人の女神が立ちふさがった。
長い黒髪に桜の花枝を挿し、古代の鎧に身を包んでいる。
手に剣を携えた彼女は、紛れも無く日の本を守る女神が1人。
富士山本宮浅間神社の祭神・木花佐久夜姫だった。
普段は笑みを絶やさぬ彼女も、今は鋭く仄宮を睨み付けている。
「……そっちじゃないでしょ? あなたの相手は私がやるわ」
「おのれ、頭に乗るなよ大山積の娘がっ……!」
仄宮は怒り狂って牙を剥き出した。
眼は怒りで燃え上がり、髪も衣裳も激しい邪気で乱れている。
先ほどまでの余裕は微塵もないが、この姿こそが魔王の后に相応しいと言えなくもない。
「のこのことしゃしゃり出おって、貴様も姉と同じ場所に送ってやる!」
「それは嬉しいわ。私の自慢の、世界一の姉なのよ」
佐久夜姫はまるで動じず、眼前に剣を構える。
「でもその前に、あなたにお仕置きしないとね……?」
「ほざけっ! やれ、貴様ら!」
仄宮の号令と共に、女官達が押し寄せてくる。
眼を光らせ、髪を振り乱した女官達は、まさしく鬼女と呼ぶに相応しい形相だった。
大混乱、大混戦。
まさしく神話の戦いであり、双方共に全力である。
邪神達は目の前の戦いに必死で、誰も正しく状況を把握していない。
…………そんな戦場を駆け抜ける、白い霊獣の姿があった。
もちろん狛犬のコマであり、彼の背には、打ち出の小槌で小さくなった誠達が乗っていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる