新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第六章その10 ~決戦開始よ!~ 作戦名・日はまた昇る編

山神たちの反乱

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「ぐっ……だがいつまでそれがもつものか。まだまだ配下はごまんといるのだ」

 仄宮は若干気圧けおされた様子だったが、それでも何とか言葉を返す。

「残った者も、そろそろ動けるであろう? 出て来い、そして我に従うのだ! 降稲魂神いなだま真之御佩刀神みはかしも、はようわらわを守るのじゃ!」

 ……だが事態は更に予想外の方に進んだ。

 館が大きく揺れ動くと、複数の場所で爆発したのだ。幾多の邪神が吹き飛び、逃げ惑い、もはや阿鼻叫喚あびきょうかんの有り様だった。

「どうした、何があったのじゃ!?」

 仄宮は逃げてきた邪神の1人を掴み、片手で宙に釣り上げる。

「そっ、それが仄宮様……謀反むほんです! 山神をはじめとした自然神じねんしんが、背後から仕掛けて来まして……!」

「何だと……!?」

 仄宮は眼を見開き、再び館の方を睨んだ。

 ちょうど崩れた広間の辺りには、眉目秀麗びもくしゅうれい男神おとこがみの姿が見えた。

 鳥獣や草花そうかが描かれた衣をまとうその神は、有力な山神たる高嶺瑞山之神たかねみずやまのかみである。

 彼は明確な敵意を浮かべ、仄宮を睨み付ける。

「よくも騙してくれたな、仄宮よっ……! 我が鎮座地を砕き、奪い取ろうとする貴様の企み……万死に値するっ……!」

 館の中は大乱戦となり、名うての武神たる降稲魂神くだちいなだまのかみ真之御佩刀神つつのみはかしのかみも、その対処に追われていたのだ。

「おのれ……おのれっ……!!!」

 仄宮はしばし燃え上がる館を睨んでいたが、やがて宙に舞い上がった。

「この場は任せる、わらわは夫の元へ向かうぞ! 夫が戻れば、こんな奴らは全て灰に出来るのじゃ!」

 だが空を飛び、柱に向かおうとした仄宮の前に、1人の女神が立ちふさがった。

 長い黒髪に桜の花枝を挿し、古代の鎧に身を包んでいる。

 手に剣をたずさえた彼女は、紛れも無く日の本を守る女神が1人。

 富士山本宮浅間神社の祭神・木花佐久夜姫このはなさくやひめだった。

 普段は笑みを絶やさぬ彼女も、今は鋭く仄宮を睨み付けている。

「……そっちじゃないでしょ? あなたの相手は私がやるわ」

「おのれ、に乗るなよ大山積おおやまつみの娘がっ……!」

 仄宮は怒り狂って牙を剥き出した。

 眼は怒りで燃え上がり、髪も衣裳も激しい邪気で乱れている。

 先ほどまでの余裕は微塵もないが、この姿こそが魔王の后に相応しいと言えなくもない。

「のこのことしゃしゃり出おって、貴様も姉と同じ場所に送ってやる!」

「それは嬉しいわ。私の自慢の、世界一の姉なのよ」

 佐久夜姫はまるで動じず、眼前に剣を構える。

「でもその前に、あなたにお仕置きしないとね……?」

「ほざけっ! やれ、貴様ら!」

 仄宮の号令と共に、女官達が押し寄せてくる。

 眼を光らせ、髪を振り乱した女官達は、まさしく鬼女と呼ぶに相応しい形相だった。



 大混乱、大混戦。

 まさしく神話の戦いであり、双方共に全力である。

 邪神達は目の前の戦いに必死で、誰も正しく状況を把握していない。

 …………そんな戦場を駆け抜ける、白い霊獣の姿があった。

 もちろん狛犬のコマであり、彼の背には、打ち出の小槌で小さくなった誠達が乗っていたのだ。
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