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第六章その11 ~時代絵巻!?~ 過去の英雄そろい踏み編

戦国のドリームチーム!

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 強い反動と共に、誠達は白い霊気の壁を突き抜けた。

 コマはしばらく走り続けたが、そこで再び足を止める。

 彼方から迫り来る、凄まじい轟音を耳にしたからだ。

 黒山のような軍勢が地を埋め尽くし、こちらに押し寄せてくるのである。

「コマ、これもさっきと同じか!?」

 誠が尋ねると、コマは焦った様子で答えた。

「1体ずつはさっきより弱いみたい。でも凄い数だよ……!」

「数で押し潰す気ね、コマ」

 小槌の霊気操作に集中していた鶴でさえ、思わず会話に参加してきた。

「あれだけいたら、どうやっても逃げられないわ」

 ……だがその時である。

「逃げるとは? 何を言っているのだ、この娘子むすめごは」

 ふと投げかけられた声に、一同は見上げる。

 そこにいたのは1人の武将だった。

 馬に乗り、口元にはわずかな髭。

 眉も髪も黒々とし、細身の顔にはかなりの威厳が感じられる。

「おっ、織田信長……さんっ!?」

 誠はの将に見覚えがあった。

 九州で霊界に行った時、戦国武将の顔を見ていたからだ。

 信長は誠達を一瞥いちべつし、それから不敵な笑みを浮かべた。

「藤吉郎。相手はよほど戦下手いくさべたと見えるが、どうだ?」

「はっ、上様のお見立て通りにございましょう」

 信長の横に進み出たのは、やはり馬に乗った小柄な男性だったが、彼は後の豊臣秀吉である。

「陣立ても何も滅茶苦茶で。これは楽勝でございますなあ」

 そしてその言葉を皮切りに、薄闇の中、次々に武将の旗印が立ち上がった。

 歴史好きなら、誰もが想像した事があるだろう。

 もし名だたる武将が共闘し、夢のタッグを組んだとしたら、果たしてどんな戦いになるのか。

 ……もちろん、こうなるのである。

 ほら貝の音が響き、勇壮な陣太鼓が打ち鳴らされる。

 無数の矢が弧を描いて敵軍を襲い、多くのむくろを撃ち倒す。

 それを潜り抜けてきた相手には、火縄銃が連続射撃で浴びせられ、敵軍は総崩れとなった。

 そこに騎馬隊が突撃し、散々に蹴散らしていく。

 そもそもが血で血を洗う戦国の世を生きた武将達である。

 ただ数を集めただけ、ただ闇雲に突進するだけの亡者達の軍勢とは、指揮する将の器が違った。

 一応敵軍にも、指揮をとる大型の骸が見えたが、逃げ惑う配下に押され、無様に倒れる有様である。

 その乱れた敵陣に、武将達の策が次々とはまっていく。

「す、すごいっ……ていうかまさか、助けてくれるなんて」

 誠が感激していると、傍らで島津義弘しまづよしひろが言った。

「この地は諏訪だ。また告げ口されてもかなわぬからな?」

 そう言って島津はニヤリと笑う。

「長い乱世で、幾多の民の命が散った。そうして踏み固まった日の本のいしずえを、下らん連中に壊されてたまるか」

 鶴は調子よく同意する。

「そうそう、私はあの時そういう事を言いたかったの」

 嘘をつくなっ、とツッコミを入れる島津をよそに、信長は誠達を横目で見た。

「はよう行かれよ、高天原の勇者達よ。八百万の神が命により、この場は我らが引き受ける」

「あっ、ありがとうございますっ! うわっ!?」

 誠が言い終わる前にコマが駆け出し、一同は武将達に手を振った。

 コマが駆けやすいよう、また敵がコマを追えないよう、武将達は巧みに指揮して敵を押しやってくれる。

「やっぱりみんないい人だわ。鶴ちゃんの誠意が通じたのね」

 鶴が満足げに頷くと、コマはよく言うよ、とツッコミを入れる。

 ともかく柱は、もう目の前に迫っていた。

「さあ、いよいよ中に飛び込むよ!」

 柱は今は動きを止めており、表面はあちこち砕けて穴が開いている。

 コマはその穴の1つを選び、大きくジャンプして飛び込んだのだ。
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