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第六章その12 ~魔王を止めろ!~ 決死の柱突入編
魔族だって他人事じゃない!
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その瞬間をカノンは見ていた。
突如現れたのは、鬼とは違う魔族の鎧だ。
人型の上半身を包む外皮は似ていたが、下半身は多脚の獣のようで、いかにも敏捷そうな見た目である。
それは大きく跳躍すると、手にした白く細長い何かを、老鬼の鎧に突き立てたのだ。
『!!!???』
言葉にならない悲鳴を上げると、巨体はよろめいて後ずさった。
剛角が我に返って呼びかける。
「とっ、虎丸かあっ!? 何でここに!?」
「お前ら、チンタラやってんじゃねえぞ……!」
すぐに画面に虎丸の顔が映った。
長い髪は逆立ち、顔は派手な戦化粧に彩られている。
だが好戦的な物言いとは裏腹に、彼の表情は苦しげで、そばにいる兄弟に支えられていた。
「お前も死にかけじゃねえかドラ猫っ! てかどうした、誰にやられた!?」
「……ちょっとドジ踏んでよぉ。常夜命のツラ見に行ったら、古鬼どもに襲われた」
虎丸が差し出した片手は、黒く染まって毛が焼け焦げ、今も微かに痙攣している。
「で、気付いてみたらこのザマだ。とっくに戦が始まってるし……館の窓から、お前らが走ってくのが見えたんでな」
『ぐうっ……無明権現の手下か。仕留めたと思ったが、しぶとさだけは一丁前だな』
老鬼達の乗る鎧は、うめき声を上げながら体勢を立て直した。
表面の腐れ水は乱れ、まだ本調子ではないようだ。
(……まだ効いてる。なんでたかが一撃で、あんなダメージを受けたの?)
カノンは内心いぶかしんだが、その疑問に答えるように、虎丸の鎧は背負ったものを構えた。
「そいつは呪いの塊だ、全神連が作った柱とは対極……だからこいつをブッ刺したんだよ」
虎丸の鎧が手にしたものは、あの細く白い棒……つまり全神連が千年に渡り膨大な霊気を凝縮させて作った柱の一部だ。
「そいつらに呪いを食らった時、俺はこれを砕いて倒れた。そしたら呪いが弱まった。だから気付いたってわけだ」
『き、貴様っ……!!!』
老鬼達は語気に怒りを滲ませるが、来訪者は虎丸だけでは無かった。
更に数体の鎧が現れ、画面に魔族が映ったのだ。
「いや~、何とか間に合ったみたいだなあ。燐火ちゃんがめかしこんでたから、間に合わないかと思ったけど」
「人のせいにしないで焔、あなたが道に迷ってたんでしょ」
少しチャラついた印象の焔と、しっかりした表情の燐火。
彼らは無駄口を叩いていたが、そこで2人の背後から、更なる鎧が姿を現す。
画面には、人でいえば50代程の男が映し出される。
恐らくはこの2人の上役だろうが、焔は気にせず会話を続けた。
「それに不知火様だって連れて来たんだ。大手柄だろ燐火ちゃん」
「どうだか」
会話を続ける2人に苛立ち、虎丸が口を挟んだ。
「やめろ熊襲どもっ、いつまでもイチャついてんじゃねえっ!」
「いっ、イチャつく!? ちょっと虎丸、」
燐火は赤くなって慌てたが、虎丸はもう相手にしなかった。
「常夜命……あれは命あるモンの天敵だ。あれが出たらこの世が終わるし、無明権現様も熊襲御前様も、あいつに喰われて消えちまうんだよ」
虎丸はそこで老鬼達に呼びかける。
「なのに古鬼ども、何でお前らは気付かねえ! お前らの双角天様だって、あいつにとっちゃ餌だろうが!」
だがそこで、五老鬼達はようやく答えた。
『消えるだと? だったらさっさと消えればいいのだ……!』
「なっ……!!?」
予想外の答えに、虎丸も、他の魔族達も絶句する。
『何がおかしい? 長らく地の底で遊んでいた邪神に代わり、この世は我らが治めてきたのだ。今更祖霊神などいらぬわ……!』
「てってめえらっ……言うに事欠いて」
虎丸は言葉を失うが、老鬼達はなおも言った。
『しょせん双角天など、一族を治める方便だった。ヤツが消えれば頂は我らだ。あれが双角天を始末するなら、我らにとって利しか無い……!』
「バカてめえっっ、そんな相手じゃねえだろうがっ!!!」
虎丸は必死に叫ぶが、古鬼達は耳を貸さなかった。
どんな危険な相手でも、自分だけはうまくやれる。自分だけは殺されない……そんな愚か者特有の思考に陥っていたからだ。
『言いたい事はそれだけか? だったら終わりだ、全員死ね!』
五老鬼の乗る鎧は、そこで一際大きな雄叫びを上げた。
全身を覆う腐れ水の勢いは増し、周囲の全てを薙ぎ払っていく。
「ちっ……!」
虎丸も、焔も燐火も、そして鬼達も。カノンや難波、宮島も香川も。
皆が周囲に散り、白い霊気の棒を折り取って攻撃を加える。
投げつけられた棒が突き刺さる度、鎧の腐れ水は蛇行していく。
『おのれ、おのれっ……あと一歩、あと一歩で全てが手に入るというのに……!』
古鬼達は恨みに満ちた言葉を吐いたが…………その時だった。
ふと一同の耳に、不可思議なざわめきが聞こえたのだ。
突如現れたのは、鬼とは違う魔族の鎧だ。
人型の上半身を包む外皮は似ていたが、下半身は多脚の獣のようで、いかにも敏捷そうな見た目である。
それは大きく跳躍すると、手にした白く細長い何かを、老鬼の鎧に突き立てたのだ。
『!!!???』
言葉にならない悲鳴を上げると、巨体はよろめいて後ずさった。
剛角が我に返って呼びかける。
「とっ、虎丸かあっ!? 何でここに!?」
「お前ら、チンタラやってんじゃねえぞ……!」
すぐに画面に虎丸の顔が映った。
長い髪は逆立ち、顔は派手な戦化粧に彩られている。
だが好戦的な物言いとは裏腹に、彼の表情は苦しげで、そばにいる兄弟に支えられていた。
「お前も死にかけじゃねえかドラ猫っ! てかどうした、誰にやられた!?」
「……ちょっとドジ踏んでよぉ。常夜命のツラ見に行ったら、古鬼どもに襲われた」
虎丸が差し出した片手は、黒く染まって毛が焼け焦げ、今も微かに痙攣している。
「で、気付いてみたらこのザマだ。とっくに戦が始まってるし……館の窓から、お前らが走ってくのが見えたんでな」
『ぐうっ……無明権現の手下か。仕留めたと思ったが、しぶとさだけは一丁前だな』
老鬼達の乗る鎧は、うめき声を上げながら体勢を立て直した。
表面の腐れ水は乱れ、まだ本調子ではないようだ。
(……まだ効いてる。なんでたかが一撃で、あんなダメージを受けたの?)
カノンは内心いぶかしんだが、その疑問に答えるように、虎丸の鎧は背負ったものを構えた。
「そいつは呪いの塊だ、全神連が作った柱とは対極……だからこいつをブッ刺したんだよ」
虎丸の鎧が手にしたものは、あの細く白い棒……つまり全神連が千年に渡り膨大な霊気を凝縮させて作った柱の一部だ。
「そいつらに呪いを食らった時、俺はこれを砕いて倒れた。そしたら呪いが弱まった。だから気付いたってわけだ」
『き、貴様っ……!!!』
老鬼達は語気に怒りを滲ませるが、来訪者は虎丸だけでは無かった。
更に数体の鎧が現れ、画面に魔族が映ったのだ。
「いや~、何とか間に合ったみたいだなあ。燐火ちゃんがめかしこんでたから、間に合わないかと思ったけど」
「人のせいにしないで焔、あなたが道に迷ってたんでしょ」
少しチャラついた印象の焔と、しっかりした表情の燐火。
彼らは無駄口を叩いていたが、そこで2人の背後から、更なる鎧が姿を現す。
画面には、人でいえば50代程の男が映し出される。
恐らくはこの2人の上役だろうが、焔は気にせず会話を続けた。
「それに不知火様だって連れて来たんだ。大手柄だろ燐火ちゃん」
「どうだか」
会話を続ける2人に苛立ち、虎丸が口を挟んだ。
「やめろ熊襲どもっ、いつまでもイチャついてんじゃねえっ!」
「いっ、イチャつく!? ちょっと虎丸、」
燐火は赤くなって慌てたが、虎丸はもう相手にしなかった。
「常夜命……あれは命あるモンの天敵だ。あれが出たらこの世が終わるし、無明権現様も熊襲御前様も、あいつに喰われて消えちまうんだよ」
虎丸はそこで老鬼達に呼びかける。
「なのに古鬼ども、何でお前らは気付かねえ! お前らの双角天様だって、あいつにとっちゃ餌だろうが!」
だがそこで、五老鬼達はようやく答えた。
『消えるだと? だったらさっさと消えればいいのだ……!』
「なっ……!!?」
予想外の答えに、虎丸も、他の魔族達も絶句する。
『何がおかしい? 長らく地の底で遊んでいた邪神に代わり、この世は我らが治めてきたのだ。今更祖霊神などいらぬわ……!』
「てってめえらっ……言うに事欠いて」
虎丸は言葉を失うが、老鬼達はなおも言った。
『しょせん双角天など、一族を治める方便だった。ヤツが消えれば頂は我らだ。あれが双角天を始末するなら、我らにとって利しか無い……!』
「バカてめえっっ、そんな相手じゃねえだろうがっ!!!」
虎丸は必死に叫ぶが、古鬼達は耳を貸さなかった。
どんな危険な相手でも、自分だけはうまくやれる。自分だけは殺されない……そんな愚か者特有の思考に陥っていたからだ。
『言いたい事はそれだけか? だったら終わりだ、全員死ね!』
五老鬼の乗る鎧は、そこで一際大きな雄叫びを上げた。
全身を覆う腐れ水の勢いは増し、周囲の全てを薙ぎ払っていく。
「ちっ……!」
虎丸も、焔も燐火も、そして鬼達も。カノンや難波、宮島も香川も。
皆が周囲に散り、白い霊気の棒を折り取って攻撃を加える。
投げつけられた棒が突き刺さる度、鎧の腐れ水は蛇行していく。
『おのれ、おのれっ……あと一歩、あと一歩で全てが手に入るというのに……!』
古鬼達は恨みに満ちた言葉を吐いたが…………その時だった。
ふと一同の耳に、不可思議なざわめきが聞こえたのだ。
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