新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第六章その12 ~魔王を止めろ!~ 決死の柱突入編

その名を口にしてはいけない

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『…………我はそ』

 声は確かにそう言った。老鬼達の言葉ではない。

 周囲を囲む壁……その外側から、いっせいに無数の声が語りかけてくるのだ。

「答えちゃだめ!!!」

 カノンは咄嗟とっさに叫んでいた。

「相手にしないで! 絶対に答えたらだめよっ!」

 そうこう言う間にも、周囲の壁は音を立ててひび割れていく。そして壁の隙間から、黒い液体のようなものが、じわじわと染み出してくるのだ。

「ちっ、もうここまで伸びてきてやがる……!!!」

 虎丸は焦って呟いたが、それは隊員達も同じだ。

「や、やばいやんこれ……」

「まともな神さんじゃなさそうだな……」

 難波、香川の言葉を裏付けるように、声はどんどんその数を増やしていく。

『我は誰そ』

『我は誰そ』

 そんな呪言のような呼びかけが、言葉を発せぬ一同に代わって鳴り響いた。

 そして老鬼達が口を開いた。

『ふ、ふはははっ、残念だったな! 最後に勝つのは我々だったようだ!』

 !!!!!?????

 その場の全員が戦慄せんりつした。こいつらは完全に正気を失っている。まさかこれを見せ付けられて、まだ懲りていないというのか。

 壁の声は再び問いかけた。

『…………答えよ。我は誰そ』

 老鬼達は喜びに満ちた声で答えた。

『はい! 恐れ多くも、常夜常日断命とこよつねひたちのみこと様でござりますっ……!!!』

 ………………一瞬、全てが静まり返った。

 カノン達も、魔族も動く事が出来なかった。

 ただ老鬼達だけが、耐え切れずに笑い声を上げる。

『ふは……ふははははっ…………ふははははははっ……!!!』

 ……だが次の瞬間だった。

 黒い無数の腕が、壁を突き破って現れたのだ。

 それらは老鬼達の鎧を掴み、壁の方へと引き寄せていく。

『や、やめろっ、我らは味方だっ!!?』

 もう全員が理解していた。あの手は一度掴んだら絶対に放さない。

 あの老鬼達が作った呪物ですら、魔王にとってご馳走ちそうに過ぎないのだ。

 やがて殺到する力に耐えられなくなったのか、柱の壁が崩れ始めた。

 カノン達も魔族も呆然と後ずさり、周囲を見回す。

 そこに一瞬の隙が生じたのだ。

『おのれ、おのれえええっっっ!!!』

 最後の力を振り絞って伸ばした老鬼達の鎧の腕が、カノンと刹鬼姫に殺到していた。

(あっ……!)

 カノンは瞬時に理解した。

 これは当たる。どうあがいても避けられるタイミングではない。

 機体の属性添加機を起動させても、加速するまでに攻撃は当たるだろう。

 だったら……せめて妹だけでも……!!!

 カノンは隣にいた刹鬼姫の鎧を突き飛ばした。

「なっ、姉上っ!!?」

 刹鬼姫の声が、やけにはっきりと聞こえた。

 思えばこの妹には、長らく苦労をかけてきたのだ。

 自分が里抜けしたために、妹はこんな恐ろしい古鬼どもの下につき、一族をとりまとめる重責を背負わねばならなかった。

 その罪滅ぼしになるかどうかは分からなかったが、ともかく体は動いていた。

 画面上で目を見開き、何かを叫ぶ刹鬼姫。その姿を最後に目に焼きつけながら、カノンは覚悟を決めたのだ。

 …………そしてほむらが口を開いた。

「……し、不知火……様……???」

 呆けたような表情の彼は、不思議そうにそう呟く。

 呼ばれた主は、カノンの前に立ちはだかって老鬼の腕を受け止めていたのだ。

『おっ、おのれ不知火っっっ、なぜ邪魔をする!!? 貴様も同じ立場であろうが!!!』

 だが不知火は淡々と答える。

「一緒にするな、この下郎が……! 一族を喰らう貴様等などとな……!」

 不知火と呼ばれた魔族は、焔達に言葉をかける。

「……行け、お前達。御前様と共にあれ……!」

 その言葉を最後に、彼の鎧は引き寄せられた。

 そのまま老鬼どもの鎧と共に、壁の向こうに消えていったのだ。

「不知火……さま……?」

 隣火と呼ばれた魔族の女も、呆然と壁の穴を見つめている。

 だが感慨に浸る間など無かったのだ。

 次の瞬間、凄まじい不可視の力が吹き荒れた。壁や床の破片が舞い上がり、火花を上げて消え失せていく。

 そして発生した膨大なエネルギーが、カノン達の機体を浮き上がらせたのだ。

 どんなにあらがおうとしても、機体は上へ上へと飛ばされていく。

「だっ駄目っ!!! まだ2人がっ!!!」

 カノンは夢中で叫んだが、そのまま上空高く吹き飛ばされてしまった。
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