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第六章その13 ~もしも立場が違ったら~ それぞれの決着編
完全復活・邪神軍団
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際限無く押し寄せる敵に、さしもの神武勲章隊も苦戦していた。
「おおおおおおおおっ!!!」
裂帛の気合いで相手を両断するものの、そこでつかさは眩暈を覚える。
「……っ!?」
目の前がぼやけ、平衡感覚がおかしくなる。
機体がよろめいて片膝をつくが、なんとか槍を杖代わりにして、完全に倒れるのを拒否した。
「……やっ、やだなあつかさ、跪いて。こんな所でプロポーズかい?」
画面には、いつものように無駄口を叩くヒカリが見えたが、彼女の顔も苦しげだった。
「大丈夫か、つかさにヒカリ……!」
「一旦下がって、盾になるからっ……!」
隊長の船渡、副隊長の嵐山がそう言うが、彼らの消耗も激しいのだ。
「遠慮しとくさ……新婚さんに無茶させたら、明日馬に何言われるか分からん」
そこで雪菜達の機体も合流してきた。
「なっ、なんとか……鶉谷スペシャル、パート6まで復活したわ……!」
「……いや、どう違うの? 雪菜」
「腕の角度が、こう、ね……」
当然ながら雪菜と天草も疲れ果て、荒い呼吸を続けている。
もちろん輪太郎とちひろも同じだ。
対して敵軍は波状攻撃を続け、いっこうにその勢いが弱まらないのだ。
(このまま続けば、いよいよヤバい……! だからって、ここで退くなんて出来ないけどな……!)
だがつかさがそう考えた時。事態は更に最悪の方向へ動いたのだ。
消耗が激しいのは、船を守る鳳達も同様だった。
始めは黒いもやのようだった邪霊達も、反魂の術が進むにつれて、どんどん力を増していたからだ。
不確かだった形状は、次第に人のそれに近づき、青白い死人のような肌や、血走った目が窺えた。
やがて艦橋に入り込んだ邪霊の1体……凄まじく強力な悪霊が、周囲に幾何学模様を発生させた。
「くっ!!!」
鳳は焦るが、霊力のほとんどを使い果たしているため、ろくに霊気の結界を張れない。
ただ腕を交差させて顔と心臓を守るも、防ぎきれなかった威力が衣服のあちこちを切り裂いた。
腰の辺りからどろりとした液体が滴り、足元の床を赤く斑に染め上げていく。
(やられた、深手っ……!)
鳳は歯噛みした。
戦いの興奮で痛みはあまり感じないが、この出血ならそう長くは戦えない。
それでも怯むわけにはいかなかった。
残る力を振り絞って、太刀を脇構えに構える。
「刀技五式・流星斬っ!!!」
そのまま一気に加速して、邪霊を薙ぎ払っていた。
「姉さん、血がすごいで!」
神使のキツネが……コン三郎ではない1匹が慌てるが、鳳は首を振る。
「平気です。私達が倒れたら、姫様や黒鷹様に矛先が向きますから」
鳳は太刀を構え、自らの言葉で己を鼓舞する。
(そう、私達が戦えば、敵の目を柱の外に引き付けられる……!)
尊敬する聖者と、愛しい人。2人を同時に守れるお役目を、最後の最後で賜ったのだ。
…………だが、鳳がそこまで考えた時だった。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
不意に凄まじい轟音が響き渡った。
宙に浮いているはずの航空戦艦ですら、その波動でびりびりと震えている。
まるで巨大な鐘を打ち鳴らすような衝撃が、鳳達の肌を叩いているのだ。
「こ、これは……館から……!?」
そう、あの巨大な岩の館が鳴動していたのだ。
長時間こちらの攻撃を受け続け、かなりその形を崩していた館が……先ほどまで反撃らしき動きを見せなかった岩城が。
今は怒り狂うように揺れ動き、どす黒い邪気を立ち昇らせている。
やがて館の上空に、邪神達が現れ始めた。
それぞれ極彩色の鎧に身を包んだ邪神は、次々にその姿を増やし……巨大化して地を踏みしめた。
「あ、ああっ……ああああああっ…………!!!」
鳳はその事実を理解した。
(邪神達の反魂が……終わりつつある……!!!)
地の底から魂を引き寄せ終えた邪神達は、恐ろしい程の霊的質量を取り戻し、こうして現世に具現化したのだ。
長い修行を積んだ鳳だからこそ、その絶望的な事実を肌で理解していた。
居並ぶ邪神達と自分との、圧倒的な力の差をだ。
最早いかなる術を用いようと、その差を埋める事は出来ないだろう。
(魔王の反魂は……恐らくまだ完成していない? でも、でも他の邪神達だけで、もう、)
焦り続ける鳳をよそに、邪神の1柱が……男神が剣を掲げた。
その剣は、墳墓から発掘された古代の剣と同じ姿だ。
考古学的には、単なる儀式用かと思われていた『それ』をもたげ、邪神は強く振り下ろした。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
凄まじい威力が辺りを吹き抜け、戦場の景色を一変させた。
岩をえぐり、大地を断ち割った刃の暴風は、人の軍勢を散々に痛めつけていた。
もちろん鳳の乗る航空戦艦も例外ではなく、装甲の一部が剥ぎ取られて舞い上がる。
恐らくは風と嵐を司る神なのだろう。剣は青白い光を帯びて輝き、巻き起こった暗雲が、たちまち大粒の雨を叩き付けてきた。
当の邪神そのものも、久方ぶりの力の発露に歓喜するように笑みを浮かべ、無言で雨に身を預けている。
その目は青白く冷たく輝き、目の前で大混乱に陥る人間に、何の憐憫も感じていないようだった。
(完全に復活した邪神……あんなもの、一体どうすれば……)
呆然と立ち尽くす鳳をよそに、邪神達は行動を開始した。
神武勲章隊も歴戦の兵士達も、もう何も関係無かった。
居並ぶ邪神の前では、ただ弄ばれるだけである。
…………そして更に、最悪の事は続いたのだ。
彼方から雄叫びが聞こえたかと思うと、東の方角に土煙が巻き上がった。あの六道王子が駆け戻って来たのである。
万全のディアヌスをも手間取らせる鬼神族最強の邪神が、とうとうこの地に到着したのだ。
「ぐあああっ、くそったれがあああっっっ!!! ようやく戻ってきたぜ!!!」
六道王子は怒りに満ちた叫びを上げると、力任せに暴れ始めた。
金棒を振るって大地を引き裂き、山そのものかと思える岩盤を投げつけて。
戦闘車両も航空戦艦も、紙切れのように引き裂いていく。
倒れた人々を踏み潰し、また握り潰していく姿は、まさに災厄そのもの。
大自然の猛威がごとき邪神の前に、人々は絶望の淵に叩き落されたのだ。
「おおおおおおおおっ!!!」
裂帛の気合いで相手を両断するものの、そこでつかさは眩暈を覚える。
「……っ!?」
目の前がぼやけ、平衡感覚がおかしくなる。
機体がよろめいて片膝をつくが、なんとか槍を杖代わりにして、完全に倒れるのを拒否した。
「……やっ、やだなあつかさ、跪いて。こんな所でプロポーズかい?」
画面には、いつものように無駄口を叩くヒカリが見えたが、彼女の顔も苦しげだった。
「大丈夫か、つかさにヒカリ……!」
「一旦下がって、盾になるからっ……!」
隊長の船渡、副隊長の嵐山がそう言うが、彼らの消耗も激しいのだ。
「遠慮しとくさ……新婚さんに無茶させたら、明日馬に何言われるか分からん」
そこで雪菜達の機体も合流してきた。
「なっ、なんとか……鶉谷スペシャル、パート6まで復活したわ……!」
「……いや、どう違うの? 雪菜」
「腕の角度が、こう、ね……」
当然ながら雪菜と天草も疲れ果て、荒い呼吸を続けている。
もちろん輪太郎とちひろも同じだ。
対して敵軍は波状攻撃を続け、いっこうにその勢いが弱まらないのだ。
(このまま続けば、いよいよヤバい……! だからって、ここで退くなんて出来ないけどな……!)
だがつかさがそう考えた時。事態は更に最悪の方向へ動いたのだ。
消耗が激しいのは、船を守る鳳達も同様だった。
始めは黒いもやのようだった邪霊達も、反魂の術が進むにつれて、どんどん力を増していたからだ。
不確かだった形状は、次第に人のそれに近づき、青白い死人のような肌や、血走った目が窺えた。
やがて艦橋に入り込んだ邪霊の1体……凄まじく強力な悪霊が、周囲に幾何学模様を発生させた。
「くっ!!!」
鳳は焦るが、霊力のほとんどを使い果たしているため、ろくに霊気の結界を張れない。
ただ腕を交差させて顔と心臓を守るも、防ぎきれなかった威力が衣服のあちこちを切り裂いた。
腰の辺りからどろりとした液体が滴り、足元の床を赤く斑に染め上げていく。
(やられた、深手っ……!)
鳳は歯噛みした。
戦いの興奮で痛みはあまり感じないが、この出血ならそう長くは戦えない。
それでも怯むわけにはいかなかった。
残る力を振り絞って、太刀を脇構えに構える。
「刀技五式・流星斬っ!!!」
そのまま一気に加速して、邪霊を薙ぎ払っていた。
「姉さん、血がすごいで!」
神使のキツネが……コン三郎ではない1匹が慌てるが、鳳は首を振る。
「平気です。私達が倒れたら、姫様や黒鷹様に矛先が向きますから」
鳳は太刀を構え、自らの言葉で己を鼓舞する。
(そう、私達が戦えば、敵の目を柱の外に引き付けられる……!)
尊敬する聖者と、愛しい人。2人を同時に守れるお役目を、最後の最後で賜ったのだ。
…………だが、鳳がそこまで考えた時だった。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
不意に凄まじい轟音が響き渡った。
宙に浮いているはずの航空戦艦ですら、その波動でびりびりと震えている。
まるで巨大な鐘を打ち鳴らすような衝撃が、鳳達の肌を叩いているのだ。
「こ、これは……館から……!?」
そう、あの巨大な岩の館が鳴動していたのだ。
長時間こちらの攻撃を受け続け、かなりその形を崩していた館が……先ほどまで反撃らしき動きを見せなかった岩城が。
今は怒り狂うように揺れ動き、どす黒い邪気を立ち昇らせている。
やがて館の上空に、邪神達が現れ始めた。
それぞれ極彩色の鎧に身を包んだ邪神は、次々にその姿を増やし……巨大化して地を踏みしめた。
「あ、ああっ……ああああああっ…………!!!」
鳳はその事実を理解した。
(邪神達の反魂が……終わりつつある……!!!)
地の底から魂を引き寄せ終えた邪神達は、恐ろしい程の霊的質量を取り戻し、こうして現世に具現化したのだ。
長い修行を積んだ鳳だからこそ、その絶望的な事実を肌で理解していた。
居並ぶ邪神達と自分との、圧倒的な力の差をだ。
最早いかなる術を用いようと、その差を埋める事は出来ないだろう。
(魔王の反魂は……恐らくまだ完成していない? でも、でも他の邪神達だけで、もう、)
焦り続ける鳳をよそに、邪神の1柱が……男神が剣を掲げた。
その剣は、墳墓から発掘された古代の剣と同じ姿だ。
考古学的には、単なる儀式用かと思われていた『それ』をもたげ、邪神は強く振り下ろした。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
凄まじい威力が辺りを吹き抜け、戦場の景色を一変させた。
岩をえぐり、大地を断ち割った刃の暴風は、人の軍勢を散々に痛めつけていた。
もちろん鳳の乗る航空戦艦も例外ではなく、装甲の一部が剥ぎ取られて舞い上がる。
恐らくは風と嵐を司る神なのだろう。剣は青白い光を帯びて輝き、巻き起こった暗雲が、たちまち大粒の雨を叩き付けてきた。
当の邪神そのものも、久方ぶりの力の発露に歓喜するように笑みを浮かべ、無言で雨に身を預けている。
その目は青白く冷たく輝き、目の前で大混乱に陥る人間に、何の憐憫も感じていないようだった。
(完全に復活した邪神……あんなもの、一体どうすれば……)
呆然と立ち尽くす鳳をよそに、邪神達は行動を開始した。
神武勲章隊も歴戦の兵士達も、もう何も関係無かった。
居並ぶ邪神の前では、ただ弄ばれるだけである。
…………そして更に、最悪の事は続いたのだ。
彼方から雄叫びが聞こえたかと思うと、東の方角に土煙が巻き上がった。あの六道王子が駆け戻って来たのである。
万全のディアヌスをも手間取らせる鬼神族最強の邪神が、とうとうこの地に到着したのだ。
「ぐあああっ、くそったれがあああっっっ!!! ようやく戻ってきたぜ!!!」
六道王子は怒りに満ちた叫びを上げると、力任せに暴れ始めた。
金棒を振るって大地を引き裂き、山そのものかと思える岩盤を投げつけて。
戦闘車両も航空戦艦も、紙切れのように引き裂いていく。
倒れた人々を踏み潰し、また握り潰していく姿は、まさに災厄そのもの。
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