新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第六章その13 ~もしも立場が違ったら~ それぞれの決着編

天孫降臨…!!

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(凄いな、やっぱりお姉ちゃんは。こんな状況で、たった1人で戦ったんだもの……!)

 姉の姿を思い浮かべ、佐久夜姫は素直にそう思った。並み外れた頑丈さを誇る彼女だからこそ、あの時あんなに粘れたのだ。

 佐久夜姫はそっと目線を上げる。

 うろたえる仄宮の頭上……暗雲に包まれた天が、少しずつ明るくなってきた。

 時間切れ。皮肉にも仄宮が言った通り、時間稼ぎもようやく終わったのだ。

 緊張の糸が切れかけて、意識が遠退きそうになる佐久夜姫だったが、何とか言葉を絞り出した。

「最後の質問。そもそもどうして私達が、夜明けに合わせて攻めたと思うの……?」

「まっ………まさか貴様ら……!」

 おびえた表情を浮かべる仄宮に、佐久夜姫は笑みを送る。

そろいも揃って出てきてくれて……助かるわ……!」

 次の瞬間、空に強烈な光が輝いた。

 暗雲を切り裂くように現れた光球は、その内に確かに女神の姿を宿していた。

 彼女の額の丸鏡が、太陽そのものがごとく輝いた、次の瞬間、

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 戦場に凄まじい光が降り注いだ。

 太陽神・天照大御神あまてらすおおみかみ様の神気と、高天原たかまがはらのありったけの霊気を光に変えて、この信濃の地、ただ1点に降ろしたのだ。

「ぎゃああああああああああああああああああっっっ!!!!!」

 仄宮の悲鳴が響き渡った。もちろん他の邪神達も同じである。

 邪気に溢れたこの場所で、佐久夜姫が消耗したのと同じく……凝縮された光の気を浴びた邪神達は、炎に焼かれたように負傷していたのだ。

「効くでしょう? これで五分よ……!」

 佐久夜姫は気丈に言うと、自らも剣を握り締めた。

 仄宮は焼けただれた顔を扇で隠し、宙を飛んで逃げていく。

「待ちなさいっ……!!!」

 追おうとする佐久夜姫だったが、さすがに限界を迎えていた。

 ふらふらと宙をよろめくも、そんな佐久夜姫を支える手があった。

「…………っっっ!!?」

 一瞬、佐久夜姫は身を震わせた。

 髪を角髪ミヅラに編み上げ、黄金こがね色の鎧に身を包んだその神は、紛れも無く最愛の夫だった。

 天照大御神の血を引き、太古の昔にこのなかくにに降り立った、天孫てんそん日子番能邇邇芸命ヒコホノニニギノミコトだったのだ。

 邇邇芸ニニギは佐久夜姫を支えて降下し、そっと安全な場所に座らせた。

 頼もしくも優しい笑みを浮かべ、彼は言う。

「よくやった……!」

「はっ、はいっ……!」

 短いねぎらいだったが、それだけで十分だった。

 いつも言葉が足らず、誤解されがちな夫であるが、佐久夜姫には彼の真心が理解出来るからだ。

 佐久夜姫は涙をぬぐう。これから始まる戦いを、姉の分まで見届けねばならない。

 高天原の気を降ろせるのは、ごくごくわずかな時間だけ。その間に邪神どもを打ち倒し、決着を付ける必要がある。



 邇邇芸ニニギはまばゆい光に身を包み、再び空に舞い上がった。

 彼の周囲には、次々と鎧姿の神々が現れていく。

 日本最強の武神たる鹿島神宮が祭神、雷神・建御雷神タケミカヅチノカミ

 彼と並び称される香取神宮の祭神、剣神・経津主神フツヌシノカミ

 海原の支配者にして三貴神が1柱、大蛇退治を成し遂げた健速須佐之男命たけはやすさのおのみこと

 この信濃にまつられる諏訪大社すわたいしゃが祭神、諏訪大明神こと建御名方神タケミナカタノカミ

 そして国土全てを鎮守する、全ての山神の総大将……佐久夜姫と岩凪姫の父である大山積神おおやまつみのかみ

 他にも名だたる男神が武器を持ち、邪神達を睨み付けている。

 その様、まさに勇壮無比……!!!

 長く心細い戦いを続けた佐久夜姫にとって、何よりも頼もしく、そして雄々しく見えたのだ。

 邇邇芸ニニギが手に光をまとわせると、至高の神器・草薙クサナギの剣が現れた。

 彼は剣先で地を指し示し、叫んだ。

「この地に集うは日の本の強者達!!! 長きに渡る苦難を耐え抜き、戦い抜いた勇者なるぞ!!! 神たる我らの名にかけて、何としてでもこれを守ろう!!!」

 邇邇芸ニニギの言葉に応え、男神達は雄叫びを上げた。

 同時に彼らは光に包まれ、邪神達に負けぬ体躯へと巨大化していく。

 信濃の空に揃い踏む、少数ながらも名うての武神達……対して邪神どもも空を見上げ、牙を剥き出して叫び声を上げた。

 とうとう始まるのである。

 全ての未来を賭けた神話の戦いが、その火蓋を切ったのだ。
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