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第六章その13 ~もしも立場が違ったら~ それぞれの決着編
八幡神VS千里眼
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無数の邪神を打ち倒し、消耗の極みに達していたディアヌスだったが、その目には須佐之男の姿が映されていた。
「出てきたな須佐之男……そうだ、貴様にも借りがあったな……!」
大地に刃を突き立てて、ディアヌスは身を起こした。
気付いた邪神が切りかかってくるが、気合いとともにその胴を両断する。
「さっさとこいつらを片付けて、貴様とも再戦といくか……!」
そんなディアヌスの傍に、ガレオン達も立ち並んだ。
「ダメージは濃いようだが、動けるかディアヌス」
そう言うガレオンも、外皮のあちこちに深い傷を負っている。
ディアヌスは牙を剥き出し、唸るように答えた。
「なめるな、我を誰だと思っている。貴様らの何倍討ち倒したと思っているのだ……!!!」
「……それでこそ我らが頭領だな」
ガレオンは納得したように言うと、襲い掛かる邪神と刃を交え始めた。
勇敢に戦う善神達だったが、そこで彼らを狙う邪神があった。
焼け焦げた体から蒸気を立ち昇らせ、手には長大な弓を携えている。
千里巌徹之神……つまりは千里眼と呼ばれ、遠距離戦では天下無敵を誇る邪神だった。
その顔も半ばほどが焼け爛れていたが、最後の執念で善神達を討ち取ろうとしていたのだ。
狙いは先陣を切る邇邇芸であり、彼さえ仕留めれば、善神達の勢いは鈍るはず。さすれば数で勝る邪神に負ける要素は無い。
だが千里眼が弓を構えた途端、何か白い巨大な物が横から迫った。
「ぐおっ!!?」
咄嗟に身をかわす千里眼だったが、相手は執拗に距離を詰めて来る。
それは一頭の狛犬だった。
厳しい顔立ち、体のあちこちに輝く神紋。片目には黒い眼帯が当てられていた。
狛犬は更にこちらに飛びかかり、鋭い爪で攻撃してはまとわりついた。
防御の魔法で防ぐ千里眼だったが、弓を構える暇が無い。
接近戦を苦手とする彼にとって、何より嫌な攻撃であった。
「こっ、この狛犬、何故ここまで強い力を……!?」
だがそこで千里眼は理解する。
彼方からこちらを睨む善神の1人が、迫る狛犬と同じ気配を宿していたからだ。
古代の鎧に身を包んだその神は、千里眼も良く知る相手である。
稲荷神社、三島神社と並んで多くの分社を持ち、邪神達を見張っていた忌々しい存在だったからだ。
「八幡神……そうか、貴様の気をこいつに……!!!」
降臨した主の霊気を受けて、狛犬もその力を大幅に強化されているのだ。
そこで八幡神は、胸の前で強く手を叩き合わせた。
耳を劈く波動と共に、彼の手の中に、巨大な弓が現れる。
それも古代の丸木弓ではない。千里眼には知るよしもなかったが、八幡神を信奉した源氏武者・那須与一が持つ物と似ている。
古代から何一つ進歩していない邪神と違い、地上を統べる神々は、新しい力を取り入れていたのだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
放たれた矢は光をまとい、一直線に千里眼の肩を射抜いた。
2射目は胸を、3射目は腹を。射られる度に火花が散って、激しい苦痛が身を襲った。
「おのれっ、この千里眼に弓で挑むなどっ……!!!」
千里眼は防御を捨て、相打ち覚悟で矢をつがえた。
一撃の威力ならこちらが上。ならば最後にこの神だけでも討ち果たそうと考えたのだ。
だが千里眼が構えた右腕に、狛犬が食らいつく。激しく腕が揺さぶられ、これでは狙いが定まらない。
「こっこいつ、どこまで邪魔をっ……!!!」
千里眼は焦って振り払おうとするが、そこで自らに迫る矢を目にした。
次の瞬間、眉間を真っ向から射抜かれ、千里眼は断末魔の悲鳴を上げたのだ。
善神達の勢いは決定的となったが、そこで邪神の1柱が声を上げた。
「人質だ、人質を取れ! さすれば奴らは何も出来ぬ!」
「出てきたな須佐之男……そうだ、貴様にも借りがあったな……!」
大地に刃を突き立てて、ディアヌスは身を起こした。
気付いた邪神が切りかかってくるが、気合いとともにその胴を両断する。
「さっさとこいつらを片付けて、貴様とも再戦といくか……!」
そんなディアヌスの傍に、ガレオン達も立ち並んだ。
「ダメージは濃いようだが、動けるかディアヌス」
そう言うガレオンも、外皮のあちこちに深い傷を負っている。
ディアヌスは牙を剥き出し、唸るように答えた。
「なめるな、我を誰だと思っている。貴様らの何倍討ち倒したと思っているのだ……!!!」
「……それでこそ我らが頭領だな」
ガレオンは納得したように言うと、襲い掛かる邪神と刃を交え始めた。
勇敢に戦う善神達だったが、そこで彼らを狙う邪神があった。
焼け焦げた体から蒸気を立ち昇らせ、手には長大な弓を携えている。
千里巌徹之神……つまりは千里眼と呼ばれ、遠距離戦では天下無敵を誇る邪神だった。
その顔も半ばほどが焼け爛れていたが、最後の執念で善神達を討ち取ろうとしていたのだ。
狙いは先陣を切る邇邇芸であり、彼さえ仕留めれば、善神達の勢いは鈍るはず。さすれば数で勝る邪神に負ける要素は無い。
だが千里眼が弓を構えた途端、何か白い巨大な物が横から迫った。
「ぐおっ!!?」
咄嗟に身をかわす千里眼だったが、相手は執拗に距離を詰めて来る。
それは一頭の狛犬だった。
厳しい顔立ち、体のあちこちに輝く神紋。片目には黒い眼帯が当てられていた。
狛犬は更にこちらに飛びかかり、鋭い爪で攻撃してはまとわりついた。
防御の魔法で防ぐ千里眼だったが、弓を構える暇が無い。
接近戦を苦手とする彼にとって、何より嫌な攻撃であった。
「こっ、この狛犬、何故ここまで強い力を……!?」
だがそこで千里眼は理解する。
彼方からこちらを睨む善神の1人が、迫る狛犬と同じ気配を宿していたからだ。
古代の鎧に身を包んだその神は、千里眼も良く知る相手である。
稲荷神社、三島神社と並んで多くの分社を持ち、邪神達を見張っていた忌々しい存在だったからだ。
「八幡神……そうか、貴様の気をこいつに……!!!」
降臨した主の霊気を受けて、狛犬もその力を大幅に強化されているのだ。
そこで八幡神は、胸の前で強く手を叩き合わせた。
耳を劈く波動と共に、彼の手の中に、巨大な弓が現れる。
それも古代の丸木弓ではない。千里眼には知るよしもなかったが、八幡神を信奉した源氏武者・那須与一が持つ物と似ている。
古代から何一つ進歩していない邪神と違い、地上を統べる神々は、新しい力を取り入れていたのだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
放たれた矢は光をまとい、一直線に千里眼の肩を射抜いた。
2射目は胸を、3射目は腹を。射られる度に火花が散って、激しい苦痛が身を襲った。
「おのれっ、この千里眼に弓で挑むなどっ……!!!」
千里眼は防御を捨て、相打ち覚悟で矢をつがえた。
一撃の威力ならこちらが上。ならば最後にこの神だけでも討ち果たそうと考えたのだ。
だが千里眼が構えた右腕に、狛犬が食らいつく。激しく腕が揺さぶられ、これでは狙いが定まらない。
「こっこいつ、どこまで邪魔をっ……!!!」
千里眼は焦って振り払おうとするが、そこで自らに迫る矢を目にした。
次の瞬間、眉間を真っ向から射抜かれ、千里眼は断末魔の悲鳴を上げたのだ。
善神達の勢いは決定的となったが、そこで邪神の1柱が声を上げた。
「人質だ、人質を取れ! さすれば奴らは何も出来ぬ!」
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