9 / 18
9話~定期テスト勉強会~
しおりを挟む
9話~定期テスト勉強会~
入学、部活と来たら、次の大きなイベントは初めての1学期中間定期テストである。各々の教科担任が中間テストの出題範囲を発表していく中、余裕ぶる者、焦る者、騒ぐ者、緊張する者、すべてを諦めた者など、反応が様々でおもしろい。
ぼっちは、通常の高校生であれば人とつるんでいるであろう時間をすべて勉強に充てているため、抜かりはない。高みの見物としゃれ込もうじゃないか。
そんな日の放課後。このクラスは仲がいいのか、クラスのリーダー格の男子がみんなで勉強会を開こうなんて提案をしている。社交的面々は賛成賛成の嵐で、さらにはそこに先生まで乗っかって、急遽勉強会の打ち合わせが始まった。また面倒ごとである。
「さて、みんなで一斉にやってもちょっと教えるのが大変だから、このクラスを小さいグループに分けて、グループ内で先生役と生徒役を作る感じにしましょう」
さっそくタロウが手を上げる。久々に感じるのはなぜだろうか。
「はーい、俺先生役!」
「ちょっとお前、この間の小テスト赤点だっただろ、他のみんなまで赤点にするつもりか」
「おう!」
あまりにも素直な回答でよろしい。笑いが起きる。
「でも、グループメンバーって大事だよね。先生役と生徒役は後で決めるとしてさ、グループは自由に決めてもいいですか、先生?」
「そうだね、じゃあ仮でみんなグループに分かれてみて?」
・・・・・・好きなようにグループを作って、か。
これはぼっちにとって、フェルマーの最終定理のレベルで解決不可能、無理難題である。気がつけばいつも余る。なぜならぼっちだからだ(?)。
女子はそこらへんの配慮が上手いのか、特に普段そこまで親しいわけでもない人でも、うちのグループにおいで~と招き入れている。
男子は普段仲が良い男子と集まって盛り上がっており、他を寄せ付けないオーラを放っている。
僕は余った。当然のごとく。
いつものことである。僕はほっと胸をなで下ろし、帰宅準備を始めた。
しかし、先生は見逃さなかった。ここでまた余計な一言を挟む。
「うーん、グループを作ってくれたのはいいのだけど、ちょっと偏りが出過ぎちゃっているのも問題かな。やっぱりくじ引きの方がいいかな」
いいんだよ。偏りが出たって。全く問題なし。偏り万歳。当然生徒からも不満がでる。あんなやつがいるからこうなるんだ、と僕に対する不満も聞こえてくる。知ったことではない。
「いや、例えばほら、花崎さんのグループ、すごい人数でしょ?」
先生は僕ではなく、花崎さんのグループに生徒の注意を持っていった。たしかに花崎さんのグループだけ唯一二桁だ。ちゃっかり男子まで混ざっている。勉強を教えてほしい以外の欲望が丸わかりである。
「たしかにそうですね。それなら私もくじ引きで決めてもいいと思います。ただ勉強が得意な子がやっぱり先生役をした方がいいから、先生役は固定した方がいいかと。みんなどう思う?」
「花崎さんがそういうなら・・・・・・」
鶴の一声でくじ引きへの不満が消えた。この人望、不思議なものだ。
「じゃあ、先生役を決めて、どの先生役に教わるかはくじ引きって事にしましょう。はい、先生役やりたい人!あるいはこの人を推薦したいとかあればぜひ!」
誰々君がいいと思いますとか、誰々さんがいいと思うなどいろんな意見が飛び交う。花崎さんの名前はトップに上がっていた。
「えぇ~、私なんか先生役務まらないよ~。私は前田君を先生役に推薦します!」
勝手にやっておいてくれ、と蚊帳の外でボーっとしていた僕は跳ね起きた。能力で口止めすれば良かったが、今になっては遅い。みんなもぼっちの僕に教わるのは嫌だろう。反対しろ。
「花崎さんがいうなら仕方がないか・・・・・・」
花崎さんの名前が黒板から消えて、僕の名前が記入される。いやいやいや、仕方がないで済まさないでくれ。ほら、みんな嫌悪感一杯の目で僕を見ているんだから、それを言葉に出そうよ。ほら、反対反対。
「いや、僕もえんりょ・・・・・・」
断ろうと言いかけたとき、先生が間に入って言葉を遮る。
「いいですね!はい、じゃあ、先生役立候補終了!先生役に番号が振ってあるから、くじに書いてある番号と同じ先生役とグループを組みましょう!」
僕を無視し、次の段階へ無理矢理持っていかれた。仕方がない。次の作戦を練らねばならない。どうする。
「先生役は10人決まったから、それぞれ3人に1人が教える感じですね~。番号は××君が一番、○○さんが二番、△△さんが三番・・・・・・そして前田君が十番っと」
よし、みんなが十番を引かなければいいわけだ。ん、あれはチャンスだ。先生が教卓でくじを作りながら各番号ごとに何枚あるかチェックしている。なるほど、あの束が十番のくじか。
なにか気を散らさなければならない。やったことはないが・・・・・・試してみるか。
僕は窓の外の地面に目を下ろし、今までためていたエネルギーをすべて使い、能力を行使した。大地よ、揺れろ!
「うぉ!」「きゃー!?」
「みなさん!机の下に隠れて!地震です!」
本当に揺れた。震度4~5くらいか。まさかこの力で大地まで揺らせるとは。実際にやっておきながら末恐ろしい。生徒が一斉に机の下に隠れているすきに十番のくじ三枚を丸めてゴミ箱に葬り去り、僕が書いた新たな1番、2番、3番(番号は適当)のくじを束の中に紛れ込ませた。能力を使えば造作もない。
くじの総数は変わらないから、誰かが余ることはない。くじも先生のミスとしてやり直しまですることはないだろう。勉強会をするのにそこまで手間をかけていたら本末転倒だからな。さぁ結果が楽しみだ。
開票はスムーズに進んだ。予想通り、一番のグループ、二番のグループ、三番のグループは他より一人多く、そしてだれも十番にはだれも入らなかった。
「あれ、おかしいな。十番だけ入れ忘れちゃったかな?」
先生が困惑している。十番はゴミ箱の中だ。
「はは、前田のやつ、先生からも見放されてるぞ」
「ほんと、筋金入りのぼっちだな」
嫌な笑い声だ。おそらくざまぁみやがれと生徒一同思っているだろうが、この結果は僕が作っているのだとは、到底だれも予想だにしないだろう。
「前田君ごめんね。やりなおそうか?」
「いえ、大丈夫です!」
「うれしそうね・・・・・・」
本当にすまなさそうな顔をして謝ってくる先生にすこし心がチクッとしたが、これで目的は達成した。よし、図書委員の仕事サクッと終わらせて、図書部として適当に本読んで、早く帰ろう。そう思った矢先、また花崎さんが手を上げる。エネルギー切れでもはや防ぐ力は残っていなかった。くそっ!
「私、1番だったけど人数多いし、十番のグループいきます!」
・・・・・・え?
「あの、私も、じつは3番でして・・・・・・人数多くて、十番でもいいです」
雪本さんまで。
2番の人は断固拒否していた。そうだ、それが普通の反応だ。
一番のグループは必死になって花崎さんを引き留めようと奮闘している。一番のメンバー、タロウも必死だ。男3人の中、紅一点が抜けられると男子高校生的に非常に困るらしい。しかし、花崎さんの意思は堅く、その不満の視線は僕に向けられた。
一方花崎さんに対しては、気をつかっているんだ、なんて優しいんだといったまなざしである。それと比べてあいつは・・・・・・いや読み解くまでもない。
対して雪本さんに対する視線が今までは無関心的な視線だったものが、最近僕といることによって嫌悪的のもの、異物を見るようなものへと変わってきた。なんであんなやつとつるんでいるのか、ひょっとしてデキてるんじゃないか、気持ち悪、言葉には出さないがそんな雰囲気である。
良くも悪くも僕の経験則通り。僕としてはいい迷惑の一言で済むが、僕のせいで雪本さんが悪く言われるのは許せない。ただ肝心の雪本さん本人はあまり気にしている様子ではない。
いろんな視線、思惑が行き交う中、先生はとてもうれしそうにして、
「うんうん!二人ともありがとうね!ちょっといろいろあったけど勉強会はこのメンバーで行きましょう。それじゃ解散!」
生徒一同が教室を出てテスト期間前最後の部活に向かう中、あまりにも愕然として珍しく教室を出るのが最後になってしまった。それにいつになく体が気だるい。
やっとの思いで教室を出ようとすると待ち構えたように花崎さんが居る。視線を落とす。気にしない気にしない。しかし、さっと歩みを早める僕に花崎さんはこそっと耳打ちをしてきた。
「番号、みんな漢字の数字だったのに、私のくじ、普通の数字だったんだよね~。前田君、力使ったんでしょ?」
驚いて視線をあげると、もう花崎さんは「部活遅れるから~」といって走って行ってしまった。気が緩んでいた。漢数字と数字・・・・・・いつもならそんなことくらい抜かりなくこなす。これは本格的に少し休まなければいけないかもしれない。ここのところぼっちにはしんどい日々が続いている。なにか後ろから怨念のようなもの感じるし・・・・・・ん?
「なにしてたの?」
後ろを振り向くと雪本さんがいた。いつの間にいたのか、全く気がつかなかった。その今放っている殺気といい、アサシンにでもなれるのでないか。
「なにって?」
「さっき花崎さんと」
「ああ、なんかくじがおかしかったねって話ですか。それがどうかしましたか?」
「なんでもー」
なんでまたこう不機嫌なんだ。意味がわからん。ただでさえ疲れているのに勘弁してほしいものだ。
「さぁ早く図書委員行きましょう。二人で!」
「はいはい」
「それから、図書部にも行きましょう。二人で!」
「雪本さんは支店ですね」
「支店から本店に出向に参りました」
「・・・・・・」
もう言い返す気力も失せて、何も考えずにいつものルーティンに身を委ねた。
その夜、花崎さんからメールが届いた。題目は『勉強会♡』。題目だけでいかがわしさマックスである。僕がAIなら確実に、迷惑メールではじいているだろう。
『花崎です。もし良かったら土曜日、勉強教えてほしいところがあるんだけど、直接会えないかな?個人的な質問だから、雪本さんには迷惑かけられなくて、できれば二人で、がいいんだけど。返信待ってます』
この文章に絵文字がちりばめられ、とてもカラフルな文章である。
『前田です。僕は疲れました。熱もあるようです。土日は一人でゆっくりしたいので、ご遠慮させていただきます。雪本さんにお願いしてください。失礼します』
この返信メールを送った後、本当に熱が出た。小学校中学校と、どんなに心身を消耗しても風邪すら引かなかったのに、このざまとは。本格的に安定のぼっち生活3年間は脅かされていることは明白である。明日が土日であったことだけが唯一の心の救いである。
その後は食事もとらず、風呂にも入らず、制服のまま布団に倒れ込み、眠ってしまった。
入学、部活と来たら、次の大きなイベントは初めての1学期中間定期テストである。各々の教科担任が中間テストの出題範囲を発表していく中、余裕ぶる者、焦る者、騒ぐ者、緊張する者、すべてを諦めた者など、反応が様々でおもしろい。
ぼっちは、通常の高校生であれば人とつるんでいるであろう時間をすべて勉強に充てているため、抜かりはない。高みの見物としゃれ込もうじゃないか。
そんな日の放課後。このクラスは仲がいいのか、クラスのリーダー格の男子がみんなで勉強会を開こうなんて提案をしている。社交的面々は賛成賛成の嵐で、さらにはそこに先生まで乗っかって、急遽勉強会の打ち合わせが始まった。また面倒ごとである。
「さて、みんなで一斉にやってもちょっと教えるのが大変だから、このクラスを小さいグループに分けて、グループ内で先生役と生徒役を作る感じにしましょう」
さっそくタロウが手を上げる。久々に感じるのはなぜだろうか。
「はーい、俺先生役!」
「ちょっとお前、この間の小テスト赤点だっただろ、他のみんなまで赤点にするつもりか」
「おう!」
あまりにも素直な回答でよろしい。笑いが起きる。
「でも、グループメンバーって大事だよね。先生役と生徒役は後で決めるとしてさ、グループは自由に決めてもいいですか、先生?」
「そうだね、じゃあ仮でみんなグループに分かれてみて?」
・・・・・・好きなようにグループを作って、か。
これはぼっちにとって、フェルマーの最終定理のレベルで解決不可能、無理難題である。気がつけばいつも余る。なぜならぼっちだからだ(?)。
女子はそこらへんの配慮が上手いのか、特に普段そこまで親しいわけでもない人でも、うちのグループにおいで~と招き入れている。
男子は普段仲が良い男子と集まって盛り上がっており、他を寄せ付けないオーラを放っている。
僕は余った。当然のごとく。
いつものことである。僕はほっと胸をなで下ろし、帰宅準備を始めた。
しかし、先生は見逃さなかった。ここでまた余計な一言を挟む。
「うーん、グループを作ってくれたのはいいのだけど、ちょっと偏りが出過ぎちゃっているのも問題かな。やっぱりくじ引きの方がいいかな」
いいんだよ。偏りが出たって。全く問題なし。偏り万歳。当然生徒からも不満がでる。あんなやつがいるからこうなるんだ、と僕に対する不満も聞こえてくる。知ったことではない。
「いや、例えばほら、花崎さんのグループ、すごい人数でしょ?」
先生は僕ではなく、花崎さんのグループに生徒の注意を持っていった。たしかに花崎さんのグループだけ唯一二桁だ。ちゃっかり男子まで混ざっている。勉強を教えてほしい以外の欲望が丸わかりである。
「たしかにそうですね。それなら私もくじ引きで決めてもいいと思います。ただ勉強が得意な子がやっぱり先生役をした方がいいから、先生役は固定した方がいいかと。みんなどう思う?」
「花崎さんがそういうなら・・・・・・」
鶴の一声でくじ引きへの不満が消えた。この人望、不思議なものだ。
「じゃあ、先生役を決めて、どの先生役に教わるかはくじ引きって事にしましょう。はい、先生役やりたい人!あるいはこの人を推薦したいとかあればぜひ!」
誰々君がいいと思いますとか、誰々さんがいいと思うなどいろんな意見が飛び交う。花崎さんの名前はトップに上がっていた。
「えぇ~、私なんか先生役務まらないよ~。私は前田君を先生役に推薦します!」
勝手にやっておいてくれ、と蚊帳の外でボーっとしていた僕は跳ね起きた。能力で口止めすれば良かったが、今になっては遅い。みんなもぼっちの僕に教わるのは嫌だろう。反対しろ。
「花崎さんがいうなら仕方がないか・・・・・・」
花崎さんの名前が黒板から消えて、僕の名前が記入される。いやいやいや、仕方がないで済まさないでくれ。ほら、みんな嫌悪感一杯の目で僕を見ているんだから、それを言葉に出そうよ。ほら、反対反対。
「いや、僕もえんりょ・・・・・・」
断ろうと言いかけたとき、先生が間に入って言葉を遮る。
「いいですね!はい、じゃあ、先生役立候補終了!先生役に番号が振ってあるから、くじに書いてある番号と同じ先生役とグループを組みましょう!」
僕を無視し、次の段階へ無理矢理持っていかれた。仕方がない。次の作戦を練らねばならない。どうする。
「先生役は10人決まったから、それぞれ3人に1人が教える感じですね~。番号は××君が一番、○○さんが二番、△△さんが三番・・・・・・そして前田君が十番っと」
よし、みんなが十番を引かなければいいわけだ。ん、あれはチャンスだ。先生が教卓でくじを作りながら各番号ごとに何枚あるかチェックしている。なるほど、あの束が十番のくじか。
なにか気を散らさなければならない。やったことはないが・・・・・・試してみるか。
僕は窓の外の地面に目を下ろし、今までためていたエネルギーをすべて使い、能力を行使した。大地よ、揺れろ!
「うぉ!」「きゃー!?」
「みなさん!机の下に隠れて!地震です!」
本当に揺れた。震度4~5くらいか。まさかこの力で大地まで揺らせるとは。実際にやっておきながら末恐ろしい。生徒が一斉に机の下に隠れているすきに十番のくじ三枚を丸めてゴミ箱に葬り去り、僕が書いた新たな1番、2番、3番(番号は適当)のくじを束の中に紛れ込ませた。能力を使えば造作もない。
くじの総数は変わらないから、誰かが余ることはない。くじも先生のミスとしてやり直しまですることはないだろう。勉強会をするのにそこまで手間をかけていたら本末転倒だからな。さぁ結果が楽しみだ。
開票はスムーズに進んだ。予想通り、一番のグループ、二番のグループ、三番のグループは他より一人多く、そしてだれも十番にはだれも入らなかった。
「あれ、おかしいな。十番だけ入れ忘れちゃったかな?」
先生が困惑している。十番はゴミ箱の中だ。
「はは、前田のやつ、先生からも見放されてるぞ」
「ほんと、筋金入りのぼっちだな」
嫌な笑い声だ。おそらくざまぁみやがれと生徒一同思っているだろうが、この結果は僕が作っているのだとは、到底だれも予想だにしないだろう。
「前田君ごめんね。やりなおそうか?」
「いえ、大丈夫です!」
「うれしそうね・・・・・・」
本当にすまなさそうな顔をして謝ってくる先生にすこし心がチクッとしたが、これで目的は達成した。よし、図書委員の仕事サクッと終わらせて、図書部として適当に本読んで、早く帰ろう。そう思った矢先、また花崎さんが手を上げる。エネルギー切れでもはや防ぐ力は残っていなかった。くそっ!
「私、1番だったけど人数多いし、十番のグループいきます!」
・・・・・・え?
「あの、私も、じつは3番でして・・・・・・人数多くて、十番でもいいです」
雪本さんまで。
2番の人は断固拒否していた。そうだ、それが普通の反応だ。
一番のグループは必死になって花崎さんを引き留めようと奮闘している。一番のメンバー、タロウも必死だ。男3人の中、紅一点が抜けられると男子高校生的に非常に困るらしい。しかし、花崎さんの意思は堅く、その不満の視線は僕に向けられた。
一方花崎さんに対しては、気をつかっているんだ、なんて優しいんだといったまなざしである。それと比べてあいつは・・・・・・いや読み解くまでもない。
対して雪本さんに対する視線が今までは無関心的な視線だったものが、最近僕といることによって嫌悪的のもの、異物を見るようなものへと変わってきた。なんであんなやつとつるんでいるのか、ひょっとしてデキてるんじゃないか、気持ち悪、言葉には出さないがそんな雰囲気である。
良くも悪くも僕の経験則通り。僕としてはいい迷惑の一言で済むが、僕のせいで雪本さんが悪く言われるのは許せない。ただ肝心の雪本さん本人はあまり気にしている様子ではない。
いろんな視線、思惑が行き交う中、先生はとてもうれしそうにして、
「うんうん!二人ともありがとうね!ちょっといろいろあったけど勉強会はこのメンバーで行きましょう。それじゃ解散!」
生徒一同が教室を出てテスト期間前最後の部活に向かう中、あまりにも愕然として珍しく教室を出るのが最後になってしまった。それにいつになく体が気だるい。
やっとの思いで教室を出ようとすると待ち構えたように花崎さんが居る。視線を落とす。気にしない気にしない。しかし、さっと歩みを早める僕に花崎さんはこそっと耳打ちをしてきた。
「番号、みんな漢字の数字だったのに、私のくじ、普通の数字だったんだよね~。前田君、力使ったんでしょ?」
驚いて視線をあげると、もう花崎さんは「部活遅れるから~」といって走って行ってしまった。気が緩んでいた。漢数字と数字・・・・・・いつもならそんなことくらい抜かりなくこなす。これは本格的に少し休まなければいけないかもしれない。ここのところぼっちにはしんどい日々が続いている。なにか後ろから怨念のようなもの感じるし・・・・・・ん?
「なにしてたの?」
後ろを振り向くと雪本さんがいた。いつの間にいたのか、全く気がつかなかった。その今放っている殺気といい、アサシンにでもなれるのでないか。
「なにって?」
「さっき花崎さんと」
「ああ、なんかくじがおかしかったねって話ですか。それがどうかしましたか?」
「なんでもー」
なんでまたこう不機嫌なんだ。意味がわからん。ただでさえ疲れているのに勘弁してほしいものだ。
「さぁ早く図書委員行きましょう。二人で!」
「はいはい」
「それから、図書部にも行きましょう。二人で!」
「雪本さんは支店ですね」
「支店から本店に出向に参りました」
「・・・・・・」
もう言い返す気力も失せて、何も考えずにいつものルーティンに身を委ねた。
その夜、花崎さんからメールが届いた。題目は『勉強会♡』。題目だけでいかがわしさマックスである。僕がAIなら確実に、迷惑メールではじいているだろう。
『花崎です。もし良かったら土曜日、勉強教えてほしいところがあるんだけど、直接会えないかな?個人的な質問だから、雪本さんには迷惑かけられなくて、できれば二人で、がいいんだけど。返信待ってます』
この文章に絵文字がちりばめられ、とてもカラフルな文章である。
『前田です。僕は疲れました。熱もあるようです。土日は一人でゆっくりしたいので、ご遠慮させていただきます。雪本さんにお願いしてください。失礼します』
この返信メールを送った後、本当に熱が出た。小学校中学校と、どんなに心身を消耗しても風邪すら引かなかったのに、このざまとは。本格的に安定のぼっち生活3年間は脅かされていることは明白である。明日が土日であったことだけが唯一の心の救いである。
その後は食事もとらず、風呂にも入らず、制服のまま布団に倒れ込み、眠ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。
水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。
一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。
二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。
習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。
幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。
検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。
だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。
七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。
椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。
美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。
学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。
幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる