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12話 仇敵
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「私はみんなと合流して他にもさっきの魔物がいないかどうか確認する必要があるから」
「ならここで一旦お別れだな」
「アトラス王国に戻るんだよね?嘘じゃないよね?」
「分かってるって嘘じゃないよ。俺だって用事が出来たからな」
「色々話したいこともあるんだからね!絶対だよ!」
これでもかというほど念を押しながら、リオナは俺達の元から離れていった。
俺と師匠がここへ来た目的はひとまず達成されたと言える。
しかしながら、ここで得た情報はアレクシア=ルーリアによってもたらされた情報よりも遥かに有益なものだった。
ここ2年で起きている魔獣の大量発生。
ほぼ高確率でさっきの魔人が関係しているだろう。
それに奴は『俺達の中では』と話していた。
つまりは奴らは複数人であることが伺える。
名前も何も分からないが、奴との会話でそこまでは予測がつく。
「アルバス。ここからアトラス王国まではかなり距離があるが、休んでいられるような時間はないぞ。事態は急を要する」
「…………ですね。俺達は急いで向かうとしましょう」
敵が先手を打つ前になんとしてでも情報の共有を行わなければ。
俺達は森を急いで後にした。
アイトヴェン町を抜け、乗り物を乗り継いで日が暮れる前になんとかアトラス王国へと到着することができた。
3年ぶりの故郷。
色々な国を旅してきたが、その中でもアトラス王国は繁栄している方だと言える。
世界に8つある大国。
そのうちの一つであるアトラス王国のように王政を強いている国は多くあるが、そのほとんどは属国としての立場が強い。
その中でもアトラス王国と同じように多くの属国を持ち、大国と称されているのは2つ。
『アテナ王国』そして『ヴィリャンヘルム王国』だ。
特にヴィリャンヘルム王国は世界の5分の1の領土を占め、一昔前までは世界統一を掲げて各国への侵攻を繰り返していた。
しかしながら、戦争の影響からか支配された地域から魔獣の発生が多発し、自国の存続が危ぶまれたことから現在では自国の統制に重きを置き、魔獣の発生をかなり抑え込んでいる。
そして魔獣掃除人という制度を作ったのもこの国になる。
各国の代表的存在とも言えるのだ。
その他の5つの国についてはそれぞれ事情が異なる。
全世界に信者を多く持つ最大の宗教国家『フェイス皇国』。
議会制民主主義によって国の方針を決める商業都市『シャングレー』。
建国されて間もない実力主義国家『フォース』。
強固な軍隊を持つ軍事国家『アデルタ』。
神獣に頼らない科学者達が集う国『ガイエンス』。
この8つの大国にいる魔獣掃除人に対し、緊急招集会議を開くことが今の俺の最優先事項だ。
なのに……そのはずなのに……!
「おいおい、もしかしてアルバス=トリガーか?」
(なんでエルロンドとエンカウントするんだよ!)
国王陛下がいる城へと出向いた正面玄関のところで、会いたくもないやつが金色の長髪をなびかせながら近付いてきた。
学生の頃に散々挑発行為をしてきたことがフラッシュバックされるが、今もその時のニヤケ面とあまり大差なかった。
相変わらず人を舐めたような顔で見てくる。
「アルバス、知り合いか?」
「ただの同級生ですよ」
「お前、行方不明になったって聞いたがまだ生きてたんだな。お前の最強の神獣は元気か?」
ニヤニヤとまるで見下すような笑みを貼り付けながら話しかけてくる。
エルロンドは俺の神獣が0つ星の最弱であることしか知らないんだ。
昔の俺なら売り言葉に買い言葉で喧嘩になっていたのかもしれない。
だが今の俺はこんな奴に構っていられるほどヒマじゃないんだ。
「悪いなエルロンド。寄るとこがあるからまた今度暇な時に構ってやるよ」
軽く鼻で笑いながらエルロンドの横を通り過ぎようとした。
「お前みたいな最弱がこの城に寄るところなんてあるのか?…………ああ、もしかしてリオナのところか」
リオナという言葉に少し体が反応したが、俺は気にせず歩き続けた。
「お前はリオナの幼馴染だもんなぁ。久しぶりに会いたいんだろうなぁ。でもよ、お前とリオナの身分の違いを考えろ?彼女は騎士、お前は何だ?冒険者風情だろうが」
気にするな。
こんな戯言、さらりと聞き流せ。
「それになトリガー、お前がいない3年間、俺はアイツとずっと一緒にいたんだ。この意味が分かるか?」
聞き流せ───
「ベッドでのアイツは可愛かったぜ」
「エルロンドォ!!」
気付けば反転して剣を抜いていた。
その動きに反応するようにエルロンドも剣を抜く。
「やめろアルバス!!場所を考えろ城内だぞ!!」
制止するように師匠が間に入っていた。
周りにいた人達がその物々しさにザワザワと騒ぎ立てる。
エルロンドの言っていることが間違いなく嘘だと分かっていたのに、リオナを侮辱するような言葉を許すことができなかった。
「君も挑発するのはやめないか。我々はこれから大事な用がある。どうしても決着を付けたいなら後日、決戦の場を設ければいいだろう」
「そうですね、そうしましょう。俺もこんなところで事を荒立てたいわけじゃない。いいかトリガー、先に剣を抜いたのはお前だからな」
エルロンドが剣を収める。
「アルバス、剣を仕舞うんだ」
俺は抜いた剣を鞘の中に収めた。
師匠がいなければこの場で斬り合っていたかもしれない。
「この件は私が預かる。エルロンド君だったか、君には追って連絡しよう」
「いいですね。俺は第3番隊騎士団に所属していますのでそちらまで連絡を頂ければ」
「分かった」
俺は師匠に促されるようにしてその場を後にした。
「師匠、すいません」
「感情をコントロールするのがまだ未熟だな。神獣を扱う上では必須だと何度も言っているだろう」
「はい」
「全く……彼女のことになると抑えが効かなくなるとは」
「誤解を招くような言い方はやめてください」
「どこが誤解だと言うんだ」
師匠に諌められつつ国王陛下の元へと向かった。
アポイントを取っているわけではなかったが、国王陛下には突発的な謁見を許されている。
というのも魔獣掃除人というのは国王直下の役職となるため、ある程度の特権は与えられているのだ。
国王陛下に会うのも任命式を受けた時以来なので3年ぶりになる。
無礼のないように振る舞わねば。
師匠が王室の扉に向けてノックする。
「入れ」
「失礼致します」
師匠に続いて王室へと入った。
国王は書類に目を向けており、未だ誰が入ってきているのかは分かっていなかった。
俺と師匠は頭を下げた。
「国王陛下。予兆管理局員ヴァリアス=シューター、並びに魔獣掃除人アルバス=トリガー、長旅より戻ってまいりました」
「ん……? おお、久しいな。お主らの働きはワシの耳にも聞き及んでいるぞ」
ここで初めて国王は入ってきたのが俺達であることに気が付き、柔らかな笑みを浮かべた。
本来であれば国政の書類などやらなくてもいい立場のはずなのに、この人は率先して業務を行なおうとする。
人徳に優れ、国民からも熱い信頼を寄せられている昨今には珍しい国王、とも言われている。
「3年ほどか、お主らが出て行ってから」
「はい。長く留守にしてしまいました」
「お主らの仕事はこの国に限らず世界を救っている。誇るといい。して、今日はどうした?故郷が恋しくなったか?」
「そのことですが、早急に連絡してほしい案件が」
師匠はアイトヴェン町の外れにある森林地帯で起こったことを事細かく説明した。
俺はそれに対して時たま相槌を打っている程度で、状況説明についてはほぼ師匠が行った。
「このように、意志を持った魔人というものが魔獣を使役する事案が発生したのです。つきましては、早急に7大国の魔獣掃除人に対して緊急招集会議をかけてほしいのです」
「意志を持った魔人…………」
話を聞いた国王は静かに唸った。
過去数百年の歴史においてそんな魔人が発生した歴史はない。
こんな突拍子のない話を聞いても信憑性について疑うのが普通だろう。
「うむ、分かった。すぐさま手を打とう」
しかし国王も魔獣の脅威については誰よりも理解している。
魔獣の発生によって過去何度も世界が滅亡の危機に陥っている記録が存在する。
魔獣に関する情報は疑うよりもまず対策を講じ、その上で真偽を調査していくのだ。
動き出しが遅れればそれは死に直結する。
「各国の魔獣掃除人には連絡をし、恐らく開催場所はいつもと同じくヴィリャンヘルム王国となるだろう」
「ありがとうございます」
「ついでと言ってはなんだがアルバスよ。お主はこの3年間で魔獣掃除人として充分な働きをしていると聞いている」
「それはもう。彼は先代のトウゴウよりも魔獣討伐に関しては実績を残しています」
師匠が珍しく俺のことをハッキリと褒めた。
調子づかせるからと言って、普段は褒めるようなことは全く言わないのに。
「そこでだ。彼を一人前と認め、ヴァリアス、お主には予兆管理局の元へと戻ってもらいたい。今後、アルバス単独で魔獣掃除人として動いてもらう」
師匠が……行動を別にする?
いつかはそういう日が来るものだとは思っていたけど…………なんというかいきなりだ。
「…………それはまた随分と…………唐突ですね」
「ここ2年で魔獣の発生が世界で多発していることは当然知っているな。その関係で予兆管理局がかなり駆り出されていてな、人手不足が深刻化しておる。お主にはそちらに戻ってパンクしないようにフォローしてもらいたい」
予兆管理局は魔獣が発生しないようにアトラス王国、並びに属国の全ての状況を把握し、魔獣発生の予兆があれば迅速に対処する組織である。
詳しい仕事内容については俺も聞かされていないが、師匠が言うには毎日危険人物に関する書類がまとめられてくるため、尋常ではないほど忙しいということだ。
冒険をしているほうがよっぽど気は楽らしい。
「ヴァリアスが戻ってくれればかなり負担が軽減されるだろう」
「……了解致しました。それではすぐにでも局の方へ戻らせて頂きます」
「頼んだぞ。アルバスよ、これからお主は一人になってしまうが何か不安なことはあるか?」
不安なこと……。
この3年間で俺は多すぎるほどの教えを師匠から教わった。
最初は好きになれないなんて思っていたが、この人の戦闘スタイル、知識量は確かに国にとって重要な存在だと思わされる。
これでもまだ一人にされると不安だ、なんて弱音を吐いていたらあの世で父さんに笑われてしまう。
「何もありません。師匠、3年間という長い期間ありがとうございました」
俺は素直に頭を下げた。
「ああ、お前はもう立派な魔獣掃除人だ。もしもの時は頼らせてもらうからな」
「そのもしもが起きないようにお願いしますね」
「言うじゃないか」
俺は師匠と握手を交わし、ニヤリと笑った。
「緊急招集会議については改めて連絡しよう。それまではアルバス、城内に留まっておいてくれないか。部屋を用意させよう」
「ありがとうございます」
その後、国王は使用人を呼び、俺を客人用の部屋へと案内させた。
「ならここで一旦お別れだな」
「アトラス王国に戻るんだよね?嘘じゃないよね?」
「分かってるって嘘じゃないよ。俺だって用事が出来たからな」
「色々話したいこともあるんだからね!絶対だよ!」
これでもかというほど念を押しながら、リオナは俺達の元から離れていった。
俺と師匠がここへ来た目的はひとまず達成されたと言える。
しかしながら、ここで得た情報はアレクシア=ルーリアによってもたらされた情報よりも遥かに有益なものだった。
ここ2年で起きている魔獣の大量発生。
ほぼ高確率でさっきの魔人が関係しているだろう。
それに奴は『俺達の中では』と話していた。
つまりは奴らは複数人であることが伺える。
名前も何も分からないが、奴との会話でそこまでは予測がつく。
「アルバス。ここからアトラス王国まではかなり距離があるが、休んでいられるような時間はないぞ。事態は急を要する」
「…………ですね。俺達は急いで向かうとしましょう」
敵が先手を打つ前になんとしてでも情報の共有を行わなければ。
俺達は森を急いで後にした。
アイトヴェン町を抜け、乗り物を乗り継いで日が暮れる前になんとかアトラス王国へと到着することができた。
3年ぶりの故郷。
色々な国を旅してきたが、その中でもアトラス王国は繁栄している方だと言える。
世界に8つある大国。
そのうちの一つであるアトラス王国のように王政を強いている国は多くあるが、そのほとんどは属国としての立場が強い。
その中でもアトラス王国と同じように多くの属国を持ち、大国と称されているのは2つ。
『アテナ王国』そして『ヴィリャンヘルム王国』だ。
特にヴィリャンヘルム王国は世界の5分の1の領土を占め、一昔前までは世界統一を掲げて各国への侵攻を繰り返していた。
しかしながら、戦争の影響からか支配された地域から魔獣の発生が多発し、自国の存続が危ぶまれたことから現在では自国の統制に重きを置き、魔獣の発生をかなり抑え込んでいる。
そして魔獣掃除人という制度を作ったのもこの国になる。
各国の代表的存在とも言えるのだ。
その他の5つの国についてはそれぞれ事情が異なる。
全世界に信者を多く持つ最大の宗教国家『フェイス皇国』。
議会制民主主義によって国の方針を決める商業都市『シャングレー』。
建国されて間もない実力主義国家『フォース』。
強固な軍隊を持つ軍事国家『アデルタ』。
神獣に頼らない科学者達が集う国『ガイエンス』。
この8つの大国にいる魔獣掃除人に対し、緊急招集会議を開くことが今の俺の最優先事項だ。
なのに……そのはずなのに……!
「おいおい、もしかしてアルバス=トリガーか?」
(なんでエルロンドとエンカウントするんだよ!)
国王陛下がいる城へと出向いた正面玄関のところで、会いたくもないやつが金色の長髪をなびかせながら近付いてきた。
学生の頃に散々挑発行為をしてきたことがフラッシュバックされるが、今もその時のニヤケ面とあまり大差なかった。
相変わらず人を舐めたような顔で見てくる。
「アルバス、知り合いか?」
「ただの同級生ですよ」
「お前、行方不明になったって聞いたがまだ生きてたんだな。お前の最強の神獣は元気か?」
ニヤニヤとまるで見下すような笑みを貼り付けながら話しかけてくる。
エルロンドは俺の神獣が0つ星の最弱であることしか知らないんだ。
昔の俺なら売り言葉に買い言葉で喧嘩になっていたのかもしれない。
だが今の俺はこんな奴に構っていられるほどヒマじゃないんだ。
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リオナという言葉に少し体が反応したが、俺は気にせず歩き続けた。
「お前はリオナの幼馴染だもんなぁ。久しぶりに会いたいんだろうなぁ。でもよ、お前とリオナの身分の違いを考えろ?彼女は騎士、お前は何だ?冒険者風情だろうが」
気にするな。
こんな戯言、さらりと聞き流せ。
「それになトリガー、お前がいない3年間、俺はアイツとずっと一緒にいたんだ。この意味が分かるか?」
聞き流せ───
「ベッドでのアイツは可愛かったぜ」
「エルロンドォ!!」
気付けば反転して剣を抜いていた。
その動きに反応するようにエルロンドも剣を抜く。
「やめろアルバス!!場所を考えろ城内だぞ!!」
制止するように師匠が間に入っていた。
周りにいた人達がその物々しさにザワザワと騒ぎ立てる。
エルロンドの言っていることが間違いなく嘘だと分かっていたのに、リオナを侮辱するような言葉を許すことができなかった。
「君も挑発するのはやめないか。我々はこれから大事な用がある。どうしても決着を付けたいなら後日、決戦の場を設ければいいだろう」
「そうですね、そうしましょう。俺もこんなところで事を荒立てたいわけじゃない。いいかトリガー、先に剣を抜いたのはお前だからな」
エルロンドが剣を収める。
「アルバス、剣を仕舞うんだ」
俺は抜いた剣を鞘の中に収めた。
師匠がいなければこの場で斬り合っていたかもしれない。
「この件は私が預かる。エルロンド君だったか、君には追って連絡しよう」
「いいですね。俺は第3番隊騎士団に所属していますのでそちらまで連絡を頂ければ」
「分かった」
俺は師匠に促されるようにしてその場を後にした。
「師匠、すいません」
「感情をコントロールするのがまだ未熟だな。神獣を扱う上では必須だと何度も言っているだろう」
「はい」
「全く……彼女のことになると抑えが効かなくなるとは」
「誤解を招くような言い方はやめてください」
「どこが誤解だと言うんだ」
師匠に諌められつつ国王陛下の元へと向かった。
アポイントを取っているわけではなかったが、国王陛下には突発的な謁見を許されている。
というのも魔獣掃除人というのは国王直下の役職となるため、ある程度の特権は与えられているのだ。
国王陛下に会うのも任命式を受けた時以来なので3年ぶりになる。
無礼のないように振る舞わねば。
師匠が王室の扉に向けてノックする。
「入れ」
「失礼致します」
師匠に続いて王室へと入った。
国王は書類に目を向けており、未だ誰が入ってきているのかは分かっていなかった。
俺と師匠は頭を下げた。
「国王陛下。予兆管理局員ヴァリアス=シューター、並びに魔獣掃除人アルバス=トリガー、長旅より戻ってまいりました」
「ん……? おお、久しいな。お主らの働きはワシの耳にも聞き及んでいるぞ」
ここで初めて国王は入ってきたのが俺達であることに気が付き、柔らかな笑みを浮かべた。
本来であれば国政の書類などやらなくてもいい立場のはずなのに、この人は率先して業務を行なおうとする。
人徳に優れ、国民からも熱い信頼を寄せられている昨今には珍しい国王、とも言われている。
「3年ほどか、お主らが出て行ってから」
「はい。長く留守にしてしまいました」
「お主らの仕事はこの国に限らず世界を救っている。誇るといい。して、今日はどうした?故郷が恋しくなったか?」
「そのことですが、早急に連絡してほしい案件が」
師匠はアイトヴェン町の外れにある森林地帯で起こったことを事細かく説明した。
俺はそれに対して時たま相槌を打っている程度で、状況説明についてはほぼ師匠が行った。
「このように、意志を持った魔人というものが魔獣を使役する事案が発生したのです。つきましては、早急に7大国の魔獣掃除人に対して緊急招集会議をかけてほしいのです」
「意志を持った魔人…………」
話を聞いた国王は静かに唸った。
過去数百年の歴史においてそんな魔人が発生した歴史はない。
こんな突拍子のない話を聞いても信憑性について疑うのが普通だろう。
「うむ、分かった。すぐさま手を打とう」
しかし国王も魔獣の脅威については誰よりも理解している。
魔獣の発生によって過去何度も世界が滅亡の危機に陥っている記録が存在する。
魔獣に関する情報は疑うよりもまず対策を講じ、その上で真偽を調査していくのだ。
動き出しが遅れればそれは死に直結する。
「各国の魔獣掃除人には連絡をし、恐らく開催場所はいつもと同じくヴィリャンヘルム王国となるだろう」
「ありがとうございます」
「ついでと言ってはなんだがアルバスよ。お主はこの3年間で魔獣掃除人として充分な働きをしていると聞いている」
「それはもう。彼は先代のトウゴウよりも魔獣討伐に関しては実績を残しています」
師匠が珍しく俺のことをハッキリと褒めた。
調子づかせるからと言って、普段は褒めるようなことは全く言わないのに。
「そこでだ。彼を一人前と認め、ヴァリアス、お主には予兆管理局の元へと戻ってもらいたい。今後、アルバス単独で魔獣掃除人として動いてもらう」
師匠が……行動を別にする?
いつかはそういう日が来るものだとは思っていたけど…………なんというかいきなりだ。
「…………それはまた随分と…………唐突ですね」
「ここ2年で魔獣の発生が世界で多発していることは当然知っているな。その関係で予兆管理局がかなり駆り出されていてな、人手不足が深刻化しておる。お主にはそちらに戻ってパンクしないようにフォローしてもらいたい」
予兆管理局は魔獣が発生しないようにアトラス王国、並びに属国の全ての状況を把握し、魔獣発生の予兆があれば迅速に対処する組織である。
詳しい仕事内容については俺も聞かされていないが、師匠が言うには毎日危険人物に関する書類がまとめられてくるため、尋常ではないほど忙しいということだ。
冒険をしているほうがよっぽど気は楽らしい。
「ヴァリアスが戻ってくれればかなり負担が軽減されるだろう」
「……了解致しました。それではすぐにでも局の方へ戻らせて頂きます」
「頼んだぞ。アルバスよ、これからお主は一人になってしまうが何か不安なことはあるか?」
不安なこと……。
この3年間で俺は多すぎるほどの教えを師匠から教わった。
最初は好きになれないなんて思っていたが、この人の戦闘スタイル、知識量は確かに国にとって重要な存在だと思わされる。
これでもまだ一人にされると不安だ、なんて弱音を吐いていたらあの世で父さんに笑われてしまう。
「何もありません。師匠、3年間という長い期間ありがとうございました」
俺は素直に頭を下げた。
「ああ、お前はもう立派な魔獣掃除人だ。もしもの時は頼らせてもらうからな」
「そのもしもが起きないようにお願いしますね」
「言うじゃないか」
俺は師匠と握手を交わし、ニヤリと笑った。
「緊急招集会議については改めて連絡しよう。それまではアルバス、城内に留まっておいてくれないか。部屋を用意させよう」
「ありがとうございます」
その後、国王は使用人を呼び、俺を客人用の部屋へと案内させた。
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