怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
97 / 203
アルバイト勧誘編

家庭訪問③

しおりを挟む
「このフカフカ具合……これは人をダメにするやつね」

「奇遇だな八幡、実は俺もそう思っていたんだよ」

「佐川は元からダメじゃない」

「なにそれヒドくね」

 車が発進すると凄さがなお分かる。
 車体が全く揺れないんだ。
 例えるなら新幹線に乗っている時の感覚に近い。
 コップに飲み物を注いで机の上に置いても溢れないだろう。

「ニノのご両親って何してるの?」

 梨音の質問にニノはうーんと少し首を捻った。

「何だろうね。僕もよく分からないんだ」

「親の仕事ってよく分かんねーよな。俺も親父が何してるのか分かんねーよ。サラリーマンなのは知ってるけど」

「そうか? 普通は知ってると思うけどな」

 一度は気になる話だと思うが。
 俺は昔に父さんに聞いたら銀行員だとあっさり教えてくれた。

「修斗の親父さんは何してるんだよ」

「銀行員」

「へぇ! 普段から倍返ししてんの?」

「ドラマの主人公じゃねーよ」

 土下座させるぞ大馬鹿。

「八幡は?」

「ウチも変わらないよ。営業……とは言ってたけど何の営業かは分からないかな。でも梨音の家は特殊よね」

「そうなん?」

「特殊……なのかなぁ。定食屋なんだけど」

「マジか! そりゃ特殊だな!」

「私も初めて聞いた」

「あれ? きいにも言ってなかったっけ」

「じゃあ今度みんなで食べに行くしかねーな!」

「是非もちろ───」

 と言おうとして梨音がこちらを見た。
 そうだよく気付いた。
 こいつらが来てしまった場合、それはつまり俺が梨音の家に同棲していることがバレるリスクが高まるということだ。
 むしろここまでよくバレずにこられたわけだが、逆にその期間の長さのせいで打ち明けるタイミングは完全に逸してしまっている。
 こいつら、特に新之助にでもバレでもしてみろ。
 次の日には町内放送が如く、俺達の関係性はクラスの奴らに筒抜けになっているだろう。

 そういう意味合いも込めて梨音に目配せした。

「ま、まぁタイミングが合えばだね~。あはは」

 それとなく梨音が濁した。
 それでいい。
 くれぐれも余計なことを言って煽らないようにするんだ。

「高坂君は知ってたの?」

「当たり前だろ幼馴染なんだから」

「飯は?」

「めっちゃ美味い。俺が食ってきた飯の中でナンバーワン。俺の体の構成成分の7割は梨音の家の飯でできてる」

「絶対行こうぜ!」

 ジト目で見てくる梨音に対して俺は申し訳なさそうにしながら顔を背けた。
 だって飯の話になったらそりゃ嘘つけないじゃん。
 美味い以外の答えなんてないじゃん。
 これは煽ったわけではなくて事実を述べただけなんですぅ。

「高坂高坂」

 新之助達が梨音の家の定食の話で盛り上がっている中、前橋が俺の服の裾をちょいちょいと引っ張ってきた。
 いちいち可愛いなこいつ。

「足の具合はどう?」

 ひと月前、サッカー復帰宣言をした時から俺がリハビリを始めたことをもちろん前橋も知っている。
 前橋は俺の復帰を聞いて大層喜んでいたと神奈月先輩から聞いた。
 俺の前では無表情装っていたというのに、裏では喜んでくれてるとかツンデレにもほどがある。

「良くも悪くも普通だな。徐々に負荷をかける運動を始めちゃいるが、痛まないと言ったら嘘になる。まぁ良くなるための痛みだと思えばなんてこたないけどな」

「つまりマゾと……」

「結論が雑すぎん? もう少し答えの要約に正確性を求めたいんだが」

 誰も痛みが気持ちいいなんて言ってなくね。
 変な勘違いされるの超困る。

「リハビリの結果、あの頃と同じ状態に戻る保証なんかないけど、それでも俺は後悔したくない。リスタートに少し時間は掛かったが…………今度は折れないよ」

「…………うん。私も応援する」

 こんな俺に期待してくれてる人もいれば、見捨てた奴もいる。
 期待に応えると同時に見返してやりたい。
 俺の今の原動力の原点はこれだ。


 しばらくすると車はゆっくりと停車した。

「お疲れ様でした。到着になります」

 牧村さんの言葉と同時に車の扉が開いた。
 まさかタクシーみたいに自動仕様か!? と思ったがそうではなかった。
 外から扉を開けていたのは牧村さんとは違うタイプのフォーマルでフォーマットな格好をした女性。

 つまりはメイドだ。

「お帰りなさいませ」

 なんかここだけ世界観変わってね?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...