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7.二人で森へ
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「新鮮なお肉は新鮮なうちに!」と言うミルティさんの持論の元、昼食はウサギのローストになった。彼女の料理は相変わらず美味い。元世界では安価で手軽なインスタントものばかりだった自分の舌には最初のうちは薄味に感じられたけれど、2食3食と食べているうちに食事とは本来こういうものだった事を思い出した。彼女の料理を食べると満腹感以上に満たされるものがある。
そんなミルティさんはさっき僕が買って来た果物を美味しそうに頬張っている所だった。普段垂れ目気味の瞳が余計に緩んでいる。その表情を見れただけでも買って来た甲斐があるというものだ。
「ミルさんの好きな物はなんですか?」
「好きなものですか? ん~、果物とか好きですよ。あっ、ひょっとして今日も買って来てくれたのって、私の為…?」
「はい、昨日とても美味しそうに食べていたので」
「そ、そんなに顔に出ちゃってますか?! やだ、私ったら…」
ミルティさんが頬を押さえてうつむく、別に恥ずかしがることなんてないのに。
「子供っぽいと思われるかもしれませんが…、実はお菓子とか甘いものが好きなんです」
「ふっ、ははは、いやいや、そんな事思いませんよ」
思わずおかしくて噴き出してしまう。
「あっ、笑わないで下さいよ、も~」
膨れたような顔のミルティさんも珍しい。
「あはは、ごめんなさい。そうですか…。甘いものか、分かりました。今度行った時に探してきますよ」
「えっ、いいんですか。そんなつもりで言った訳じゃないんですが…」
「そんなつもりで聞いたんだからいいんですよ。いつもお世話になってるんですからそれぐらいさせて下さい」
「そんな気を遣わなくても良いんですのに…。でも、ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそです」
ここに来て最初に彼女に会えたのが僕の一番の幸運だったのかもしれないなとそんな風に思う。
錬成術というものは学術である。故に才能や血筋、生まれ等に左右されない至極平等な業なのだ。然るべき手順を踏み、然るべき知識を持って行すれば、誰の手によってでも同じ効果がもたらされる。習得には多大な根気と労力を要するが、真に必要なのは学術に取り組むやる気と姿勢であり――などと仰々しい書き出しで始まるのが今日買って来た本『今日から使える初級錬成術指南書』だった。
形式ばった文章などは読み飛ばして使えそうな部分までページをめくる。スライム錬成の項で指が止まった。何々、錬成に必要なものは肉の塊と水とゲル状生物の核と……いや、ゲル状生物の核ってなんだ。注釈でも付いてないかと探したが特にそういった記述はない。この世界では割と一般的なものなのだろうか? ミルティさんに聞いてみようか?
ミルティさんは鼻歌を歌いながら食器を洗っていた。あれだけ大きいと手元で何かする際に邪魔になっていそうだな…。いや当の本人からしてみれば慣れてしまって何でもない事なのだろうか、などとぼんやり眺めながら思う、ってどこ見てるんだ僕。慌てて視線を本へと戻す。
そういえばゲル状の生物といえば身近な所で心当たりがあった。わざわざ聞かずとも実地で試すか。
「ミルさん、ちょっと出かけてきます」
「まあ、どちらまで?」
「ちょっと森の方に行ってみようかと」
「ええっ!? 危ないですよ」
「大丈夫です、自分の実力は分かったのでやばそうに感じたらすぐ逃げるつもりです」
「それでも危険です。私も付いて行きます」
ミルティさんにしてみればけっこう強めの口調だった。さすがに昨日弱そうな魔物に囲まれて死にかけていた男の言葉は説得力に欠けるのかもしれない。
「ふう、分かりました。それでは一緒に付いて来て下さい。僕もミルさんが一緒の方が心強いです」
「はい、ご一緒しますね」
そう言うとミルティさんはにこやかに微笑んだ。
そんなミルティさんはさっき僕が買って来た果物を美味しそうに頬張っている所だった。普段垂れ目気味の瞳が余計に緩んでいる。その表情を見れただけでも買って来た甲斐があるというものだ。
「ミルさんの好きな物はなんですか?」
「好きなものですか? ん~、果物とか好きですよ。あっ、ひょっとして今日も買って来てくれたのって、私の為…?」
「はい、昨日とても美味しそうに食べていたので」
「そ、そんなに顔に出ちゃってますか?! やだ、私ったら…」
ミルティさんが頬を押さえてうつむく、別に恥ずかしがることなんてないのに。
「子供っぽいと思われるかもしれませんが…、実はお菓子とか甘いものが好きなんです」
「ふっ、ははは、いやいや、そんな事思いませんよ」
思わずおかしくて噴き出してしまう。
「あっ、笑わないで下さいよ、も~」
膨れたような顔のミルティさんも珍しい。
「あはは、ごめんなさい。そうですか…。甘いものか、分かりました。今度行った時に探してきますよ」
「えっ、いいんですか。そんなつもりで言った訳じゃないんですが…」
「そんなつもりで聞いたんだからいいんですよ。いつもお世話になってるんですからそれぐらいさせて下さい」
「そんな気を遣わなくても良いんですのに…。でも、ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそです」
ここに来て最初に彼女に会えたのが僕の一番の幸運だったのかもしれないなとそんな風に思う。
錬成術というものは学術である。故に才能や血筋、生まれ等に左右されない至極平等な業なのだ。然るべき手順を踏み、然るべき知識を持って行すれば、誰の手によってでも同じ効果がもたらされる。習得には多大な根気と労力を要するが、真に必要なのは学術に取り組むやる気と姿勢であり――などと仰々しい書き出しで始まるのが今日買って来た本『今日から使える初級錬成術指南書』だった。
形式ばった文章などは読み飛ばして使えそうな部分までページをめくる。スライム錬成の項で指が止まった。何々、錬成に必要なものは肉の塊と水とゲル状生物の核と……いや、ゲル状生物の核ってなんだ。注釈でも付いてないかと探したが特にそういった記述はない。この世界では割と一般的なものなのだろうか? ミルティさんに聞いてみようか?
ミルティさんは鼻歌を歌いながら食器を洗っていた。あれだけ大きいと手元で何かする際に邪魔になっていそうだな…。いや当の本人からしてみれば慣れてしまって何でもない事なのだろうか、などとぼんやり眺めながら思う、ってどこ見てるんだ僕。慌てて視線を本へと戻す。
そういえばゲル状の生物といえば身近な所で心当たりがあった。わざわざ聞かずとも実地で試すか。
「ミルさん、ちょっと出かけてきます」
「まあ、どちらまで?」
「ちょっと森の方に行ってみようかと」
「ええっ!? 危ないですよ」
「大丈夫です、自分の実力は分かったのでやばそうに感じたらすぐ逃げるつもりです」
「それでも危険です。私も付いて行きます」
ミルティさんにしてみればけっこう強めの口調だった。さすがに昨日弱そうな魔物に囲まれて死にかけていた男の言葉は説得力に欠けるのかもしれない。
「ふう、分かりました。それでは一緒に付いて来て下さい。僕もミルさんが一緒の方が心強いです」
「はい、ご一緒しますね」
そう言うとミルティさんはにこやかに微笑んだ。
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