生まれる前から隣にいた君へ

紫蘭

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エピローグのその先で

再度トラブル発生

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 翌朝、かろうじて最後の気力を振り絞り、ベッドに倒れ込む前に明日香がセットした目覚まし時計が鳴り響く。
 無意識で最大音量にしていたのか予想外の爆音に明日香は飛び起きた。

 時刻は朝8時。不動産屋が開くのは9時。引越し業者が来るのは10時半。
「やっば、なんでこの時間に目覚ましかけてんのよ」
 明日香は昨日の自分に悪態をつきつつ、リビングのソファーの上でまだ夢の中にいる一颯を起こす。
「一颯!朝!時間やばい。さっさと起きて!」
 寝ぼけまなこで状況を把握していない様子だが、とりあえず一颯が起きたことを確認し、明日香は身支度を整えるために洗面所へ急いだ。

 顔を洗い歯を磨き、軽く化粧を済ませ、明日香がリビングに戻るとようやく覚醒した様子の一颯が居た。
「……時間、やばくね?」
 はぁーっと明日香は大きなため息を着く。
「だからやばいって言ってるでしょ。さっさと顔洗ってきて」
 一颯が身支度をしている間に、明日香は冷蔵庫から牛乳を取り出す。
 今から朝ごはんを作っている時間は無い。それどころか、昨日の残骸が机の上には散らばっている。
 ゴミを寄せ、空いたスペースにシリアルと牛乳を起き、ものの5分で朝食を終えると、まだ洗面所にいる一颯に向かって明日香は叫ぶ。
「一颯!朝ごはん机の上のシリアル!」
 返事も聞かずに自室に飛び込み、動きやすそうなジーパンとTシャツに着替え、カバンを掴み明日香がリビングに戻った時には一颯もちょうど準備を終え、シリアルを食べ終わったとこだった。
「今から行けばちょうど9時には着く。書類も持った?」
「あ、まだダンボールの中……」
 忙しない空気が一瞬だけ止まる。
「……馬鹿!!!!さっさとして。今日はカーシェアにしたから、車回してくる。これ鍵、書類出したら荷物順々に外出してて」
 ここまで来ると、もはや怒りを通り越して笑えてくる。
 昔よりポンコツになってないか?マイペースに拍車がかかってる。と心の中で明日香は愚痴った。

 予定通りとは行かなかったが、なんとか2人は出発した。
 車内では申し訳なさそうな顔で一颯がちょこんと助手席に座り、明日香が無言で運転をする。

「……あのさ、一応確認するけど。今日の10時半引越しであってるんだよね?今日から住むんだよね?」
 ふと、疑問に思ったことを明日香は一颯に問う。
 あぁ、と答えた一颯に明日香は頭の中に浮かんでいる嫌な展開を聞いた。
「まさかとは思うけど、水道と電気とガス、連絡してないとかないよね?」
 新しく住み始めるにはこの3つは必要不可欠だ。普通は引越し前に連絡をし、契約をする。だが、今日までの一颯の行動を見ていると、万が一ということが有り得る。
「……一颯?」
 一颯の返事は無かった。

「この馬鹿!私と同い年のはずでしょ?もう少し生きる術を身につけろ!」
 本日2回目の明日香の雷が落ちた。
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