生まれる前から隣にいた君へ

紫蘭

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エピローグのその先で

約束

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「ねぇ、今週暇な日ある?この前のお礼にご飯奢る」

 何度も打ち直して、結局一颯が送った文章はこうだった。
 1分も待たずして、既読の文字がつく。

「引越しの片付き具合による」
「なら、終わってたらなんか食べに行こう」
「いいけど、どこに?」
 明日香の新居から一颯の家は少し離れている。電車だと乗り換えが2回は必要で、最低1時間はかかる。
「一応何軒か調べてみた」
 先程調べた大量のURLからピックアップしたものを一颯は送る。
 イタリアン、和食、洋食、カフェ、それぞれ1つずつ。
 場所はお互いの中間地点になりそうな繁華街。
「食べたいものもリクエストがあれば探す」
 明日香のリクエストに応えられるぐらいの量のリストが既に一颯のスマホのメモ欄にある。
「ん~~、行くなら2つ目か4つ目、それか夜にして飲み」
 明日香が選んだのは土鍋ご飯が食べれる和食屋さんとおしゃれなカフェ飯とデザートのタルトが有名なお店。
「じゃあ、明日香の家から行きやすいカフェの方にする?もし昼間忙しいんだったら夜にしてどっかで飲もう」
「了解」
「行けるとしたら週末どっちか、近くなったら連絡する」
「OK」

 ひとまず、無事に約束を取り付けられたことに一颯は安堵する。
 せっかく再び繋がった縁だ。このまま終わらせたくは無い。

「何着てこ」
 一颯は呟く。
 この前はポンコツなところしか見せられなかったから、今回は少しだけでも挽回したいところだ。


「ご飯ねぇ」
 送られてきたカフェのURLを再度クリックして、明日香はメニューを見る。
「美味しそ」
 トマトとブッラータチーズのパスタ。具だくさんサンドウィッチ、野菜たっぷりのキーマカレー。
 どれも美味しそうで目移りする。
 この美味しそうなご飯のためならめんどくさい引越し作業もやる気が出る。
「よし」
 明日香はベッドから起き上がり、貯めていたやることリストの消費を始めた。
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