生まれる前から隣にいた君へ

紫蘭

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エピローグのその先で

初恋③

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「俺は、隣にいて欲しいって思ったのは今まで明日香だけだった。好きだって言ってくれる子もいたけど、なんか違うって感覚があった。
 明日香だったらなって思うこと多かった。
 あの頃、本気で恋をしていたかどうかは分からないけど、守りたいって思える女の子は明日香だけだった。
 だから、俺はあれが初恋だと思ってる。
 再開して、明日香はすごく大人っぽくなってて、可愛くなってて、隣にいて居心地が良くて、またこういう風に一緒にいたいって思った。
 これが恋かどうかはわかんない。それでも1番大切だとは自信を持って言える」

「……こんな真剣な一颯見るの、2回目だね。だから私も真剣に答えるよ。
 ごめんなさい。一颯とは恋人にはなれない。
 一颯とはずっと幼なじみでいたい」

「そっか。そっかぁー」
 真剣だった一颯の瞳がふっと揺れて、一颯は背もたれに寄りかかった。

「ごめん、復活するからちょっと待って」
「今こんなこと言うのも酷かもしれないけど、私いつか一颯の結婚とか祝える日楽しみにしてるんだよ。
 結婚したとか、子供が生まれたとか、きっと親経由で聞いて、元気にしてるんだなって思える日。
 普段からそんなに連絡取るわけじゃなくても、ちゃんと繋がってるんだなって感じれるあれ、結構好きなんだ」
 そう言って明日香はふわっと笑う。
 その笑顔を見て、一颯はやっぱり好きだなと実感した。
「今その話するのきっつ、俺振られたばっかだよ?」
「ごめんて」
「でもやっぱ、それが明日香だよなぁー。うん、分かった。俺らはこういう関係が似合ってる。
 でも、せっかくもう1度繋がった縁だ。繋げておいてもいいよな?」
「それはもちろん。なんかあったら連絡して?一颯からでも、親経由でもいいけど 」
「さすがにこの前みたいのはないようにする」
「そうして」
 2人は目を見合せて笑う。



「じゃ、俺JRだから」
「うん、また」
「またな」

 一颯は改札を通り抜けて人混みに消えていく。その後ろ姿を明日香は眺めていた。
 1つ、明日香は一颯に言わなかったことがある。
 明日香にとっての初恋は先輩だった。
 でも、そのきっかけは一颯と同じクシャッとした笑顔。
 一颯に似てるなと思ったのが惹かれたきっかけだった。

「一生言ってやるもんか」
 明日香は1人つぶやく。
 春から新社会人。
 一颯より充実した生活をして、さっさと幸せになってやる。
 今日の一颯がちょっとかっこいいなと思ったのも一颯には秘密だ。
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