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新たなる日常④

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「顔を上げて!選ばれたのはCOSMOSです。他のクラスとの兼ね合いもあるけど、先生抽選になっても絶対勝つから大丈夫!」
 他のクラスと選曲が被ると教員同士での抽選会が行われる。生徒に責任を負わせないようにという配慮らしい。
 そして、りつのクラスの担任は豪運で有名だった。
 合唱コンクールの選曲でも、文化祭の出し物でも、学芸会の順番でも、1度も負けたことがないらしい。
 もはや最近ではこの担任のクラスと被った時点で負け確定と言われているそうだ。

 その後、ピアノ伴奏は予想通り奏に、指揮者は奏と仲がいい楓花に決まった。

「で、合唱曲どうなったの?」
 本日のお菓子、抹茶のシフォンケーキを食べながら、レーゲルはりつに問いかけた。
「担任の先生が勝って、COSMOSに決まった」
 多数決をした翌朝、朝の会の為に教室に来た先生は「勝った!」とガッツポーズをした。
 どうやら4クラス中3クラスがCOSMOSを選ぶという激戦だったらしい。
「せっかくならりつが伴奏やればいいのに」
 レーゲルの肩でリートが言う。
「嫌だよ。満場一致で決まりそうなところに私もやりたいですなんて絶対言えない。それに、ピアノ伴奏なんかしたらお母さんにまたピアノやってる事知られちゃう」
 そう言ってりつは黙り込んだ。

「まぁ、そんなことは置いておいて、新しく練習する曲、決めちゃいましょう」
 暗くなった空気をレーゲルが明るくする。
 レーゲルの指揮でテーブルに降りてきたのは、ドビュッシー作曲「月の光」、「アラベスク第1番」。
「どっちにする?りつちゃんが弾きたい方を選んで」
「じゃあ」
 りつが手に取ったのは「月の光」。
「いいわね。早速始めましょうか」
 レーゲルの合図で、その日のピアノの演奏は始まった。
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