最近流行りの異世界に来ました。

春巻 名取

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道中

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クマとの激闘から少しして、俵とフィリスはヒュームの街へと向かっていた。
勿論フィリスは俵に質問していたた。
あの身体能力はどういうことか、何故あんな無謀な事をしたのか、ていうか何なのよその袋!食料とか飲料が無限に出てくるとか!ふざんじゃないわよ!等々…。
それをのらりくらりと躱す俵。
なお彼の腕には子狐が抱き抱えられており、当の子狐はスヤスヤと安らかな寝息を立てている。
因みにクマはそのまま放置してきた、何しろヒュームの街までまだ距離もあり、食料などは俵の鞄で解決する上に毛皮の剥ぎ方など2人とも知らない。
そして何となく俵は一方的にクマを好敵手と思っており、殺すのは忍びないとフィリスに告げたのも大きい。
その謎理論に溜め息を吐きながらフィリスはわかったわよ、と一言で済まして俵を連れてヒュームの街へと向かったのだ。

「しかし、遠いんだなぁ…。」

俵はボヤきながらフィリスの後をついて行く。
時折此方を伺うように小さな獣が覗き込んでくるがそれ以外は何も起こらず、あまり変わり映えしない風景に僅かな退屈を感じ始めた頃。
目の前のフィリスが立ち止まる。
その視線の先には拓けた場所があり、ぽつぽつと掘っ建て小屋みたいな家が建っている。
村、というには規模が小さく、畑仕事をしている人のシルエットは頭に動物の耳が着いており、遠目からでも純粋な人ではないと窺える。
フィリスに目を向けると彼女は怪訝な表情を浮かべながら何処か困った様に頬を掻いている。
ふむ、と俵は一考し…

「行ってみるか!」

人懐っこい笑顔で手を振りながら村へと突撃していった。






















「は?」

フィリスは我が目を疑う。
あの馬鹿はあろう事か敵か味方か分からない所に突っ込んでいったのである。
この森に新しく入ってきた種族がいるとは聴いていない。
つまりこの村はヒューム族から逃げてきたか種族を追い出されたかした流れ者の村である。
この森はエルフ族が管理していると言っても過言ではない。
広大過ぎて全てまでは見切れないがヒューム族の街に程近いこの場所は割とヒューム族から逃げてきた獣人族が住み着く事がままある。
普通なら獣人族のリーダーから何かしらのコンタクトがあるのだが…

(あのボロボロの服や窶れた表情にこの陰鬱な空気は…ヒューム族から逃げ出した獣人族ね…普通なら保護しないとなんだけど…私はもう一族と縁を切ったし…どうしようかしら…。)

フィリスはそこまで考えていた所で目の前に俵が走って行く後ろ姿を見るのである。
そりゃもう頭にきた。
こっちは色んな葛藤を抱えているというのにあの男は…

「もう!もう!あんの馬鹿!!」

込み上げる怒りを吐きながらフィリスは俵の後を追う様に駆け出した。





























突然現れた俵に畑仕事をしていた獣人族の男は怯えた表情をしていた。
それを見た俵はなおも人懐っこい笑みで子狐を抱えながら獣人族の男に話しかける。

「アンタ、元気無いな!ちゃんと飯食ってるか?」

「…い、いや…ここに来たばかりで…」

獣人族の男は俵のその人懐っこい笑みに絆されたのか、戸惑いながらも返事をする。
割と声の大きい俵である。
近くの家々からは此方の様子を窺う様に色々な獣人族がこっそりと顔を出している。
兎の耳が生えた者、猫がそのまま人になった様な見た目の者、丸めた尻尾を抱えた犬耳のある者。
様々な種族の獣人がこの小さな村には居た。
皆一様に痩せ細り、覇気が無い。
しかも俵を恐れる様に怯えた眼差しを向けて来る。
ふむ、と俵は顎を摩るとゴソゴソと鞄を漁る。
因みにその背後には怒りのオーラを纏ったフィリスの姿があった。
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