お兄の花嫁選び 思っていたのとは違うんですが……なぜですか?

神栖 蒼華

文字の大きさ
19 / 67

16 衝突

しおりを挟む

 勉強先からの帰り道。通路の先から、ニルン様とクトラの声が聞こえてきて、フィーリアは足を止めた。
 あれから、ニルン様とクトラの言い争いを止めるべきかどうするべきか答えが出せなくて、結果静観している状態だった。
 二人の言い争いに遭遇すれば、やはり見なかったことには出来なくて、盗み聞きする感じで成り行きを見つめることしか出来なかった。どちらかが泣き出したり、傷つけ合ったりすることがあれば止めに入ろうとは思っていた。

 耳を澄ますと、ニルン様、クトラの他にもう一人の声がした。
 気になって、こっそりと見つからないように覗き込む。

「ムーリャン様こそ、王宮に相応しい服装というものがあるとご存知ではないのかしら?」
「ふーん。この服のセンスがわからないなんて可哀想ねぇ。あたくしの魅力を引き立てるにはこのくらいでないと服の方が負けてしまうのよ。まあ、あなたにはその堅苦しい服がお似合いなのかもしれないけれどね、中身と合って」
「私はその場に相応しい物を身に着けておりますわ」
「なるほど。センスの無さをそう言い訳しているのねー。勉強になるわー」

 ニルン様が服装について注意しているらしい。けれど、ムーリャン様にはまったく通じていないようだ。
 どちらかというと、妬まれていると思って優越感に浸っているように見えた。

「はあー。言葉も通じないのね。そうよね。なんとなくそうだと思っておりましたわ」

 わざとらしくムーリャン様を見つめながら言うクトラに、目を吊り上げたムーリャン様は声を荒げる。

「お子様は黙ってなさいよ」
「わたしは子供じゃありませんわ」
「自分の身体を見てから言いなさいよ」

 馬鹿にしたように鼻で笑うムーリャン様。
 クトラは禁句を連発されて、目を吊り上げた。

「ちゃんと出るところは出ているし、引っ込んでいるところは引っ込んでいるわ。──それよりも、その垂れている乳をどうにかした方がいいんじゃありません?」
「はあ? どこに目をつけているのかしら。この柔らかい胸に男は誰でも夢中になるのよ」

 そういってムーリャン様は胸を強調するように腕を寄せて、クトラに見せつけていた。
 その姿をニルン様は軽蔑するように見つめ、クトラは今にも突撃しそうな雰囲気を醸し出していた。

 とても険悪な雰囲気にフィーリアは通路の影から飛び出した。

「ムーリャン様、ニルン様、クトラ様、どうかなさいましたか?」

 出来る限り、明るく朗らかに聞こえるように声をかける。
 クトラはフィーリアの顔を見ると、ハッとしたように目を見開き、そのあと息をついた。いつものような落ち着いた表情に戻り、どうやら、いつものクトラに落ち着いたようだ。
 一方、ニルン様はあら?と驚いた顔をして、ムーリャン様はフィーリアを見て、嫌そうに顔をしかめた。

「また、あなたなの? 地味娘は勉強だけしていればいいじゃないの。あたくし達の話に入ってこないでちょうだい」
「まあ、そんなこと仰らずに、わたしも入れてください。妃候補者同士の交流も必要ではありませんか?」
「あなたとは特に必要ないのよ。顔も見たくないわ」

 よほど文官や警備兵との交流を邪魔されたことが許せないようで、睨みつけられる。
 今回は話をしましょうと割って入ったのがいけなかったようだ。

「もういいわ」

 そう言い捨て、イライラしたままムーリャン様は去っていった。
 その後ろ姿を見て、どうにか大事にはならずホッとした。

「ちょっとやり過ぎじゃ……」
「人選ミスなのでは……」
「え?」

 ぼそりと呟かれたクトラとニルン様の言葉が聞き取れず問いかけると、誤魔化すように二人は同じ笑顔を見せた。


 フィーリアの気付かぬうちに、妃候補者同士の衝突は激化しているようだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

処理中です...