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23 ニルンside
しおりを挟む「少しは成果が出てきたのかしら?」
部屋の外へと追い出す形で帰したフィーリア様の顔を思い浮かべる。
今までクトラ様と言い争いをしていても、まるで自分には関係ないかのように見学しているだけで、特にそれについて何も思っていないようだった。もちろん、影から見ていることを分かった上で、クトラ様と共に言い争いをしていたのだけれど。
嫉妬してもらえるように、頑張って、ダウール様と親しいところをフィーリア様に聞こえるように、はしたないと言われるようなあんな大きな声で話していたのだ。
始めのうちは本当に辛かった。
言ったこともないような言葉を、人に聞かせるために話さなければならなくて、恥ずかしくて恥ずかしくて、なぜこんなことを引き受けてしまったのだろうかと後悔し通しだった。
しかも実際にダウール様に言われたわけでもない言葉を、自分で考えなければならなかったし、それに伴ってダウール様に想いを寄せているようにも演じなければならなかったのだから。けれど、クトラ様も同じように感じているとわかってからは、同志のような心強さも感じ、自慢話も私のお慕いしている方に言ってもらいたいことを妄想したら、スルスルと口から出てくるようになった。
お慕いしている方に聞かれてしまえば、それは恥ずかしいことではあるけれど、王宮内にいらっしゃることはないと分かっているので気にしないことにした。そうでもないと、とてもではないけれど恥ずかしい言葉を言えそうになかったから。
「本当に大変だったわ」
辛さが滲み出るような独り言に、私は私に笑ってしまった。
本当に、自分で思っていたよりも辛かったようだ。
けれど、今日のフィーリア様を見て、少しは苦労も報われてきたように感じた。
初めてお会いしたフィーリア様は、裏表のない屈託のない笑顔で訪ねた私を迎え入れ、ダウール様から聞いていた通りの女性だった。笑顔は華が咲いたかのように明るくて、人を疑う事なんて知らない純粋さを感じた。初対面で好意を抱いた私は、ダウール様の想いを思い出し、少しでもフィーリア様が幸せになる手助けができたらいいと思った。
ダウール様はフィーリア様を逃がす気なんて欠片もないことはわかっていたから。
だってねえ、フィーリア様のために国王陛下にまでなり、フィーリア様のために後宮という舞台を整えたのだから。
本来ならば、求婚すればすむ話だと思うのだけれど、ダウール様のフィーリア様へのヘタレ対応とフィーリア様の鈍感具合を見て、大がかりな舞台が必要だったのだろうと理解した。それでもやはり求婚すれば良かったのではと思ったけれど。
ダウール様からはフィーリア様を傷つけるようなことはしないで欲しいと言われていたので、クトラ様とだけ言い争いをすることにした。他の妃候補者には後宮に入ってから初めて会ったのだけれど、どう見てもウルミス様にはこのような言い争いをすることは向いてないように思えたので、ダウール様に直接接するところをフィーリア様に目撃してもらう役割を担ってもらうことにした。あとはもう一人来るであろう妃候補者と連携をとって、フィーリア様にダウール様への意識を向けてもらおうと思っていたのだけれど………。
まさかやって来た最後の妃候補者が、あんなにも攻撃的で、下品で、フィーリア様やウルミス様を攻撃し始めるとは想像もしていなかった。
ムーリャン様をやんわりと窘めても、意に介した様子もなく好き勝手に動く。演技としては素晴らしいのかもしれないけれど。
……私にはとてもではないが、想像は出来ても実行は出来なかった演技だったから。けれど、それでもやはり、やり過ぎているように感じた。
だが、そのかいあってか、フィーリア様に変化が現れた。
何か思い悩むように表情を曇らせ、一日姿を見せなくなったあと、私のところへ訪ねて来た。
けれど、訪ねて来たフィーリア様は言い争いを止めに来ただけで、ダウール様への気持ちがあるのかないのか微妙な感じだった。──と残念に思っていたら、そうでもない感じの反応を見せた。私にダウール様が好きかと尋ねたとき、僅かに表情を曇らせていたのだ。フィーリア様自身には自覚はなさそうだったけれど。
フィーリア様自身に気付いてもらわないと意味がないと思って、好きかと問われた答えを躱したのだけれど、あまりにも迷子になったかのように困惑しているのを見て、つい本音を話してしまったわ。
あれでは嫉妬させることなんて出来なくなってしまうのに、……まあ、しょうがないわよね。フィーリア様が可愛すぎるのですもの。これ以上困らせたくなくなってしまった。
ここまで話してしまったのだから、これからはフィーリア様を守る側に回ればいいだけと思うことにした。
それには、まずムーリャン様の真意を探らなくては。
そのためにも、一度ダウール様に会いに行かなければならない。ムーリャン様を選んだのはダウール様なのですものね。
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