35 / 67
32 協力要請
しおりを挟むラマに頼んだニルン様とクトラとのお茶会は思ったよりも早く叶い、お願いしたその日の午後に実行できた。
「ニルン様、クトラ。招待に応じてくださりありがとうございます」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」
「フィー、ニルン様も一緒に呼ぶなんて何かあるの?」
席についた途端、クトラのせっかちな問いに笑みがこぼれる。
クトラは変わらない。今はそれが嬉しい。
それにニルン様とクトラが一緒にいるのに、言い争いが始まらなかった。
二人とも約束は守ってくれているようで、しかも瞳が合えば笑い合ってもいる。なんだかとても親しくなっているようにも見えて、少し妬けてしまった。
今までしてきたことも無駄ではなく、少しはいい方向に貢献できたのかもしれない。
これなら、これからの提案にも協力してくれる可能性が高いと思った。
「ニルン様、クトラ。わたし、妃候補を辞退しようと思っています。それで──」
「はあ? なんでそうなるの?!」
「いったいどういうことでございますか?!」
バァンとたたき割るような音をさせてテーブルに身を乗り出したクトラとニルン様に、続けようと思っていた言葉を遮られた。
二人は信じられないとでもいうような驚愕の表情を浮かべている。
そこまでおかしいことを言っているつもりはないのだけれど、と不思議に思っているフィーリアの後ろで、同情するような眼差しをラマはニルン様とクトラに向けていた。
「えっと、言葉の通りだけど……」
「ですから、そのような考えに行き着いた理由を教えていただけませんか?」
「そうそう、理由を教えて!!」
二人の勢いよく迫り来る圧に押されて、若干引きながらも説明した。
「あの、ウルミス様がダウール様を好きだと知る機会があって……。それに、ウルミス様は城内で働く人達にも妃候補者筆頭だと思われているみたいだし、邪魔になるわたしは早めに辞退した方がいいのかなと思って。ほら、わたし達は城内で働く人達にかなり迷惑をかけているようだから、ね?」
さすがにダウール様がウルミス様を好きかもとはクトラの前では言えず、それについては言葉に出来なかった。
フィーリアの説明を聞いて、二人は絶句していた。
あれ? おかしな説明をしたつもりはなかったのだけれど。フィーリアの言葉の選び方が良くなかったのかと反芻してみる。
フィーリアが反芻している間、クトラは額を押さえるようにしてなぜか頭を抱えていた。ニルン様はなぜかおかしそうに眉を下げて、困った顔をしている。
フィーリアがもう一度説明し直した方がいいのかと二人に瞳を向けると、クトラが頭を抱えたまま彫刻のようにずっと固まっていた。どうしたのかと疑問に思って見ている間も、そのままの姿勢で考え込んでいて、ようやく顔を上げたクトラは酷く疲れた顔をしていた。
「……本当にフィーはそれでいいの?」
「うん。いいと思ったからこうしてクトラにお願いするために来てもらったんだもの」
「お願い?」
「ウルミス様がムーリャン様に攻撃されているのを止めたいの」
「ああ、……それについては私も心を痛めておりますのよ」
「確かにウルミス様は被害者だよね」
思っていたよりも二人がウルミス様に同情的で、これは協力してくれるかもしれないと思えた。
「だからね、ウルミス様を助けたいの。今のままだとウルミス様、寝込んでしまうと思うんだ。それだと平等性がなくなってしまうと思ったから」
「なにがだからなのか理解したくないけれど、言いたいことはわかった」
「そうですわね。ムーリャン様の行いは目に余りますもの。協力いたしますわ」
「ありがとうございます!! クトラとニルン様がいれば百人力。鬼に金棒です」
「なにその言葉」
「本からの引用だよ。素晴らしい助っ人という意味!」
「まあ、その様に思っていただけるなんて光栄ですわ」
「……わかった。わかったよ。もとからムーリャン様はとっちめてやりたいと思っていたから協力してあげる」
「ありがとう。クトラ」
満面の笑みで礼を言うフィーリアを見て、クトラは大きなため息をついた。
「それで、出来ればウルミス様のためにムーリャン様に妃候補を諦めてもらって、憂いがなくなったらわたしも辞退しようと思っているの」
「いや、だからね。それについてはわたしは納得してないよ」
「なんで?」
「フィーが後悔すると思うから」
「思わないよ。それにクトラのためでもあるんだから」
「わたしのため? だったら、辞退なんてしないでよ」
「どうして? クトラもわたしがいない方がいいでしょ?」
ダウール様が好きなんだから。例え意味のない妃候補だとしてもいない方がアプローチしやすいと思うんだけど。
「そんなわけないでしょ!」
「まあまあ、とにかく、妃候補の辞退は一旦置いておきましょう」
「……そうだね。先にムーリャン様をどうにかしないといけないわけだし」
「すぐに決着が着くとは思えませんし、ねえ?」
なぜか必死に引き止めようとする二人の様子に不思議に思っていると、ラマが提案してきた。
「お嬢様。わたくしはお嬢様が幸せならば何も申しませんが、それでも結論を急ぎ過ぎだと思われます。一つずつ解決していってはいかがでしょうか」
「そう? ……そうだね。確かに焦っていた部分もあったかも。ラマ、止めてくれてありがとう」
「いいえ、差し出がましいことをして申し訳ありません」
「そんなことない。ラマ、フィーを止めてくれてありがとう」
「そうでございますわ。ありがとうございます、ラマさん」
続けられた言葉に、思っていたよりも二人を困らせていたことを理解した。
「クトラ、ニルン様、ごめんなさい。なんだか焦っていたみたいで。どうか、ご協力お願いします」
「まかせて」
「お任せください」
フィーリアが深く頭を下げると、二人はやっと笑顔を浮かべた。
その笑顔を見て、フィーリアもほっと息をついて笑顔を浮かべた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる