お兄の花嫁選び 思っていたのとは違うんですが……なぜですか?

神栖 蒼華

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32 協力要請

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 ラマに頼んだニルン様とクトラとのお茶会は思ったよりも早く叶い、お願いしたその日の午後に実行できた。

「ニルン様、クトラ。招待に応じてくださりありがとうございます」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」
「フィー、ニルン様も一緒に呼ぶなんて何かあるの?」

 席についた途端、クトラのせっかちな問いに笑みがこぼれる。
 クトラは変わらない。今はそれが嬉しい。
 それにニルン様とクトラが一緒にいるのに、言い争いが始まらなかった。
 二人とも約束は守ってくれているようで、しかも瞳が合えば笑い合ってもいる。なんだかとても親しくなっているようにも見えて、少し妬けてしまった。
 今までしてきたことも無駄ではなく、少しはいい方向に貢献できたのかもしれない。
 これなら、これからの提案にも協力してくれる可能性が高いと思った。

「ニルン様、クトラ。わたし、妃候補を辞退しようと思っています。それで──」
「はあ? なんでそうなるの?!」
「いったいどういうことでございますか?!」

 バァンとたたき割るような音をさせてテーブルに身を乗り出したクトラとニルン様に、続けようと思っていた言葉を遮られた。
 二人は信じられないとでもいうような驚愕の表情を浮かべている。
 そこまでおかしいことを言っているつもりはないのだけれど、と不思議に思っているフィーリアの後ろで、同情するような眼差しをラマはニルン様とクトラに向けていた。

「えっと、言葉の通りだけど……」
「ですから、そのような考えに行き着いた理由を教えていただけませんか?」
「そうそう、理由を教えて!!」

 二人の勢いよく迫り来る圧に押されて、若干引きながらも説明した。

「あの、ウルミス様がダウール様を好きだと知る機会があって……。それに、ウルミス様は城内で働く人達にも妃候補者筆頭だと思われているみたいだし、邪魔になるわたしは早めに辞退した方がいいのかなと思って。ほら、わたし達は城内で働く人達にかなり迷惑をかけているようだから、ね?」

 さすがにダウール様がウルミス様を好きかもとはクトラの前では言えず、それについては言葉に出来なかった。
 フィーリアの説明を聞いて、二人は絶句していた。
 あれ? おかしな説明をしたつもりはなかったのだけれど。フィーリアの言葉の選び方が良くなかったのかと反芻してみる。
 フィーリアが反芻している間、クトラは額を押さえるようにしてなぜか頭を抱えていた。ニルン様はなぜかおかしそうに眉を下げて、困った顔をしている。
 フィーリアがもう一度説明し直した方がいいのかと二人に瞳を向けると、クトラが頭を抱えたまま彫刻のようにずっと固まっていた。どうしたのかと疑問に思って見ている間も、そのままの姿勢で考え込んでいて、ようやく顔を上げたクトラは酷く疲れた顔をしていた。

「……本当にフィーはそれでいいの?」
「うん。いいと思ったからこうしてクトラにお願いするために来てもらったんだもの」
「お願い?」
「ウルミス様がムーリャン様に攻撃されているのを止めたいの」
「ああ、……それについては私も心を痛めておりますのよ」
「確かにウルミス様は被害者だよね」

 思っていたよりも二人がウルミス様に同情的で、これは協力してくれるかもしれないと思えた。

「だからね、ウルミス様を助けたいの。今のままだとウルミス様、寝込んでしまうと思うんだ。それだと平等性がなくなってしまうと思ったから」
「なにがだからなのか理解したくないけれど、言いたいことはわかった」
「そうですわね。ムーリャン様の行いは目に余りますもの。協力いたしますわ」
「ありがとうございます!! クトラとニルン様がいれば百人力。鬼に金棒です」
「なにその言葉」
「本からの引用だよ。素晴らしい助っ人という意味!」
「まあ、その様に思っていただけるなんて光栄ですわ」
「……わかった。わかったよ。もとからムーリャン様はとっちめてやりたいと思っていたから協力してあげる」
「ありがとう。クトラ」

 満面の笑みで礼を言うフィーリアを見て、クトラは大きなため息をついた。

「それで、出来ればウルミス様のためにムーリャン様に妃候補を諦めてもらって、憂いがなくなったらわたしも辞退しようと思っているの」
「いや、だからね。それについてはわたしは納得してないよ」
「なんで?」
「フィーが後悔すると思うから」
「思わないよ。それにクトラのためでもあるんだから」
「わたしのため? だったら、辞退なんてしないでよ」
「どうして? クトラもわたしがいない方がいいでしょ?」

 ダウール様が好きなんだから。例え意味のない妃候補だとしてもいない方がアプローチしやすいと思うんだけど。

「そんなわけないでしょ!」
「まあまあ、とにかく、妃候補の辞退は一旦置いておきましょう」
「……そうだね。先にムーリャン様をどうにかしないといけないわけだし」
「すぐに決着が着くとは思えませんし、ねえ?」

 なぜか必死に引き止めようとする二人の様子に不思議に思っていると、ラマが提案してきた。

「お嬢様。わたくしはお嬢様が幸せならば何も申しませんが、それでも結論を急ぎ過ぎだと思われます。一つずつ解決していってはいかがでしょうか」
「そう? ……そうだね。確かに焦っていた部分もあったかも。ラマ、止めてくれてありがとう」
「いいえ、差し出がましいことをして申し訳ありません」
「そんなことない。ラマ、フィーを止めてくれてありがとう」
「そうでございますわ。ありがとうございます、ラマさん」

 続けられた言葉に、思っていたよりも二人を困らせていたことを理解した。

「クトラ、ニルン様、ごめんなさい。なんだか焦っていたみたいで。どうか、ご協力お願いします」
「まかせて」
「お任せください」

 フィーリアが深く頭を下げると、二人はやっと笑顔を浮かべた。
 その笑顔を見て、フィーリアもほっと息をついて笑顔を浮かべた。

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