シャウには抗えない

神栖 蒼華

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第1章

54 ラオスとイラザの覚悟

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「おはよう、シャウ」
「おはようございます、シャウ」

朝起きて下に降りてきたら、ラオスとイラザが満面の笑顔でシャウを迎えてくれた。

「─ッ」

2人が満面の笑顔を浮かべて家に居ることに、瞬間的に涙が込み上げてきた。
前には当たり前にあった光景を見て、シャウは涙が止まらなくなった。

「「シャウ!」」

泣き始めたシャウを見たラオスとイラザはすぐさまシャウに駆けより覗き込む。

「どうした?」
「どこか痛いのですか?」

2人の心配そうな声を聞いて、首を横に振る。
自分でもなんで泣いているのか分からなかった。
シャウの様子を見た母さんと父さんは2人で顔を見合わせると、仕事に出かける準備を始める。

「シャウ、今日は仕事に行かなくてもいいわ。ラオスとイラザとゆっくり話し合いなさい」
「ラオスとイラザも今日はこちらの仕事は来なくていい。シャウの側に居てやれ」
「「はい、ありがとうございます」」

母さんと父さんの言葉にラオスとイラザは元気に返事を返していた。
シャウは止まらない涙で視界がぼやける中、頷くことで返事を返した。
涙が止まらなくて、シャウ自身なんで涙が止まらないのか分からないくらい涙腺が壊れていた。

父さんと母さんが仕事へ行ってからも、シャウの涙は止まらなかった。
ラオスとイラザに促されて3人でも座れる横長の椅子に座ると、シャウの両側に2人は座り、シャウの涙を掬い取る。
その仕草がいつもシャウが泣くとしてくれた仕草で、それが懐かしくて切なくてまた涙が出てきた。
その涙が零れたときに、ああ、突然涙が溢れてきたのはラオスとイラザが揃って笑っていたからなのだと解った。
2人が揃って笑ってくれていることに突然泣いてしまうほど焦がれていたのだと解った。だから、涙が止まらなくなったのだと。

理由が分かって、やっとシャウは涙が止まり始めた。
高ぶっていたシャウの感情が治まってきたからだろう。
シャウの涙が止まってきたのを感じたラオスは労るようにシャウの目元を撫でる。
そしてイラザは頬を優しく撫でると、優しい声で語りかけた。

「シャウ、聞いて欲しいことがあります」

そういうと、ラオスとイラザが椅子から降りてシャウの片手を取り、目の前に跪く。
2人の行動に驚いて見つめると、ラオスとイラザはともに恋焦がれるような熱を帯びた目でシャウを見つめた。

「「俺達をシャウの伴侶にして欲しい」」
「……え」

2人の言葉に脳の理解が追いつかなかった。
伴侶・・って何だったっけ。
泣いた直後でぼうっとした頭のシャウの理解が追いつかないまま、ラオスとイラザは話し続ける。

「昨日ラオスと話し合いました」
「ああ、それでシャウがいいなら、俺達はそれでいいということになった」
「………ラオス、それだとシャウには伝わりません」

イラザはラオスを見てため息をつくと、シャウを見つめて微笑んだ。

「昨日ラオスと会って、ラオスからシャウの気持ちを聞いたと言われました。俺もシャウから聞いたと伝えると、シャウが望むなら2人でいいだろうとすぐに決まりました。まあ、ラオスと会う前から結果は分かっていたのですが、一応確認してからでないとガルアさんのところへは行けませんでしたから」
「…父さん?」
「はい、ガルアさんに許可を頂きました」
「えっ?」
「シャウが許可すれば伴侶が俺達で良いと」
「うそ……」
「本当です」

伴侶って確か結婚した相手のことをいうんだよね。
やっと少しだけ動き出した頭で、伴侶について思い出した。
えっ、それを僕が許可すれば、2人を伴侶にしても良いと父さんは言ったの?
えっ? 父さんは僕の気持ちを知ってたの?

「シャウ」

混乱して思考がぐちゃぐちゃになったシャウを見て、イラザはシャウの手を強く握ってシャウの意識をイラザに向けた。
イラザに呼ばれたことで意識をイラザに向けると、イラザは甘く熱されて艶めく目でシャウを見つめていた。
その目に囚われて、シャウの心臓は激しく音をかき鳴らし始めた。

「俺はシャウが好きです。
 シャウの唯一になりたい。
 シャウの隣にいつも居たい。
 シャウを護るのは俺でありたい。
 死ぬまで共にありたい。
 ──俺はシャウがいないと生きていけないんです」

言葉を綴るイラザの目はどんどん甘い熱を上げてシャウの心までも焼き尽くすように熱かった。

「だから、シャウが俺とラオスを好きだというのなら、俺はそれでもいいんです。シャウの隣にいられない方が耐えられない。まあ、ラオスだから受け入れられるんですけどね」

最後にくすりと笑うイラザに、つられて笑っていた。

「シャウ」

ラオスの声と共にラオスに握られていた手を引かれる。
ラオスに視線を向けると、ラオスは真っ直ぐとシャウを見つめ、けれど目は火傷するのではないかと思うくらい熱く甘く溶けていた。

「シャウ、好きだ。
 俺と一緒にいて欲しい。
 俺がシャウを必ず護るから。
 必ず俺がシャウを幸せにするから。
 俺が側に居ることを許して欲しいんだ」

そしてラオスはくしゃりと笑うと、目元を柔らかくして愛しげにシャウを見つめる。

「俺もシャウがイラザも好きで構わない。俺はシャウを護る。それが出来るのならイラザがいても構わない。俺がシャウの側に居られるならそれでいいんだ。シャウが側で俺を見てくれているだけでいいんだよ」

ラオスの言葉が終わると、イラザに手を引かれる。

「ですから、俺の手を取って下さい」
「俺を受け入れてくれ」

2人の真剣な眼差しに、胸が熱く苦しくなった。
ラオスとイラザはシャウが2人を好きでも構わないと言ってくれた。
その言葉が嬉しくて、でも本当なのか信じられなくて、どうしても確認してしまう。

「本当にいいの?」
「ああ」
「はい」
「2人を好きでも……」
「そうだ」
「ええ」

全て肯定してくれる2人にまた涙が溢れそうになる。
でも、ここにきて一つの考えが過ぎった。

「でも、そうすると2人が変な目で見られるんじゃ…」

僕はもう覚悟したけど、それに2人を巻き込むのが怖い。

「確かに色々と厳しい目で見られるかもしれません。ですが、堂々としていればいいのです。王族貴族なんかでも一夫多妻制をしているのですから、私達がそうなってもおかしくありません。逆もありでしょう。大丈夫ですよ」
「そうそう、俺達3人で立ち向かっていけばいいだけだろう?」

イラザとラオスの言葉に2人もその事について考えてくれていたのだとわかった。
それも一緒に立ち向かってくれると覚悟してくれていることにシャウは心が震えた。

「シャウ、俺達2人を選んでくれ」
「あとはシャウが俺達を選んでくれればいいのですよ」

2人の言葉に、こらえていた涙が溢れた。
本当に2人の手を取っても大丈夫なんだと分かって、涙が次から次へと頬を伝っていく。

「シャウ、好きです。シャウは?」
「シャウ、好きだ。シャウは?」

2人に改めて好きと言われて、返事をしようと思ったシャウの唇が震えた。
一度大きく息を吸って、ずっと言いたかった言葉を伝える。

「僕もラオスとイラザが好き」

それが言えることが嬉しかった。泣きながら笑うシャウを2人は優しい目で見つめていた。
両手を広げて待っていてくれる2人に飛び込んで抱きつく。2人が大きすぎて2人の背中まで手が届かなくて抱きつくしかできなかったけれど、2人の胸の中で嬉し涙を流した。
また泣き始めたシャウの頭を2人は撫でながら抱きしめ返してくれた。





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