なんだ、このハチャメチャな奴は

神栖 蒼華

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25 ジルヴァンの創術

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アーティとラギをルルメさん達に預けて、マルヌイス司令官のところに戻る。
近くにいた魔法騎士に居場所を尋ねると、まだマルヌイス司令官の天幕が用意出来ていないので、マルロ部隊長の天幕に居るということだった。
メッツァー隊長がしきりに自分の天幕へと誘ったがにべもなく断られたらしい、とその場を見ていた魔法騎士が教えてくれた。その時に漂っていた空気が恐かったとぶるりと肩を震わせて話してくれた様子に、その時の光景が容易に想像できた。
メッツァー隊長相手に強く出られる立場の人が来てくれたことが果たして良かったのか悪かったのか、まだ判断出来ていなかった。
平民に対して寛容な対応をしていたので、メッツァー隊長よりは話の分かる人だとは思ったのだけれど。


マルロ部隊長の天幕の中には、マルヌイス司令官とマルロ部隊長、そしてジルヴァンがいた。
すでにジルヴァンの紹介が終わったのか、いつも通りのジルヴァンが椅子に座っていた。

その緊張感のなさに、マルヌイス司令官にまで気安く「ヴァン」呼びを要求していたりしていないだろうかと心配になる。マルロ部隊長が一緒にいたのだから、危ないときは止めてくれているとは思うけれど……恐くてとても確認出来なかった。

そして、戻ったディルユリーネがマルヌイス司令官に駐屯地内を案内するはずが、何故かジルヴァンを伴って捕虜のいる小屋に来ることになっていた。

「こちらの小屋に捕虜がいます」

マルヌイス司令官の要望で、まず最初に捕虜を見たいと言われた。
そんなことを言い出したということは、マルロ部隊長が送った書類を見たのだろうか。
後ろからマルヌイス司令官の視線を感じながら、捕虜の人達を見てどう判断を下すのか心配だった。
出来れば、捕虜の人達が苦しまない処分をして欲しい。

扉を開け、中に入ると捕虜の人達がディルユリーネに気づいた。

「聖人様!」

嬉しそうに声をかけられる。
満面の笑みを向けられ、反射的に立ち止まってしまう。

(うん、今は聖人様と言って欲しくなかったな……)

マルヌイス司令官にどう思われたのか気になった。けれど、何事もなかったように装い笑みを浮かべて振り返り、マルヌイス司令官を招く。
満面の笑みを浮かべていた捕虜の人達もディルユリーネの他に見知らぬ人物がいることに気づいたのか、小屋の奥に整然と並んで頭を下げた。

マルヌイス司令官はその様子を観察するような鋭い視線を向けて、泰然と小屋に向かって歩いてくる。

小屋の中は緊張感で空気が張り詰めた。
ディルユリーネはマルヌイス司令官が近づいてくることに、徐々に早くなる鼓動を感じながら見つめた。

《バン!!》

何かにぶつかる音が辺りに響く。
そしてマルヌイス司令官が何かにぶつかっているような姿が瞳の前にあった。


──
─────
─────────え?

………………どういうこと?

何が起こったのか分からなかった。


そこに暢気な声が響いた。

「あっ、わりぃ。結界張ってたんだ」

その声がジルヴァンなのは理解した。
──が、言葉は理解出来なかった。

結界?
……結界って何?

(そんなこと聞いてないけど?!)

反射的に心の中で叫んでいた。

衝撃の出来事に固まっていたディルユリーネは、よろめいたマルヌイス司令官を見て走り寄った。

「だっ、…大丈夫ですか?」

ちょうど扉のところで見えない壁とぶつかったかようになったマルヌイス司令官。
その前にディルユリーネが普通に通っていたので、まさか見えない壁があるとは思わず思い切りぶつかっていた。
マルヌイス司令官は赤くなった鼻を隠すように片手で顔を覆い、肩を震わせていた。
どう考えても怒っているとしか思えない。
焦ったディルユリーネが発した言葉は支離滅裂だった。

「あの、申し訳ありません。悪気はまったくないのです。(たぶん……)捕虜の安全を……あ、いえ、あの、捕虜が逃げないように──」
「ふっ、ハハハッ」

突然笑い出したマルヌイス司令官に驚いて、言葉が途切れた。

マルヌイス司令官の様子を見るに、どうやら怒ってはいなそうだった。どちらかというと面白がっているようで、ジルヴァンを振り返って楽しそうに笑っていた。

「面白い! どういうカラクリか説明してくれるか」
「ん? いいぞ? ──これと同じもので小屋の周りを囲っただけだ」

ジルヴァンはポケットから取り出したメノウを手のひらに乗せて見せる。

「それではさっぱり分からないな」
「──だから、知らない奴は入れないようにと思いながら、小屋を囲んだだけだぞ?」
「それはまた想定外の答えが返ってきた。その言い方だと其方が思うだけでこのようなものが出来るということか?」
「さあ……?」
「さあ?」
「儂も初めて見たから分からん」
「初めて?」
「おう。そうなったらいいなと思っただけで、出来るとは思ってなかった」
「……ほお」

マルヌイス司令官の瞳が鋭くなったように感じる。

「少し実験したいことがある。一緒に来い」
「いいぞ」

マルヌイス司令官は結局小屋の中には入らず、もと来た道を戻っていく。
置き去りにされたディルユリーネは、慌てて後を追いかけた。




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