39 / 63
本編
32 お茶会という名の作戦会議 Ⅱ その1
しおりを挟む「おはようございます。ハリー様」
「シェーラ嬢、おはようございます」
襲われた日から、念のためにと大事をとって外出を控えていた。
今日はセリーナから手紙が届き、調査していたことの情報をすりあわせたいとのことでお城に登城する。
その際、アルム兄様にハリー様も連れて行くように言われていた。
ハリー様にどう説明して良いのかわからなくて、とりあえず一緒に来て頂くことだけをお伝えしようという結論に至った。
「今日はハリー様に一緒に来て頂きたい場所があるのですが、宜しいですか?」
「はい、大丈夫です」
ハリー様は少し驚いた後ににこりと笑った。
……少し嬉しそうに見えるのは何故なのかしら?
疑問に思いつつハリー様にエスコートされて馬車に乗り込む。
するといつもより広く感じる馬車の中で突然不安になった。
そういえばあの襲われた日から初めて馬車の中で1人になったんだと気が付いた。
ドクドクと脈打つ音が聞こえる。
大丈夫…大丈夫……。
不安を抑えるために、無意識に耳にあるイヤリングにそっと触れると不思議と落ち着いてきた。
外にはハリー様もいらっしゃるし、お祖父様、お父様、お母様、アルム兄様に頂いた創術品も身に付けているから大丈夫。
みんなに護られている。それを改めて実感して心を落ち着けることが出来た。
馬車が止まり扉が開く。
ハリー様にエスコートされて降りると、視線が突き刺さってくる。
いつものことながら、1人で登城したときは特に強く感じる。
有名なハリー様に伴われて来た令嬢が気になるからだとは思うけれど。それに私はまだ社交界では名前も顔も知れ渡ってはいないから余計そうなるのでしょうね。
出そうになるため息を飲み込み、頑張って笑顔を貼り付けた。
ハリー様が先導していつもの部屋へ向かう。
城の奥へと進むに従って視線が減っていくことに安堵した。
そして、いつもの部屋へ辿り着くとハリー様が護衛としての立ち位置へ移動しようとしているのをハリー様の名前を呼んで止めた。
「ハリー様、今日は一緒に入って頂けますか?」
「もしかして、一緒に来て欲しい所とは……」
「はい、こちらの部屋です」
「そうでしたか……」
残念そうな顔をしたハリー様と瞳が合うと、ハリー様は苦笑して首を振った。
「何故とお聞きしても宜しいですか?」
「アルム兄様がハリー様を連れて行くように仰ったので、何故と聞かれても困ります」
「……アルムが、……分かりました」
アルム兄様の名前を聞いたハリー様はふむと考え込み、シェラルージェを見つめてにこりと笑った。
「シェーラ嬢、ご一緒させていただきます」
「はい。宜しくお願いいたします」
ハリー様に納得して頂けたので、ノックをして部屋に入る。
部屋に入ってきたシェラルージェを見て、マリーとセリーナは笑顔を浮かべる。そして続いて入ってきたハリー様を見て、2人の表情は笑顔のまま固まった。
「おはようございます。マリー、セリーナ」
「……おはよう、シェラ」
「おはようございます、シェラ様?」
マリーは戸惑ったようにハリー様を見ていたし、セリーナはシェラルージェを窺うようによそ行きの挨拶をしてきた。
2人の戸惑いが分かったので、こうなった経緯を簡単に説明した。
「アルム兄様がハリー様も一緒にと仰ったのでお連れしたの」
「なるほど。そうでしたのね。ようこそいらっしゃいました。どうぞおかけになって下さい」
アルム兄様が、という言葉で全て理解してくれたセリーナはハリー様に椅子を勧めた。
「いいえ、私は護衛ですから」
そう固辞して引き下がるハリー様をセリーナは拒否は許さないと瞳で訴える。
「アルム兄様のご指示であるならば、この部屋の中に居るときは客人になりますのでお座り下さい」
セリーナがあえてアルム兄様と強調したことに気づき、ハリー様はそれ以上は何も言わずに示された席に着いた。
私達も席に着くとセリーナがお茶を用意してくれた。
静かに世間話をしてお茶を飲んでいると、ノックの音が響いた。
その音にマリーが応えると、扉を開けてユリウス兄様とカミル兄様が入ってきた。
2人は部屋の中にいたハリー様を見て、一瞬顔色を変えたけれどすぐに笑顔を浮かべて挨拶をしてきた。
「おはよう。セリーナ嬢、シェラ嬢」
「おはようございます。マリー様、シェラ嬢」
ユリウス兄様とカミル兄様の挨拶にマリーとセリーナは「おはようございます」と返していた。
シェラルージェはユリウス兄様とカミル兄様の問うような視線に、マリーとセリーナに伝えた言葉をまた伝えた。
「おはようございます。ユリウス兄様、カミル兄様。本日はアルム兄様にハリー様も一緒にと言われましたのでお連れしました」
ハリー様とユリウス兄様、カミル兄様はシェラルージェが『ユリウス兄様』『カミル兄様』と言ったことに反応を示した。
そして、ユリウス兄様とカミル兄様はやはり事情がわかったようでつまらなそうにため息を吐くとハリー様に向き直った。
「これから見聞きすることは極秘扱いとなっている。アルムに言われてきたということはこれからのことに役立ってくれるということだろう。期待している」
「どうぞ宜しくお願いします」
「はっ、微力ながら精一杯務めさせていただきます」
挨拶が済み、全員が席に着くと、カミル兄様が持ってきた書類を見ながら話しだした。
「シェラに言われた件で調べた結果、確かに事件が起こっていました」
「巧妙に隠されていたが、ある共通点があることが判明した」
「それによって重要人物として出てきたのがダン子爵家のクラリッツェ嬢でした」
「エッ?!」
カミル兄様とユリウス兄様が交互に話していく中、あり得ないところで出てきた名前に驚いて悲鳴に近い声を上げてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
【完結】年下幼馴染くんを上司撃退の盾にしたら、偽装婚約の罠にハマりました
廻り
恋愛
幼い頃に誘拐されたトラウマがあるリリアナ。
王宮事務官として就職するが、犯人に似ている上司に一目惚れされ、威圧的に独占されてしまう。
恐怖から逃れたいリリアナは、幼馴染を盾にし「恋人がいる」と上司の誘いを断る。
「リリちゃん。俺たち、いつから付き合っていたのかな?」
幼馴染を怒らせてしまったが、上司撃退は成功。
ほっとしたのも束の間、上司から二人の関係を問い詰められた挙句、求婚されてしまう。
幼馴染に相談したところ、彼と偽装婚約することになるが――
銀鷲と銀の腕章
河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。
仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。
意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。
全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。
セイレーンの家
まへばらよし
恋愛
病気のせいで結婚を諦めていた桐島柊子は、叔母の紹介で建築士の松井卓朗とお見合いをすることになった。卓朗は柊子の憧れの人物であり、柊子は彼に会えると喜ぶも、緊張でお見合いは微妙な雰囲気で終えてしまう。一方で卓朗もまた柊子に惹かれていく。ぎこちなくも順調に交際を重ね、二人は見合いから半年後に結婚をする。しかし、お互いに抱えていた傷と葛藤のせいで、結婚生活は微妙にすれ違っていく。
よめかわ
ariya
恋愛
遊び人として名高い貴族・夏基は、不祥事の罰として「醜聞の姫」白川殿と政略結婚することに。
初夜、暗い印象しかなかった姫の顔を初めて見た瞬間――大きな黒目がちな瞳、薄桜色の頬、恥ずかしげに俯く仕草に、夏基は衝撃を受ける。
(可愛すぎる……こんな姫が俺の妻!?)
亡き恋人への想いを捨てきれず、夫を拒む白川殿。
それでも夏基は過去の女たちに別れを告げ、花を贈り、文を重ね、誠心誠意尽くして彼女の心を溶かしていく。
儚くて純粋で、泣き顔さえ愛らしい姫を、夏基はもう手放せない――
平安貴族の切なく甘い、極上よめかわ恋物語。
※縦読み推奨です。
※過去に投稿した小説を加筆修正しました。
※小説家になろう、カクヨム、NOVELDAYにも投稿しています。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる