貴方の瞳に映りたい

神栖 蒼華

文字の大きさ
45 / 63
本編

38 お茶会という名の作戦会議 Ⅲ その1

しおりを挟む

ハリー様に依頼された指輪とハリー様に渡すために創っていた腕輪が完成した。

ハリー様に依頼された指輪は指に小花が咲いているようなデザインにしてみた。使う聖石が多い方が付与の効果が強く反映されやすいためである。ただ数よりも質が高い物の方がより効果が高くなるのだけれど、ハリー様の持ってきたペリドットは最高品質だったため、補助程度で数を増すことにしただけだ。
見た目も繊細に、でも可愛らしく仕上がったと思う。セリーナはシェラルージェと好みが似ているから気に入って貰えると思った。

あと、ハリー様へ渡すために創っていた腕輪は悩んだけれど結局完成させることにした。
創っている途中でやめることが創術品製作者としては出来なくて、渡せるかどうかもわからないのに結局創ってしまった。
こちらも物理防御と魔法防御を付与したものと、騎士なので俊敏性向上と身体能力向上を付与したものを創った。
腕輪はケースにしまって棚の奥へしまい込んだ。
陽の目を見ることがない腕輪にシェラルージェのハリー様への気持ちを一緒に閉じ込めた。

シェラルージェは指輪と腕輪を創っているうちに、気持ちが落ち着いていくのを感じていた。
それを実感すると、指輪と腕輪を創った時間は必要だったのだと思えた。
そして、今やらなければいけないこともしっかりと見えてきた。

今優先するべきは、令嬢を襲った犯人を突きとめ捕らえること。
そうしなければ、いつまで経っても怖い思いをした令嬢が安心して外を歩けないから。

そして明日、またセリーナ経由で呼ばれて登城することになっている。
事件について進展があったのだろう。
シェラルージェが襲われた日以降、”館”の方には同じような理由で創術品を依頼しに来る人がいなかったので事件が起きてはいないのだと安堵してはいるのだけれど、それでも絶対ではないので一刻も早く犯人を突き止めたい。
それだけを思って眠りについた。


  ***


翌日、ハリー様はご機嫌な笑顔を浮かべて待っていた。
その笑顔に胸がキュッと痛んだけれど、気力で笑顔を浮かべた。
ハリー様を諦めようとは思ったけれど、嫌われたいわけではないから、前みたいに失礼な態度やご迷惑をおかけしないようにするためにも笑顔でいようと思った。

「おはようございます、ハリー様」
「おはようございます、シェーラ嬢」
「本日もまた以前お願いした場所へご一緒して頂きたいのですが」
「かしこまりました」

シェラルージェの『以前』の言葉だけで何処へ行くのかわかってもらえたようだ。
ハリー様の顔が一瞬険しくなる。がすぐに、シェラルージェへ安心させるように微笑みを浮かべた。
余程今回の事件を腹立たしく思っているのか、この話を聞くとハリー様は毎回怒りに似た感情を一瞬浮かべる。ただシェラルージェが見ているのに気づくとすぐに微笑みを浮かべるのだけれど。

挨拶をしたあと馬車に乗り込み城へ向かう。
セリーナにもあの日以来会うことになる。
シェラルージェはセリーナの前で挙動不審にならないようにしないといけない。セリーナはすぐにシェラルージェの変化を見抜くから、セリーナに気を遣わせないようにするためにも気をつけなければいけなかった。
気を引き締めていると、お城に着いたようだ。

お城に到着すると、やはり不躾な視線が突き刺さってくる。
そういえば、お父様とアルム兄様はこの視線をどう思っているのかしら。
いつもまったく表情を変えずに、ともすれば穏やかに笑みを浮かべていたりする。
私にもそんな表情を浮かべることが出来るのか、そんな気持ちになれるのか、聞いてみたくなった。

部屋の前に辿り着くと、ハリー様がノックをする。
部屋の中から入室の許可が出て、入ると中にはマリーとセリーナに、何故かアルム兄様がいた。

「アルム兄様!」

シェラルージェが声を上げると、アルム兄様は唇の前に人差し指を持ってきて静かにという仕草をした。
シェラルージェは慌てて自分の口を手で覆う。
後ろ手に扉が閉まるのを確認すると、アルム兄様がちょっと楽しそうに笑った。
その笑い顔を見て、アルム兄様がわざとシェラルージェに来ることを黙っていたことがわかった。

(もうどうしてみんなイタズラが好きなのかしら)

そんなにシェラルージェの驚く顔が面白いのだろうか。
そんなところだけユリウス兄様もカミル兄様もアルム兄様も昔から変わらない。

「ごめんよ。兄様がここに来ることを他の者に知られるわけにはいかなかったからね。人知れずに登城したんだ。シェラに言わなかったのはシェラの驚いた顔を見たかっただけなのだけど」
「……もう、本当に驚きました」
「ごめんごめん。でも毎回シェラが可愛い顔をするのがいけないんだよ。だから、ついまた見たくなるんだ」
「私はアルム兄様のオモチャではありません」
「当たり前だよ。シェラは兄様の大切なお姫様だからね」
「………もう」

アルム兄様の大好きだよ視線に、苦笑を浮かべるしかない。
結局シェラルージェもアルム兄様が好きなので、毎回驚かされても許してしまう。

視線を感じて振り向くと、ハリー様が驚いた表情でシェラルージェを見ていた。
それに気づいて顔が朱色を筆で塗ったように赤くなった。
とても恥ずかしいところを見られてしまった。
兄様のこんな姿は朝の食事のときか、ユリウス兄様かカミル兄様がいるときしか見せないから、ハリー様に初めて見られてシェラルージェはとても恥ずかしかった。こういうときのシェラルージェは自分でも間抜けな顔をしているとわかっていたから。

ただアルム兄様のお陰で変にセリーナとハリー様のことを意識しなくて済んだのはありがたかった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

【完結】年下幼馴染くんを上司撃退の盾にしたら、偽装婚約の罠にハマりました

廻り
恋愛
 幼い頃に誘拐されたトラウマがあるリリアナ。  王宮事務官として就職するが、犯人に似ている上司に一目惚れされ、威圧的に独占されてしまう。  恐怖から逃れたいリリアナは、幼馴染を盾にし「恋人がいる」と上司の誘いを断る。 「リリちゃん。俺たち、いつから付き合っていたのかな?」  幼馴染を怒らせてしまったが、上司撃退は成功。  ほっとしたのも束の間、上司から二人の関係を問い詰められた挙句、求婚されてしまう。  幼馴染に相談したところ、彼と偽装婚約することになるが――

銀鷲と銀の腕章

河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。 仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。 意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。 全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。

セイレーンの家

まへばらよし
恋愛
 病気のせいで結婚を諦めていた桐島柊子は、叔母の紹介で建築士の松井卓朗とお見合いをすることになった。卓朗は柊子の憧れの人物であり、柊子は彼に会えると喜ぶも、緊張でお見合いは微妙な雰囲気で終えてしまう。一方で卓朗もまた柊子に惹かれていく。ぎこちなくも順調に交際を重ね、二人は見合いから半年後に結婚をする。しかし、お互いに抱えていた傷と葛藤のせいで、結婚生活は微妙にすれ違っていく。

よめかわ

ariya
恋愛
遊び人として名高い貴族・夏基は、不祥事の罰として「醜聞の姫」白川殿と政略結婚することに。 初夜、暗い印象しかなかった姫の顔を初めて見た瞬間――大きな黒目がちな瞳、薄桜色の頬、恥ずかしげに俯く仕草に、夏基は衝撃を受ける。 (可愛すぎる……こんな姫が俺の妻!?) 亡き恋人への想いを捨てきれず、夫を拒む白川殿。 それでも夏基は過去の女たちに別れを告げ、花を贈り、文を重ね、誠心誠意尽くして彼女の心を溶かしていく。 儚くて純粋で、泣き顔さえ愛らしい姫を、夏基はもう手放せない―― 平安貴族の切なく甘い、極上よめかわ恋物語。 ※縦読み推奨です。 ※過去に投稿した小説を加筆修正しました。 ※小説家になろう、カクヨム、NOVELDAYにも投稿しています。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

処理中です...