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text10 人形
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場所は変わり、東京新宿。ヤタガラス新宿支部のアジト。
「…現状できる治療は全部やったぜ。」
当初は警戒していた朔だったが、オーナーの軍人時代につちかわれた医術の応急処置の腕前や美琴たちの様子を見て少しだけ警戒を解いたらしく。奥のソファーに寝かされた要の頭を優しくなでた
「・・あと軽い栄養失調状態と脱水症状も見られたから、点滴も打たせてもらったぜ。」
「あるがとうございます。」
「・・・・だがなぁ。」
そこまで言うとオーナーはテーブルに視線を移した。そこにはデリバリーで頼んだピザやハンバーガー、高級中華のオードブルや寿司などで埋め尽くされておりその向かい側に美琴がカウンター席に座り二人を見つめている。そしてその横には当たり前のようにツヴァイ、そしてアルファが腰を下ろしていた。
「てめぇら・・・頼めるもん全部注文しやがって」
テーブルの惨状に苦虫を潰したような表情を浮かべて要への治療を終え歩み寄るオーナーに美琴が悪びれた様子もなく笑みを浮べる
「そう言わないでよオーナー。二人とも今まで大変だったみたいだし・・ね?ね?また経費で、ね?」
「・・・この悪ガキが・・・けどなぁ!?お前の所の女王サマが勝手に注文した【ロン・サカパ23】の支払いは報酬から差っ引くからな!?」
「ケチ!!」
「当然の結果だバカタレ!!それが嫌なら女王サマの躾くらいちゃんとしておけ!」
頬を膨らませる美琴にオーナーはそう言い放つとソファーに座る朔と要に向き合い深く頭を下げた。
「改めまして・・・ヤタガラス新宿支部を任されている黒瀬と言います・・・・東雲先生には、大変お世話になりまして・・・」
「・・・龍樹を知っている知ってるんですか?」
朔の言葉にオーナーは小さく頷く
「えぇ・・・先の大戦の際には率先し、祖国の防衛に力を注いでくださいました・・そして、大戦後もご自身が矢面に立ち、日本の復旧作業や・・・【デウスロイドの人権法】を確立させようと・・・」
「・・・・は?何それ」
オーナーの口から出た言葉に美琴が首をかしげると朔が静かに語りだした
「・・大戦後に作成されたデウスロイドやマキナロイドが起こしてしまった悲しい事故や事件に、龍樹は心を痛めていたんです・・・だからせめて・・彼らや彼女らにも、人権を与え、物では無く一つの個として生きていく権利を与えてやりたい。・・そう願い、龍樹はその法案を作り確約させようと動いていたんです」
朔の言葉に美琴の瞳から色が失せ、静かな声色が言葉を紡ぐ
「・・・・・デウスロイド、マキナロイドが【どうやって作られた】かを知って「美琴さん」
その言葉を、朔が遮り穏やかな瞳で見つめてくる
「・・・・その話は、止めていただけませんか。・・要には、聞かせたくないんです」
「・・・・・わかった。」
朔の瞳から滲む願いに、美琴は深いため息をつくと、朔はさらに話をつづけた
「いつかは知らなければいけない真実だと言うのはわかってるんです・・・でも、話さなければいけない時がきたら・・私の口から話します」
「・・わかった。そう言うなら、無理には聞かないよ。」
「ありがとうございます・・・」
そんな二人のやり取りを静かに眺めていたツヴァイはグラスに注がれていたラムを飲み干し、残った氷をくるくると回した
「・・・・・・」
「ツヴァイ?」
「・・・なんでも無い。少し酔っただけだ」
「?・・・そう?」
ツヴァイの言葉に美琴は不思議そうに首を傾げるが、特に気にもせずまた朔と要の様子を静かに眺めていた。
今夜は要と朔の状態も考え、アジトにて英気を養う事になった。そして穏やかな空気の中で一人、ツヴァイはアジトの屋上に足を運ばせると眼下に広がる夜景を眺めながら煙草に火をつけぼんやりと町の様子を眺めていた
「・・・・・・・」
ー デウスロイドやマキナロイドが【どうやって作られたか】知っての考えなの? ー
美琴の言葉が静かに蘇る。
あの瞳をみたのは久しぶりだった。・・そう、まだ自分がはぐれた野良犬だったあの頃に一度見た瞳。
【人間】に絶望しきったあの・・・
「ーーーーー アンタも一服しに来たのかい?」
ふと、物思いにふけっていると背後の扉が開く音がした。視線だけそちらに向ければそこに居たのは要のデウスロイド、朔であった。
「悪かったな、ウチの女王サマがアンタに妙な事言いかけちまった」
「いえ・・・いつかは要に伝えなければいけないと、理解はしているんですが」
苦笑いし、ツヴァイの隣にたたずむ朔にツヴァイがさらに言葉を続ける
「・・・・まぁ、表情が曇るのは目に見えてるわな。」
「・・・・・・」
先の大戦後、人口減少に伴い作り出されたあらたなAI、人口生命体。デウスロイドとマキナロイド。
制作に携わったアメリカのプロメテウス社、ドイツのヴィクター社、中国の海市蜃楼は一気に名声を得てその名を世界へと轟かせた。
「・・ははッ、笑えるよなぁ?非合法なやり方で作り出した俺たちに対して自分たちを【神に選ばれた天の御使い】と勘違いしてやがる。」
ツヴァイの言葉に朔は表情を曇らせた。
新たな人類。機械の生命体。何故彼らは・・・彼女らは【人間のように】振舞えるのか
答えは一つ。
「ーーーー 俺たちの頭には、敗戦国や人身売買で売られた【人間の脳】が埋め込まれているなんてさ。」
「…現状できる治療は全部やったぜ。」
当初は警戒していた朔だったが、オーナーの軍人時代につちかわれた医術の応急処置の腕前や美琴たちの様子を見て少しだけ警戒を解いたらしく。奥のソファーに寝かされた要の頭を優しくなでた
「・・あと軽い栄養失調状態と脱水症状も見られたから、点滴も打たせてもらったぜ。」
「あるがとうございます。」
「・・・・だがなぁ。」
そこまで言うとオーナーはテーブルに視線を移した。そこにはデリバリーで頼んだピザやハンバーガー、高級中華のオードブルや寿司などで埋め尽くされておりその向かい側に美琴がカウンター席に座り二人を見つめている。そしてその横には当たり前のようにツヴァイ、そしてアルファが腰を下ろしていた。
「てめぇら・・・頼めるもん全部注文しやがって」
テーブルの惨状に苦虫を潰したような表情を浮かべて要への治療を終え歩み寄るオーナーに美琴が悪びれた様子もなく笑みを浮べる
「そう言わないでよオーナー。二人とも今まで大変だったみたいだし・・ね?ね?また経費で、ね?」
「・・・この悪ガキが・・・けどなぁ!?お前の所の女王サマが勝手に注文した【ロン・サカパ23】の支払いは報酬から差っ引くからな!?」
「ケチ!!」
「当然の結果だバカタレ!!それが嫌なら女王サマの躾くらいちゃんとしておけ!」
頬を膨らませる美琴にオーナーはそう言い放つとソファーに座る朔と要に向き合い深く頭を下げた。
「改めまして・・・ヤタガラス新宿支部を任されている黒瀬と言います・・・・東雲先生には、大変お世話になりまして・・・」
「・・・龍樹を知っている知ってるんですか?」
朔の言葉にオーナーは小さく頷く
「えぇ・・・先の大戦の際には率先し、祖国の防衛に力を注いでくださいました・・そして、大戦後もご自身が矢面に立ち、日本の復旧作業や・・・【デウスロイドの人権法】を確立させようと・・・」
「・・・・は?何それ」
オーナーの口から出た言葉に美琴が首をかしげると朔が静かに語りだした
「・・大戦後に作成されたデウスロイドやマキナロイドが起こしてしまった悲しい事故や事件に、龍樹は心を痛めていたんです・・・だからせめて・・彼らや彼女らにも、人権を与え、物では無く一つの個として生きていく権利を与えてやりたい。・・そう願い、龍樹はその法案を作り確約させようと動いていたんです」
朔の言葉に美琴の瞳から色が失せ、静かな声色が言葉を紡ぐ
「・・・・・デウスロイド、マキナロイドが【どうやって作られた】かを知って「美琴さん」
その言葉を、朔が遮り穏やかな瞳で見つめてくる
「・・・・その話は、止めていただけませんか。・・要には、聞かせたくないんです」
「・・・・・わかった。」
朔の瞳から滲む願いに、美琴は深いため息をつくと、朔はさらに話をつづけた
「いつかは知らなければいけない真実だと言うのはわかってるんです・・・でも、話さなければいけない時がきたら・・私の口から話します」
「・・わかった。そう言うなら、無理には聞かないよ。」
「ありがとうございます・・・」
そんな二人のやり取りを静かに眺めていたツヴァイはグラスに注がれていたラムを飲み干し、残った氷をくるくると回した
「・・・・・・」
「ツヴァイ?」
「・・・なんでも無い。少し酔っただけだ」
「?・・・そう?」
ツヴァイの言葉に美琴は不思議そうに首を傾げるが、特に気にもせずまた朔と要の様子を静かに眺めていた。
今夜は要と朔の状態も考え、アジトにて英気を養う事になった。そして穏やかな空気の中で一人、ツヴァイはアジトの屋上に足を運ばせると眼下に広がる夜景を眺めながら煙草に火をつけぼんやりと町の様子を眺めていた
「・・・・・・・」
ー デウスロイドやマキナロイドが【どうやって作られたか】知っての考えなの? ー
美琴の言葉が静かに蘇る。
あの瞳をみたのは久しぶりだった。・・そう、まだ自分がはぐれた野良犬だったあの頃に一度見た瞳。
【人間】に絶望しきったあの・・・
「ーーーーー アンタも一服しに来たのかい?」
ふと、物思いにふけっていると背後の扉が開く音がした。視線だけそちらに向ければそこに居たのは要のデウスロイド、朔であった。
「悪かったな、ウチの女王サマがアンタに妙な事言いかけちまった」
「いえ・・・いつかは要に伝えなければいけないと、理解はしているんですが」
苦笑いし、ツヴァイの隣にたたずむ朔にツヴァイがさらに言葉を続ける
「・・・・まぁ、表情が曇るのは目に見えてるわな。」
「・・・・・・」
先の大戦後、人口減少に伴い作り出されたあらたなAI、人口生命体。デウスロイドとマキナロイド。
制作に携わったアメリカのプロメテウス社、ドイツのヴィクター社、中国の海市蜃楼は一気に名声を得てその名を世界へと轟かせた。
「・・ははッ、笑えるよなぁ?非合法なやり方で作り出した俺たちに対して自分たちを【神に選ばれた天の御使い】と勘違いしてやがる。」
ツヴァイの言葉に朔は表情を曇らせた。
新たな人類。機械の生命体。何故彼らは・・・彼女らは【人間のように】振舞えるのか
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