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本編
へんたいせんようおせわががり②※
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ある夜、いつものように夕食の配膳と手伝いをするためにマクシムの部屋を訪れると、さも「困っています」といった顔で小首を傾げた美貌の変態執事がいた。因みに夜は執事服なので、ズボンは脱いでいない。夜着よりもしっかりとした作りだから、誰かの手を借りねばマクシムはズボンを脱ぐまでは出来ないのである。
「入浴を手伝ってくれる同僚たちに、軒並み用事が出来てしまいまして……困りましたねぇ、これでは体を洗えません。清潔に努めねばならない執事としては実に困りました」
白々しい。絶対に何か裏から手を回したに違いない。サラは疑いの眼差しをマクシムに向けた………そして、その視線を感じ、変態は息を荒げ始める。実に変態だ。
「…………私に何しろって言うんですかぁ……」
「分かりませんか?仕方がありませんね、察しの悪いサラの為に教えて差し上げましょう。……ふふ、今晩は入浴の手伝いをお願いします」
「いいい嫌ですよぅ!そんな娼婦さんみたいな仕事むりですぅ!!!!」
余りの事態に顔を真っ赤にして叫ぶサラ。その頬を撫でようとして…………ぺちっ!と叩き落とされたマクシムは、叩かれて少し赤くなった手の甲にキスをして熱い吐息をもらした。そして、ねっとりと絡みつくような視線をサラに向ける。
「……………………貴女が娼婦だったなら、即座に身請け監禁の末に孕ませてさっさとお嫁にするんですけどねぇ………。もちろん、サラはそう言うと思って、湯着もご用意しましたよ!これなら全裸を私の前に晒さずにすむでしょう?」
サラは、奴から漏れ聞こえて来た妄想と不穏な言葉の羅列を聞かなかったことにした。変態の妄言に関わると絶対に大変なことになると、彼女の本能が告げている。スルーすることも変態と関わる上では大切なことだと、サラはこの二ヶ月で学んだのだ。
「……………分かりましたよぅ、やれば良いんでしょう」
湯着もあると聞き、サラは肩の力を抜いて頷いた。マクシムの裸を見ることになるが、毎朝着替えを手伝っているのだから今更だ。それに、使用人用の浴場を使うのだから流石に他人が入ってくるような場所で目に余るようなセクハラはすまい。彼女は湯着を受け取りながらそう考えていた。
…………その予想が余りにも甘すぎたことを、サラはその後思い知ることになる。
ガールデン家には、使用人用に誂えた浴場があった。数代前の奥様が考案したというその浴場は、使用人5人が一度に入っても十分な広さだ。また、時間帯で『男湯』『女湯』を切り替えるので覗きの心配もない。
石を組んで誂えた大きな岩風呂は、お屋敷伝統で自慢の一品だ。湯を沸かさずとも『温泉』というお湯を裏山から引いてきているので、この浴場はいつでも温かいお湯を浴びることができる優れもの。これ目当てにガールデン家を奉公先に選ぶ者も少なくないとか。
……浴場を管理している『お風呂屋』の気まぐれで、たまに湯船がえげつない色や匂いに変わったりするが、使用人たちにはそういう事も含め、とても親しまれている。
そして現在、浴場には『特別使用中』の立て札がかかっていた。
「甘かったですよぅ………うう……これじゃ人目とかないし……っていうか、そもそもこの場でいう『人の目』って、あったらあったで全員スッポンポンじゃないですかぁあ………うぁうううぅう」
美しく筋肉のついた背中をゴシゴシと力いっぱいこすりながら、サラは心の悔し涙を流していた。
「ふふふふふサラの瞳に私以外の男への嫌悪が浮かぶことなんて考えたくもありません。他の者にも話は通してありますからね、貴女は私の肉体だけをしっかり見ていてください。あとその洗い方とても良いですね!私の背中に貴女のやるせない想いが刻みつけられているかのようです。このヒリヒリする感覚すら愛おしい……ッ」
「ああ、はいはい。お背中流しますよぅ」
「サラ!!はぁ!!!容赦ない熱湯が肌に染みて燃えるようです!!私の体に貴女が刻みついて………はぁッたまりませんサラ!!お嫁にきなさい!!!」
……………心温まる変態の入浴風景である。
マクシムの変態発言をお湯と共に流しながら、サラは自分の適応力をひしひしと感じていた。
「はいはいはい、次は頭を洗いますからねぇ」
マクシムの前に回り込み、頭を掴んでぐいっと俯かせる。長い銀髪にお湯を流し、髪専用石鹸をふりかけて泡立てていく。(因みに、本日使用している石鹸類は全てサラが愛用している物と同じ物ばかりだった。変態の思考が透けて見えてサラは全力で引いた)
白い泡の中で煌めく銀髪をわしわし洗っていると、何だか昔実家で飼っていた白い犬を思い出す。サラにとびきり懐いていたその犬は、お風呂が大好きだった。小さなサラが「とってこい!」と言って大暴投し、沼に落っこちた棒きれを、泥だらけになりながらも拾ってくるような可愛い奴だった。その後サラに飛びつくものだから…よく母に叱られ一緒にお風呂に入ったものだ。
………愛犬の思い出に浸っていた彼女は気付かなかった。頭から被ったお湯の合間から、彼女の柔らかい微笑みを覗き見て、マクシムがうっとりと目を細めていたことに。
「さて、次は前を洗って頂きます」
濡れた髪の毛をかきあげながら、琥珀色の双眸を蕩けさせマクシムが微笑む。その瞬間、先程までの変態性が鳴りを潜め、壮絶な色気が垂れ流され始めた。髪の毛から滴る雫が、マクシムの首筋を伝い、胸筋を通って凹凸のある腹を下っていく………サラはその下にあるものに気付き、硬直した。
腰布をナニかが押し上げている。しかも生半可な大きさではない。どうやら、マクシムは麗しい顔に似合わない凶悪なブツをお持ちのようだ。
「………何ですかそれ………」
「私の生殖器です」
「………何でそんなになってるんですぅ…?」
「サラに触れられて興奮したからです」
「うわぁアぁん見せるなやめろぉ変態変態変態いやぁぁあぁ……!!」
「ははは、サラは可愛くてお馬鹿ですねぇ!見せないと洗えないではないですか」
「………えっ、ま、まさか…………」
この後の展開を感じ取り、青褪めたサラを実に愛しそうに眺めながら、色気を垂れ流す変態は………殊更にゆっくりと腰布を解いた。
「ひェッ!!?」
開放されたマクシムの肉茎が、ぶるんと起き上がる。その立派なご様子に、今度こそサラは悲鳴をあげて石のように固まった。
「私の愚息を洗って下さい。………デリケートな部分なので、サラの手の平で……ね?」
やはり、マクシムは変態だ。
恋する乙女の許容量を超えた事態に、サラは唇を噛み締めた。
……こんな事態でも気を失えない自分の丈夫な精神を心底恨みながら。
「入浴を手伝ってくれる同僚たちに、軒並み用事が出来てしまいまして……困りましたねぇ、これでは体を洗えません。清潔に努めねばならない執事としては実に困りました」
白々しい。絶対に何か裏から手を回したに違いない。サラは疑いの眼差しをマクシムに向けた………そして、その視線を感じ、変態は息を荒げ始める。実に変態だ。
「…………私に何しろって言うんですかぁ……」
「分かりませんか?仕方がありませんね、察しの悪いサラの為に教えて差し上げましょう。……ふふ、今晩は入浴の手伝いをお願いします」
「いいい嫌ですよぅ!そんな娼婦さんみたいな仕事むりですぅ!!!!」
余りの事態に顔を真っ赤にして叫ぶサラ。その頬を撫でようとして…………ぺちっ!と叩き落とされたマクシムは、叩かれて少し赤くなった手の甲にキスをして熱い吐息をもらした。そして、ねっとりと絡みつくような視線をサラに向ける。
「……………………貴女が娼婦だったなら、即座に身請け監禁の末に孕ませてさっさとお嫁にするんですけどねぇ………。もちろん、サラはそう言うと思って、湯着もご用意しましたよ!これなら全裸を私の前に晒さずにすむでしょう?」
サラは、奴から漏れ聞こえて来た妄想と不穏な言葉の羅列を聞かなかったことにした。変態の妄言に関わると絶対に大変なことになると、彼女の本能が告げている。スルーすることも変態と関わる上では大切なことだと、サラはこの二ヶ月で学んだのだ。
「……………分かりましたよぅ、やれば良いんでしょう」
湯着もあると聞き、サラは肩の力を抜いて頷いた。マクシムの裸を見ることになるが、毎朝着替えを手伝っているのだから今更だ。それに、使用人用の浴場を使うのだから流石に他人が入ってくるような場所で目に余るようなセクハラはすまい。彼女は湯着を受け取りながらそう考えていた。
…………その予想が余りにも甘すぎたことを、サラはその後思い知ることになる。
ガールデン家には、使用人用に誂えた浴場があった。数代前の奥様が考案したというその浴場は、使用人5人が一度に入っても十分な広さだ。また、時間帯で『男湯』『女湯』を切り替えるので覗きの心配もない。
石を組んで誂えた大きな岩風呂は、お屋敷伝統で自慢の一品だ。湯を沸かさずとも『温泉』というお湯を裏山から引いてきているので、この浴場はいつでも温かいお湯を浴びることができる優れもの。これ目当てにガールデン家を奉公先に選ぶ者も少なくないとか。
……浴場を管理している『お風呂屋』の気まぐれで、たまに湯船がえげつない色や匂いに変わったりするが、使用人たちにはそういう事も含め、とても親しまれている。
そして現在、浴場には『特別使用中』の立て札がかかっていた。
「甘かったですよぅ………うう……これじゃ人目とかないし……っていうか、そもそもこの場でいう『人の目』って、あったらあったで全員スッポンポンじゃないですかぁあ………うぁうううぅう」
美しく筋肉のついた背中をゴシゴシと力いっぱいこすりながら、サラは心の悔し涙を流していた。
「ふふふふふサラの瞳に私以外の男への嫌悪が浮かぶことなんて考えたくもありません。他の者にも話は通してありますからね、貴女は私の肉体だけをしっかり見ていてください。あとその洗い方とても良いですね!私の背中に貴女のやるせない想いが刻みつけられているかのようです。このヒリヒリする感覚すら愛おしい……ッ」
「ああ、はいはい。お背中流しますよぅ」
「サラ!!はぁ!!!容赦ない熱湯が肌に染みて燃えるようです!!私の体に貴女が刻みついて………はぁッたまりませんサラ!!お嫁にきなさい!!!」
……………心温まる変態の入浴風景である。
マクシムの変態発言をお湯と共に流しながら、サラは自分の適応力をひしひしと感じていた。
「はいはいはい、次は頭を洗いますからねぇ」
マクシムの前に回り込み、頭を掴んでぐいっと俯かせる。長い銀髪にお湯を流し、髪専用石鹸をふりかけて泡立てていく。(因みに、本日使用している石鹸類は全てサラが愛用している物と同じ物ばかりだった。変態の思考が透けて見えてサラは全力で引いた)
白い泡の中で煌めく銀髪をわしわし洗っていると、何だか昔実家で飼っていた白い犬を思い出す。サラにとびきり懐いていたその犬は、お風呂が大好きだった。小さなサラが「とってこい!」と言って大暴投し、沼に落っこちた棒きれを、泥だらけになりながらも拾ってくるような可愛い奴だった。その後サラに飛びつくものだから…よく母に叱られ一緒にお風呂に入ったものだ。
………愛犬の思い出に浸っていた彼女は気付かなかった。頭から被ったお湯の合間から、彼女の柔らかい微笑みを覗き見て、マクシムがうっとりと目を細めていたことに。
「さて、次は前を洗って頂きます」
濡れた髪の毛をかきあげながら、琥珀色の双眸を蕩けさせマクシムが微笑む。その瞬間、先程までの変態性が鳴りを潜め、壮絶な色気が垂れ流され始めた。髪の毛から滴る雫が、マクシムの首筋を伝い、胸筋を通って凹凸のある腹を下っていく………サラはその下にあるものに気付き、硬直した。
腰布をナニかが押し上げている。しかも生半可な大きさではない。どうやら、マクシムは麗しい顔に似合わない凶悪なブツをお持ちのようだ。
「………何ですかそれ………」
「私の生殖器です」
「………何でそんなになってるんですぅ…?」
「サラに触れられて興奮したからです」
「うわぁアぁん見せるなやめろぉ変態変態変態いやぁぁあぁ……!!」
「ははは、サラは可愛くてお馬鹿ですねぇ!見せないと洗えないではないですか」
「………えっ、ま、まさか…………」
この後の展開を感じ取り、青褪めたサラを実に愛しそうに眺めながら、色気を垂れ流す変態は………殊更にゆっくりと腰布を解いた。
「ひェッ!!?」
開放されたマクシムの肉茎が、ぶるんと起き上がる。その立派なご様子に、今度こそサラは悲鳴をあげて石のように固まった。
「私の愚息を洗って下さい。………デリケートな部分なので、サラの手の平で……ね?」
やはり、マクシムは変態だ。
恋する乙女の許容量を超えた事態に、サラは唇を噛み締めた。
……こんな事態でも気を失えない自分の丈夫な精神を心底恨みながら。
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