サラ・ノールはさみしんぼ

赤井茄子

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本編

使用済みタオルの行方※

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 薄暗い部屋の中で、くぐもった女の喘ぎ声と熱い息遣いが断続的に響いている。狭苦しい部屋を占領するベッドの上では、一組の男女が重なり合っていた。……いや、ベッドに括り付けられた女を、男が蹂躙していた、と言ったほうが良いかもしれない。
 女は、短めの茶髪をベッドに擦り付けながら必死に唇を噛み締め、声を漏らさぬよう男の責苦に耐えていた。この場所……場末の娼館は壁が恐ろしく薄いので、ちょっと大きな声を出すと隣の部屋に聞こえてしまうのだ。その証拠に、隣の壁からは激しい水音と媚びるような甘ったるい女の声が聞こえてくる。

 ―――こんな場所では、皆割り切ってむしろその環境を楽しんでいるというのに。娼館に売られて一年もたっていない彼女は、未だ羞恥心を捨てきれていないらしい。娼婦でありながらも初なその反応が、ますます男の劣情を煽った。



「…………貴女は、本日この私が身請け致しました」

 腰の動きを緩め、男が耳元で囁くと、女―――サラは、焦茶色の瞳を見開いて彼を見つめた。その瞳は、色濃い絶望と少しの諦念が混ざって潤んでいる。男は―――マクシムは、その瞳にゾクゾクと心を震わせると、再び腰を激しく打ち付け始めた。柔い膣奥を抉られ、サラは白い喉をそらせ快楽に体を戦慄かせる。

「サラ………はぁ、サラ………もう他の男をここに咥えこむ必要はないんです。私だけを見て、私だけを受け入れて、私の子を孕んで下さい。サラ……!出しますよ!!」
「やっ……嫌ぁ!今日は、今日だめですぅ!!だって、だって…………ッあ!ぁああぁあ!!!!!!」

 ついに大きな声を出して絶頂した愛しい女のナカに、たっぷりと子種を注ぎ込みながら……マクシムはうっとりと微笑む。彼女の薄い腹は彼の形に少し膨れ、それがまたマクシムの征服欲を刺激した。

「嗚呼、そうですよねぇ。今日サラは避妊薬を飲んでいませんから……この一回で孕んでしまうかもしれません」
「あ、あぁ……やぁッ……そんな、まさか」
「ええ、店主にお願いしましたよ。サラに薬を持たせないように、と」

 サラは呆然とした顔で、マクシムを見る。その表情にさらにゾクゾクする。ああ、たまらない。もっと、もっと彼女の色んな顔が見たい。
 身請けが決まった今、場末の娼婦でしかない哀れなサラはもはやマクシムから逃れられない。これからは、怒った顔も泣いた顔も蕩けた顔も胸も手も足も膣も子宮も皮膚細胞も髪の毛の一筋すら全て全てマクシムのものだ。

「サラ………サラ、孕ませてさしあげます。私と貴女の細胞が混じり合った、愛の結晶をその子宮に孕ませて差し上げます。さぁ、もっと腰を上げて、私にもっと、もっと貴女を感じさせてください……!」
「アッ………あぅ!あん!いやぁ!へんたい!!やだぁ!!いやぁあ!!だれかぁあ!!!!!」
「はははは、サラ!!!泣いても誰も助けに来ませんよ!サラ!!貴女にはもう私だけなんです。私に縋りなさい!どんなものからも護って、誰よりも何よりも貴女を……サラ………サラ………ぁあ、あ、出ます!ハァッ、サラ!!」
「あん、あ!やぁあッ!!いや!出しちゃいや、ですぅ!!だめぇえええ!!!」

 安いベッドがギシギシと軋み、快感に泣き叫びながら喘ぐサラを抱き締めてマクシムは絶頂した。何人もの男を受け入れたであろう彼女のナカを、自分の白濁で容赦なく染め上げていく。

「………ぁ、ア………まく、しむ……さ……」
「サラ…………はぁ、可愛い…サラ…」

 さくらんぼのように熟れて愛らしいサラの唇に、マクシムはゆっくりと唇を寄せ…………





 ゴワゴワしたタオルに顔を押し付けた。

「嗚呼、サラ………イイ……この香りだけで何回でも出来ます……素晴らしい…!」

 もちろん此処は場末の娼館などではない。マクシムの自室で、さらに言えばマクシムはこの屋敷の執事だ。サラは侍女として働いているし、娼婦ではない。
 彼はズボンと下履きを脱ぎ、サラのタオルに顔を押し付け匂いをかぎながら己を慰めつつ、『娼婦サラを身請けして監禁孕ませ妄想』に浸っていたというわけである。気持ち悪い変態だ………この光景をサラが見たら、マクシムに渡したタオルを迷い無く焼却処分にすることであろう。しかし無念、サラは今頃自室で夢の中………目覚める頃にはマクシムによって綺麗に証拠隠滅が終わっている。

「………あと二、三回『使用』したら、タオルに射精して終わるとしましょう」

 薄闇で金色に光る目を細め、マクシムは再び夢想する。次は、政略結婚の駒として降嫁させられた王女サラと、彼女を娶った伯爵マクシムという設定である。タオルに再び顔を埋め、彼女の香りを胸いっぱいに吸い込みながら………マクシムは妄想の楽園へと旅立っていった。



 因みに、その後マクシムの白濁で汚されたベトベトのタオルは、彼の手ずから優しく洗われ―――――柑橘系の香りが仄かに漂う清潔なタオルに生まれ変わって、サラの手元に戻っていった。
 まさか返して貰えるとは思っていなかったサラは、タオルの帰還を大変喜んでいたという。
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