27 / 54
初めてのフロリダ・メルディ④
しおりを挟む
「お前本当にこういうの好きだよな」
「大好き!……あっ何アレかわいい!」
移動型ショップに、羽っぽいもののついた帽子が並んでいる。二つ並んだ赤く丸い目、もふもふした羽の感じからしてモチーフはきっとモスマン。ガイドブックでも一押しグッズの一つ、トワイライトゾーン限定のモスマンキャップだ。
舞花はウキウキでモスマンキャップを一つとり、お会計しようとして――隣から伸びた太い腕に阻まれた。
「……吉弘、何で勝手に払ってんの」
「ん? 俺も買うから、まとめて払った方がいいだろ」
吉弘はサッと舞花のモスマンキャップを取り上げて、自分のものと合わせてお会計を済ませてしまった。何だか釈然としない。
そうして財布をもったまま頬を膨らませた舞花の頭に、先程のモスマンキャップが被せられる。
「……しかも色違いのお揃いとか」
「何だよ。これがメルディの醍醐味だろ」
舞花はオーソドックスな黒灰色モスマンなのに対し、吉弘はよりにもよってピンクのモスマンだ。短い黒髪で、切れ長の瞳の大男がピンクのモスマンキャップを意気揚々と被る。
「でもピンク割と似合うよね。昔から」
「そうか? そう言われると何か照れ臭ぇな」
ピンク色の羽が、吉弘が動くたびにふわふわと揺れる。彼は相変わらずスパダリ族効果でキラキラしていたし、その背後では紫色の不思議な花が咲いているが……。
――ちょっと可愛い、かもしれない?
照れたように笑う吉弘が、妙に可愛く見えて舞花はささやかな胸を押さえた。苦しいような、愛おしいような、叫び出したいような、名状しがたい心持ち。
これはアレか、世にいうギャップ萌えというやつだろうか? 吸血UMAの代表格、怖い見た目のチュパカブラだが、実は宇宙人に攫われやすかったらしい、的な。
「吉弘って、チュパカブラに似てるって言われない?」
「あ? ねぇよ。似ても似つかねぇだろ」
一蹴されてしまった。
そんな真顔で答えなくても、ただのUMAジョークなのに……と思いつつ、舞花はモスマンキャップをキュッと被り直す。
ふわふわ揺れる灰色の羽は浮足立った彼女の気持ちを代弁してくれているかのようだった。
「大好き!……あっ何アレかわいい!」
移動型ショップに、羽っぽいもののついた帽子が並んでいる。二つ並んだ赤く丸い目、もふもふした羽の感じからしてモチーフはきっとモスマン。ガイドブックでも一押しグッズの一つ、トワイライトゾーン限定のモスマンキャップだ。
舞花はウキウキでモスマンキャップを一つとり、お会計しようとして――隣から伸びた太い腕に阻まれた。
「……吉弘、何で勝手に払ってんの」
「ん? 俺も買うから、まとめて払った方がいいだろ」
吉弘はサッと舞花のモスマンキャップを取り上げて、自分のものと合わせてお会計を済ませてしまった。何だか釈然としない。
そうして財布をもったまま頬を膨らませた舞花の頭に、先程のモスマンキャップが被せられる。
「……しかも色違いのお揃いとか」
「何だよ。これがメルディの醍醐味だろ」
舞花はオーソドックスな黒灰色モスマンなのに対し、吉弘はよりにもよってピンクのモスマンだ。短い黒髪で、切れ長の瞳の大男がピンクのモスマンキャップを意気揚々と被る。
「でもピンク割と似合うよね。昔から」
「そうか? そう言われると何か照れ臭ぇな」
ピンク色の羽が、吉弘が動くたびにふわふわと揺れる。彼は相変わらずスパダリ族効果でキラキラしていたし、その背後では紫色の不思議な花が咲いているが……。
――ちょっと可愛い、かもしれない?
照れたように笑う吉弘が、妙に可愛く見えて舞花はささやかな胸を押さえた。苦しいような、愛おしいような、叫び出したいような、名状しがたい心持ち。
これはアレか、世にいうギャップ萌えというやつだろうか? 吸血UMAの代表格、怖い見た目のチュパカブラだが、実は宇宙人に攫われやすかったらしい、的な。
「吉弘って、チュパカブラに似てるって言われない?」
「あ? ねぇよ。似ても似つかねぇだろ」
一蹴されてしまった。
そんな真顔で答えなくても、ただのUMAジョークなのに……と思いつつ、舞花はモスマンキャップをキュッと被り直す。
ふわふわ揺れる灰色の羽は浮足立った彼女の気持ちを代弁してくれているかのようだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
52
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる