スパダリ族はお断り!

赤井茄子

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本気で食われる5秒前くらい

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 立ち上がった吉弘が、ゆっくりとベッドに乗り上げてきた。そして、仰向けに寝転がったまま固まった舞花の上にゆっくりと覆い被さってくる。
 天井の灯りを大きな背中で遮り、逆光を浴びてこちらを見下ろされた。すると、大柄な体がさらに大きくなり、妙な威圧感がある。
 ついでにスパダリ族のキラキラ効果がおかしい。
 紫がかって妙に妖しく輝きを増していく。もうキラキラを通り越してギラギラだ。

「よ、吉弘、何……っひぇ!?」

 大きな手のひらが、舞花の両手首を掴んで頭の上に縫い付ける。バスローブの少しはだけた太ももに跨られ、ぐっと少し体重をかけられただけで足も満足に動かせない。
 力の差は圧倒的。まな板の上の鯉とか、標本にされそうな虫とか、そんな状況に陥って初めて彼女は焦りの中でようやく薄っすら危機感を感じ始めた。

「やっ、ぁ、はなして……っ」
「放さねぇよ。折角捕まえたんだから」

 柔らかく顎を掴まれ、舞花は目を見開く。彼の背後では、あの紫色の花がゆっくりと蕾を開いてゆく。
 乱れ咲く花々を縫うように、舞花を囲い込み捕らえる縄のように緑色の蔓が伸び上がる。

「『手近で手軽』? そんな相手にここまで手間かけてキスのお願いなんざするかよ」

 そこにいたのは、気のおけない無邪気で無害な幼馴染ヨシくんではなく――――。

「――好きだ、舞花。お前に惚れてるから、キスさせてくれ」

 情欲と慕情を滾らせた、一人の男だった。
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