不名誉な人生、けれど挫けずに生きていく!

エイスト

文字の大きさ
2 / 3
第1章

毀誉褒貶=褒められたり貶されたり

しおりを挟む
「う~ん。ここは…森の中?」

 目を覚まして地面に横たわっている身体を起こす。辺りを見渡すと木々と草木が生い茂っていて、自分が森の中にいるのだと理解した。

「えっと、とりあえず異世界に転生できたってことでいいかな?」

 転生したということで自分の身体を確認する。転生した際に身体が若返っていたりイケメンになっているのは転生ものの定番である。
 鏡がないため顔の確認はできないものの、身長や手足は前世とさほど変化はなく、髪色も黒色と前世と同じだった。こうなると年齢も前世と同じ20代あたりと思われる。

「身体の確認はOK。次は女神様が言ってた特殊な能力チートスキルの確認だな。」

 この場合で自分の能力を確認するには転生ものの定番であるアレを口にするものである。けれど実際に口にするのは恥ずかしいため頭の中で思い浮かぶことにする。

“ステータス”

 そう頭に念じると目の前に長方形型の透明なパネルが出現した。まるでパソコンの画面みたいだ。
 そこには自分の名前にスキルなどのあらゆる情報が表記されていて、まるでゲームみたいである。早速これを『ステータスボード』と呼ぶことにする。
 そしてステータスボードに記載されていた情報内容は以下の通りである。

 
〈ステータス〉
名前:〇〇(←未命名)
性別:男
年齢:20代
職業:無職

スキル一覧
固有能力:毀誉褒貶・神之智嚢ゴッズブレイン
一般能力:自己能力表示ステータスオープン簡易鑑定シンプルアナライズ

称号一覧
器用貧乏ハンパモノ貧乏人スカンピン不幸体質アンラッキー童貞チェリーボーイ


「おぉ、まるでゲームのようだな。」

 スキルや職業、称号などとゲームに見られる単語がずらりと並んでいる。
   そしてその中で名前のところが無名の状態であることに気づく。これはおそらくこの世界での自分の名前がまだ無いというということだろう。
   自分の新しい名前をつけるのには時間をかけて決めたいため、ここは一旦保留することにする。

「そういえばこの世界は剣と魔法が存在してるってあの女神様が言ってたな。もしかして今の僕なら魔法が使えたりして。」

 そう言ってワクワクしながらステータスボードを再度確認したら、一瞬でそのワクワクは消え去ることとなる。

「ええと、…なんだこりゃ⁉︎」

 ステータスボードに表示されている称号欄を見ると、明らかに変な称号が記載されていることに気づいた。今ある称号は合計四つで、どれからも皮肉が籠っているのではと思うくらいひどいものである。

「…もしかして、これが原因なのか?」

 なぜこのようなことになってるのか原因を探ってると、それと思わしきスキルを発見した。
   原因であるそのスキルに指で突っつくとステータスボードの横にもう一枚別のボードが出現した。そこには原因であるスキルに関する情報が表示されていた。


固有能力ユニークスキル】◀︎世界に一つしかない、個人が持つ固有の特別な能力。複数の能力スキルで構成されている。
『毀誉褒貶』
・所有者は数多の称号を獲得し強大な力を得る。その代償に人々から蔑まれることとなる。
能力スキル
・称号習熟LvMax:称号の獲得に必要な条件が通常よりも緩和されるようになる。◀LvMAXはレベルが上限に達しているためこれ以上レベルが上がることはない。
・称号強化Lv-:称号獲得に伴い能力スキルを獲得できるところを、追加で一つスキルを得ることができる。
◀ Lv-はレベルが上がることはない。
・蔑称固定化Lv-:不名誉な称号のみを獲得することになる。◀このスキルは常時発動型能力パッシブスキルのためオンオフ不可。


「『蔑称固定化』、お前が原因か‼︎」

 このスキルによって不名誉な称号のみを獲得することになるようだ。しかもパッシブスキルのため、これから先も不名誉な称号を手に入れていくことになる。

「あの女神様の詠唱えいしょうといい、スキルの説明にも載っている通りならこれからの僕の人生鬼畜ハードモード確定じゃないか!」

 たとえどんなに努力をしようが功績を残そうが不名誉な称号ばかりしか手に入れられないため、周りからは嫌なやつだの最低なやつだのと誰からも賞賛されたり褒められる日は来ないことになる。

「…それって、僕はずっと一人ぼっちってことなのか?」

 自分がどんなに努力しようが強くなろうが、それを周りから認めてもらえず逆に非難されるのならば、それは本当に意味のあるものなのだろうか。
 誰からも認めてもらえず、周りから罵倒されて距離を置かれ、ひとりぼっちになって、本当にそれでいいのだろうか。

「…結局、前世と同じってことか。」

 前世でも信用と信頼ができる相手がいなくてずっと孤独だった。転生したこの世界でもそんな相手を作ることはできないのなら、自分の存在意味は無いのだろうか。

「……とりあえず、今持ってるスキルを全部確認しとくか。」

 暗い雰囲気のままずっと何もしないのは時間がもったいないと思い、今できることをやることにする。
 そうしてステータス画面との睨めっこを始めてから時間が経過して、自分の所持しているスキルや称号に関する情報を幾つか理解することができた。

「まずは同じユニークであるこのスキルからだな。」


固有能力ユニークスキル
神之智嚢ゴッズブレイン
・所有者は神より助言を授かれる。
能力スキル
神書受信ゴッズメールLv-:神様からのメールが届く。◀︎ステータスボードを通じてメールボックスみたいに届けられる。
追加情報表示ゴッズツイートLv1:表示された情報に神様からの呟きが追加される。※『◀』︎吹き出しのように表示される。
翻訳眼&翻訳耳ゴッズアイ&イヤーLv1:人族、亜人族の言語が分かるようになり、文字も読めるようになる。◀︎古代文字などや魔法文字はまだ読めず、モンスターや動植物の声もまだ分からない。レベルが上がると分かるかも。


「同じ固有能力ユニークスキルなのに、明らかにこっちが有能じゃね?」

 神様からメールが届く時点で普通に凄いスキルだと思えるもののこちらからメールを送ることはできないため、まるで神託である。あとは鑑定では得れない情報を手に入れられたり、他者とのコミュニケーションで有利になったりと、こちらも便利なスキルである。
   なにより、これといったデメリットが無いのが強みだと思われる。同じユニークなスキルなのにここまでの差があるのは格の違いが見て取れる。

「次は一般スキルだけど…。」


一般能力コモンスキル】◀一般的な能力スキル。基本誰もが獲得及び取得することが可能。量産型能力スキルとも言える。
自己能力表示ステータスオープンLv1:自身に関する情報が載っているステータスボードを出現させることができる。◀︎レベルが上がると見れる情報が増える。
簡易鑑定シンプルアナライズLv1:視認した物体や生物などに関する情報を見ることができる。◀︎簡易故に見れる情報量は少ない。レベルが上がれば見れる情報が増える。


「で、あとは称号なんだけど…」

 明らかに不名誉な称号のため素直に見たいとは思えず、見たところでまた気分が下がってしまうのがオチかもしれない。けれど今後のためにも知っておく必要があるため、一呼吸置いてから確認する。


【称号】◀︎特定の行動を起こすことで条件を満たし獲得できる。同時にスキルも獲得する。

器用貧乏ハンパモノ
・多才ではあるものの成就することはない。
能力スキル
・自動取得[戦闘技能] Lv.-:あらゆる戦闘系能力スキルを一つだけ取得できる。取得した能力スキルは初級のまま固定される。
・自動取得[補助技能] Lv.-:あらゆる補助系能力スキルを一つだけ取得できる。取得した能力スキルは初級のまま固定される。
・自動取得[生産技能] Lv.-:あらゆる生産系能力スキルを一つだけ取得できる。取得した能力スキルは初級のまま固定される。
・技能保管 Lv.Max:『自動取得』で手に入れた能力スキルを保管することが可能であり、新たに能力スキルを手に入れることが可能。発動できる能力スキルは一つだけ。◀︎ 能力スキルの同時発動は不可能。

不幸体質アンラッキー
・幸運が訪れにくくなるものの、舞い込む不運が感じ取りやすくなる。
能力スキル
・薄幸Lv1:自身の幸運が低下する。◀︎弓や投擲武器の攻撃が外れたり、厄介ごとに巻き込まれやすくなる。
・不吉の予兆Lv1:自身に降りかかる不運が事前に感じ取れるようになる。◀︎事前に危険を感じ取ることもできるものの、具体的に何が起こるかを知ることは不可能。

貧乏人スカンピン
・財産が少なく困窮な生活を送り、打たれ強くなる。
能力スキル
・高等貧民Lv1:貧しければ貧しいほど自身の能力値に補正効果が付く。◀︎裕福になった場合は補正効果は付かない。減少はしないためご心配なく。
・不屈の精神Lv1:体力または魔力の消費率が微量で減少する。◀︎精神力メンタルもちょっとだけ強くなるため恐怖に対する耐性もわずかに上がる。

童貞チェリーボーイ
・女性との肉体関係を持ったことはない20代が魔法使い(見習い)となる。◀︎尚、女性と肉体関係を持つことで称号は消失する。
能力スキル
・禁欲攻撃Lv1:性欲を発散せずに溜めておくことで強力な一撃を放つことができる。◀︎レベルが上がると威力が上がる。尚、攻撃を放った後には性欲が収まり賢者の如き聡明さが際立つようになるとか。
元素魔法プチマジックLv1:初級の魔法を生成する。【種火・放水・微風・土穴・照球・暗闇】◀︎攻撃系の魔法ではなく生活に役立つ魔法。ちまたでは『生活魔法』と呼ばれている。


「…称号の割にスキル強くない?」

 最初は不名誉な称号で落ち込んでいたけれど、セットで取得したスキルを確認したらどれも強いものばかりだった。
 特に器用貧乏は実質全てのスキルを手に入れられる可能性があるため、今後に期待できる称号だった。

「あとは近くに置いてあった袋なんだけど、これってかなりレアアイテムじゃないの?」

 先ほどまで横たわっていた場所の近くに置いてあった革製の巾着を発見し、試しに『簡易鑑定シンプルアナライズ』で確認してみた。

魔法袋マジックポーチ
[レア度:★★★]
* 『亜空間収納』の効果を持つ巾着。沢山のアイテムを収納できる。◀︎5×5×5メートルの亜空間内にアイテムを収納可能。中は時間の流れが緩やかでアイテムの劣化を遅らせれる。生き物は収納不可。

「やっぱりこれ、超レアアイテムじゃん⁉︎」

 袋の中身を確認してみたらボードが出現し、そこには何が入っているのかが表示されていた。食料や衣類、短剣ナイフに少しの貨幣など色々と入っていた。貨幣は初めて見るものでどうやらこの世界のもののようだ。
 そもそも魔法の袋は元いた世界でゲームやラノベに出てくる有名なものだった。物語に登場する主人公たちが所持していることが多くて、たくさんのアイテムを収納できるのは今後役に立つことだろう。

「けど…なんでレアアイテムがこんな序盤にあるんだ?」

 所持してるスキルといい称号といい、更に今所持してるレアアイテムといい、どれも序盤からすごく役立つものばかりで少し不安になってくる。最も『蔑称固定化』が無ければもっと良いのだが。
 そう疑問に思っているとピロンという音と共に小型のステータスボードが出現する。突然のことでビックリしたものの直ぐに冷静になり出現したステータスボードを見る。それは手紙のような記号が載っていて、おそらくは『神書受信ゴッズメール』で、神様からの手紙なのだろう。

「まさか本当に神様から手紙が届くなんて。」

 ステータスボードに指さすと瞬時に広がり、そこには文章が載っていた。

『拝啓 
 まずは転生に成功されたことに、心よりお祝い申し上げます。
 こちらのメールを確認しておられる頃にはご自身のステータスの確認と近くに置かれた魔法袋を発見されていることでしょう。中でも『神之智嚢ゴッズブレイン』に関しては大変驚かれていると思います。これらは私からの転生特典として貴方様へお送りしたものです。これは貴方様の世界でいうところのいわゆる『スタートダッシュ特典』というものです。
 せっかく第二の人生を贈られますので、モンスターに襲われて直ぐに亡くなられるのは誠に遺憾なのでサービスいたします。
 話を変えますが、貴方様が元いた世界から今おられる世界へ魔力を送ったことなのですが無事に成功しました。これでまた暫くは魔力の枯渇問題は大丈夫です。
 つきましては、貴方様がこれから先この世界で前世では送れなかった幸ある人生を送られることをお祈り申し上げます。
 どうぞ、この世界を存分に楽しんでください。   敬具
 神の一柱、もしくは世界を管理する一人の女神
 転生者様   』

 手紙を読み終え、なぜこれ程のサービスが行き届いているのかの疑問が瞬時に解消された。とりあえずは神様からのお恵みのお陰で、またお陀仏にならずに済みそうだ。

「ところであの女神様、まるで会社のできるOLって感じだな。」

 手紙が基本形式に則っていて、しっかりした女神様だと感心する。拝啓や敬具まで付けている辺り適当な仕事はしない性格なのかもしれない。
 けど異世界へ送り出した人を存外に扱わず丁寧なおもてなしをしてくれるため、堅苦しいながら人思いな女神様であることは間違いなさそうだ。

「でもこの世界で楽しむとして、具代的な目的がないんだよな。」

 手紙にも書かれてはいたもののこれからどこへ行くのか、何をすればいいのか、それらが今のところ思い浮かばない。元々は女神様から世界のために一時的に助けて欲しいということでこの世界にやって来たが、この世界に来て何をするのかを全く考えてなかった。

ガサガサ

 頭を悩ませていると近くの茂みから音が聞こえた。何かがいると思い咄嗟に近くに落ちていた木の棒を手に取り構える。一応は学生の頃に体育の授業で剣道や野球を体験したことがあるため棒類の持ち方や構えの基礎はなんとなく分かっている。

「正直、戦いになっても勝てる自信がないんだよな。喧嘩で殴り合いしたことないし。」

 子供の頃に悪ガキどもにボコボコにされたことがあって殴り返そうとしたことはあるものの、数の暴力で反撃もできなかった。それ以来、暴力による喧嘩は好きではない。
 そうこうしていると、茂みから丸い球体状の物体が飛び出してきた。

ポヨンポヨン

 それはファンタジー創作物でお馴染みのモンスター、ポヨポヨと体が弾む擬音が聞こえそうなボディのスライムだった。

「おお、これが本物のスライムか!」

 ゲームとかの創作物で見たことがあるものの、リアルで見るとどこか感慨深いものがあった。前世では理科の実験のスライム製作が大人気で、ゲームやラノベでもたくさん登場していた。そんな有名な存在が目の間にいて且つ自ら動く生物であるのを見て少しワクワクした。
 そうしているとスライムがこちら目掛けて弾んで突っ込んできた。体当たりによる攻撃のようだ。
 突然のスライムの行動に思わず身体を仰け反り尻餅をついたものの回避に成功する。

“と、とりあえずここは倒した方がいいか。”

 そう思って直ぐに手に持っていた木の棒でスライム目掛け思いっきり上段から叩きつける。
 攻撃が入ったもののその反動で木の棒が折れてしまったが、思い切り叩きつけられたスライムはその場でゲル状に変化した。
   しばらく様子見で待っていてもスライムは動かず、折れてしまった木の棒で突っついて確認してみても全く動くことない。どうにか倒すことができたようだ。

『自動取得により能力スキル『棒術(初級)』、『回避術(初級)』を取得しました。能力スキル取得に伴い『棒技Ⅰ』、『回避技Ⅰ』を取得しました。条件を満たしました。称号『無頓着スルーマン』を獲得しました。称号獲得に伴い能力スキル『気力強化』、『貫通攻撃』を取得しました。』

「うぉ⁉︎また頭に声が。これはまだ慣れないな。」

 スライムを倒したと認識した直後、頭に声が響く。一瞬だけ驚いたものの直ぐに冷静になりとりあえずステータスボードを確認してみる。
 ステータスボードを確認すると新しいスキルと称号が表示されている。先ほどの声があの女神様の声に似ているけどパソコンの自動音声のような無機質な感じで、木になるところではあるけど今は新しく手に入れたスキルの確認をしたい。
 まずは新しく手に入れた『棒術(初級)』と、それに伴い手に入れた『棒技Ⅰ』を検証してみる。まずはちょうど良い木の棒を探し、手に入れた木の棒で木に向かってスキルを発動してみる。

「えっと、こうかな。スキル『棒術(初級)』発動!」

 そう言ってしばらく待っても何も起こらず、不発かと思いながらも棒を木に突いてみる。すると“こうじゃない”という感覚がして何度も木に向けて棒で突いてみる。そうしていると段々ともっとこうした方がいいのではとか、今のは少しいいかなという感覚がしてきた。

『棒術(初級)』
・棒を装備時に適切な動きが理解しやすくなる。◀︎これは武術の習熟の補正効果が働いているということ。けれど初級だから習熟度は低い。

 次に『棒技』について検証してみる。『棒技』には『強打バッシュ』と『振り払いスイング』の二つで、まずは『強打バッシュ』から試してみる。

「いくぞ。『強打バッシュ』‼︎」

 木に向かって棒を叩こうとしたら腕に力が入りそのまま木に叩きつけたら、ズシンと木が揺れ動いた。どうやら通常の攻撃よりも強力な一撃を使えるようになったようだ。ゲームの大技みたいである。もう一つの『振り払いスイング』も同様だった。
 けれど発動後に一気に疲れが来るため強力な一撃を放つために体力を多く使うようだ。
 使い所を考えないと体力がゼロになって、疲れて動けなくなってしまうだろう。

『棒技Ⅰ』
・『棒術(初級)』を取得した際に同時に取得する武技バトルアーツ。◀︎ 武技バトルアーツ=戦闘系技術アーツ。発動には魔力ではなく、体力や気力を消費する。
武技バトルアーツ: 『強打バッシュ』・『振り払いスイング』 ◀︎この二つのアーツはノックバック効果付き。

「さて、あとは称号なんだけど。」

 スキル以外にも称号を手に入れたものの、あの声を聞いた時点でもう嫌な予感を感じ取っていた。


無頓着スルーマン
・何事にも興味、関心を持たず我が道を征く者なり。
能力スキル
・気力強化Lv1:自身の気力が強化される。◀︎要はやる気がたくさん出てくるってこと。
・貫通攻撃Lv1:相手の防御力(強化中含め)を無視する攻撃。◀︎謂わゆる『防御貫通』ということ。


「やっぱりこういう称号しか取れないらしいな。」

 手に入れた称号は『無頓着スルーマン』という、何事にも無関心な人間を表した称号である。けれど一つ疑問があり、なぜこのような称号を獲得するに至ったのか。
 無頓着とは無関心と意味が似ていて、服やお金などの物や人に興味がないという意味があったはずである。
 しばらく頭を悩ませていると、スライムとの戦闘で折ってしまった木の棒が目に映る。

「…もしかして、武器を壊したけど特に気にしてなかったから?」

 木の棒を武器にして戦って壊してしまったものの、その時は“まぁ木の棒だし折れても仕方ないか。”としか思えず、“悪いことをしたな”とか“ありがとう、我が戦友よ”などの悲しさや感謝などの感情は湧かなかった。
 それで称号を獲得するための条件が満たされて獲得するに至ったとすれば辻褄が合う。

「あとは称号を手に入れやすくなるってのもあるな。」

 『称号習熟』の効果で通常よりも条件が緩和されると表示されていたため簡単に手に入れやすくなっているようだ。

「こんな短時間でいろんなことが分かったけど、もしかしたら僕この世界で生きていけそうかな。」
 
 不名誉な称号のみしか手に入れられないというのを除けば、早く強くなれるというメリットは大きい。しかもたくさんのスキルを手に入れられるのも、あらゆる状況に応じて対応がしやすくもなる。

「それにいろんなスキルが手に入るってことは、もしかしたら隠蔽や偽装とかのスキルも手に入れることができるかもしれないな。それで不名誉な称号をカバーできるかも。」

 最近読んだ異世界もののラノベで、自身のステータスを相手に見られなくしたり細工したりするスキルの存在を知った。もしかしたらこの世界でもそういったスキルが存在しているのかもしれない。
 何より手に入れることができたら自分の不名誉な称号を人に見られなくすることができると思う。
 
「よし!当分はそういったスキルを手に入れるのを目指すとしよう。僕の第二の人生の安寧のために。」

 モンスターがいる世界に絶対安全な安寧の地なんてないのではと思い浮かんだが、そんなものは頭の隅に放り投げた。

「…でもそれは当分の目標なんだよな。それから先はどうしたらいいんだろ。」

 隠蔽や偽装に似たスキルを手に入れるのは目標ではあるものの、それらを手に入れたあとのことを考えていなかった。その目標を達成したあと自分は何を目標に生きていけばいいのか思いつかない。
 仮にこの世界で友人や恋人を作ろうとしても女神様から孤独な人生を送ることとなると予言(?)をされたため、本当に生涯一人ぼっちなのかもしれない。

「…そもそもこの世界はゲームみたいな世界なんだよな。スキルもあるし、それならどこへでもいけるんじゃないかな。」

 この世界についてまだ分からないことだらけではあるものの、元いた世界には絶対存在することがないものが存在しているかもしれない。
 例えば空に浮かぶ島だったり、はたまた海の底に存在する国だったり、ファンタジー作品でメジャーなモンスターであるドラゴンだったりと、まさにファンタジーの世界にしか存在しないものがたくさんあるかもしれない。
 そう思うとなんだかワクワクしてきた。

「決めた!第二の人生で僕は世界中を旅することにしよう。そしてたくさんの楽しい思い出を作るんだ!」

 たとえ周りから不名誉な称号でバカにされたり冷たくされたとしても、それでも明るく楽しい人生を送るために生きていく。
 折角第二の人生の生きていくのだから、クソだった前世の倍以上に幸福で満ちた人生を送ってやろう。

「よーし!そうと決まれば、まずはこの森から脱出して人里へ降りるとしよう。」

 そうして最初の目標である『森からの脱出を目指せ。』を達成すべく歩を進める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...