セフレが髪を赤く染めて、僕は少し泣いてしまったんだ 【R18】

乾しずく

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前編

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その日、ユキは髪を赤く染めてきた。


 J R新宿駅の改札を出て左、ベルク近くの柱の前で待ち合わせるのがいつもの僕らの約束だった。

 ユキは今日もそこで待っていた。スマホの画面を眺めながら、見覚えのある白い顔を少し俯かせて、だけど、はっきりといつもと違っていたのは、その髪の色だった。

「どうしたのそれ」

「久しぶりやん」ユキの目がにまーっと笑った。力なく、覇気もなく、よく言えば緩く力の抜けた、悪く言えばあまりバイタリティを感じない、そんな笑顔だった。それはたとえマスク越しでもいつもと変わらない。

 ただ赤い髪だけが激しく自己主張している。

「とりあえず飯でも食うか」

 ユキは頷いた。

「ラーメン食べたい」

 僕らは歌舞伎町の天下一品まで歩いた。

 ユキの実家は京都で、ユキが新宿でラーメン、と言ったらそれは天下一品のことだ。

「こってり」ユキが券売機のボタンを指さした。

 僕は「こってり」と「あっさり」の食券を2枚買う。

「どないしたん」

「胃が重い」

「あらあら」

 もう年なんだよ、と愚痴る。

 ラーメンをすすりながら、「で」と僕は尋ねた。

「どうしたのよ、その髪」

「染めた」

「見りゃわかるわ」僕は苦笑いした。「どういう心境の変化よ」

 ユキは「ネギうま」と言った後、こともなげに言った。

「仕事辞めた」

「そうなの」僕は少し驚いて言った。

「うん、色々あってな」

 僕はユキの勤め先をよく知らない。どこかの会社の事務、と言うことくらいしか知らない。


 そもそもユキの本名も知らない。


 僕とユキは月に1、2回、会ってセックスするだけの関係だった。

 元々は出会い系サイトで会った。

 最初の印象は小さくてショートカットの可愛い子、という感じだった。関西弁が柔らかくて、「ほんまですか?」とか「ちゃいますよう」という響きが愛らしくて、聞き惚れた。卵型のツルッとした顔に一重の目、まつ毛が長くて人形のようだった。笑う時もふふ、と小さく笑う。とても出会い系で相手を探すような感じではなかった。

 耳に大きなピアスをしていて、全体的に地味な雰囲気からそこだけが浮いていた。

 お酒を一緒に飲みに行って、いろいろな話をした。音楽や映画の話をしたけれど、僕が見に行っているような映画もよく見に行っていた。本の話ではすごく盛り上がって、「あの本がいい」とかおすすめの作家の話をした。

 話が盛り上がっていつの間にか時間が経ち、そろそろ二軒目か帰るか、という雰囲気になった時、実は、と彼女は言った。

「私、あのサイトはパパ活用なんです」

 そう言った後、彼女はぶっちゃけ一回いくらで援交のようなことをしている、と言った。

「そうなの?」

「引きます?」

「いいや」僕は言った。

 彼女はいつも貰っているのは食事ならいくらで、ホテルならいくらで、という話をした。ちょっとした風俗くらいの値段だった。人形のような彼女の佇まいからは想像できないような話だった。

 いや、一周回って想像通りだった、と言うこともできた。

 少し身構えた僕に、お兄さんなら食事は無料でええですよ、と言った後、にっこり笑って彼女は言った。

「どうします?」

 僕は黙って財布を取り出し、ホテルの値段を渡した。


 ホテルに入った後、僕はユキの服を脱がした。

 アルコールの匂いをさせながらユキは僕にキスをした。

 ユキの体はよく締まっていて、それでいて尻や胸はちゃんと柔らかくて、体の割に大きな胸は弾力があって手の中で弾んだ。

 乳首を弄びながら下に手を這わすと、毛の感触がなく、つるっとした下腹部が剥き出しになった。

 体を横たえて顔を近づけると、剥き出しの割れ目はもう光っていた。芽のように飛び出している部分を舌でねぶりながら、充分に濡れるまで舌で舐め続ける。あかん、あかん…気持ちいい…と関西訛りで悶えながら、懇願するように「指でもして?」と言われて、完全に理性が飛んだ。

 指を出し入れしてざらついた天井に達すると、ユキは僕にしがみつき、あっけなく逝った。大量の体液が溢れて手首をつたった。そしてユキは横たわり、僕のものを受け入れた。何度も跳ねるユキの体を僕は貫いた。後ろから押さえつけて犯すと、喜びの声をあげながら雪はあっけなく逝った。

「シーツ冷たい」

「盛大に吹くから」

「そういうこと言わへんの」

 二人でぐちゃぐちゃのベッドに横たわってくすくす笑った。

「めちゃくちゃ良かった」ユキは言った。

「また会ってもらってええですか?」

 もちろん、と僕は答えた。


 それから月に一度か二度、会うようになった。

 デートの代金を僕が全部持つ以外に、ユキは対価を求めなくなった。

 色々な話をした。

 ユキは学生まで京都にいて、就職でこちらに出てきた。彼氏と一緒に暮らしていたが今は一人暮らしだ。僕とはちょうど一回り歳が離れていて、今年26になる。もっと若いと思っていたので驚いた。

 フェラが苦手で、あまりしたがらない(「口に出されたことがあるから」)。手でするのは好き。道具を使われるのも好き。ちゃんと逝くときはいく、と言うのが好き。ゴムをしているのに、なかにだして、と言うのでどきっとする。終わった後ゴムの中身を見るのが好き。僕がうっかり暴発すると口を尖らせてもう一回できるよね、と聞く。舐められるのが好き。指はもっと好き。

 ユキの体のことはよくわかる。


 でも、ユキのことは案外知らない。


 ラーメン屋を出て歌舞伎町の裏通りをホテル街に向かって歩いた。いつもの少しだけ高い、内装の綺麗なホテルに入る。ラーメンを食べたので歯を磨き、風呂の湯がたまるまでテレビをつけて少しだけくつろいだ。

 ユキはせっかく歯を磨いたのにコンビニで買ってきた缶チューハイを開けて飲み始めた。甘いやつだ。

「はい」缶を回して一口くれる。

「似合ってるよ」

「ん?」

「その髪」

 ユキは意外そうな顔をしたが、すぐに嬉しそうに微笑んで「ありがと」と言った。

「しかし思い切ったよなあ」

「人生で一度はやってみたかった」

 ユキは髪を触った。「男受けはあんまししなさそうやないですか?」

「俺は好きよ」僕は言った。

 赤い髪が揺れた。

「アニメみたいですよね」

「確かに」

「魔法少女みたい」

「かもね」僕は言った。「どんな魔法が使えるのよ」

「お風呂の湯を沸かす魔法」

「安いな」

「もうお風呂溜まったかも」

 僕は風呂の様子を見に行った。

「本当だ」

「このホテル、水の出だけはいいですよね」

「そこはいいよね」

 僕は部屋の電気を消して、テレビの音を消した。

 テレビの明かりだけで照らされた部屋で、ユキはゆっくりと服を脱ぐ。

 もうこうなると余計な会話は消えて、僕らはただやるだけの人になる。

 赤い髪はユキの裸によく似合う。

 ユキの綺麗な色白の背中の上で、目の醒めるような赤い髪が揺れている。

 思わず後ろから抱きしめる。

「ちょっと」

 お風呂に入ってから、と言いかけたユキの口を塞ぎ、乳房を揉む。そのままベッドに倒し、体にむしゃぶりつく。

「やだ、汚い…からっ」

 風呂に入る前のユキの体は少しだけ汗の匂いがする。

 舌でいつものように全身を舐める。首筋、胸、乳首、乳輪、乳房の周り、舌で確認するように、掘り返すように探し続ける。

 何を探しているのかは、自分でもわからない。

 ユキが悶え、気持ちいい、と声を漏らすたびに、救われたような気持ちになる。なぜだろう。

「もう…」絶え絶えの声を出しながらユキが抗議した。

「やめる?」指で下腹部を優しくなぜる。

「やめんといて…」

 もう濡れてる。

 めちゃくちゃに濡れた部分に、指を潜りこませた。

 ユキの好きな部分ならよく知っている。

 そこに、傷つけないようにゆっくりと指を当てて、馴染むのを待ってから動かす。

 クリトリスを親指で撫でながら、人差し指で刺激する。

「あ…ああっ…だめ…あかん…あかんのっ!」

 馴染んできた頃に、中指も入れてかき回すと、ユキは腕にしがみついてあっけなく逝った。

 いつもより濃い匂いのする、少し苦味のある液が剥き出しの正規から垂れている。

「後ろ向いて」

 四つん這いにすると、手早くゴムをつけて、後ろから突き刺した。

 本当に、痩せてるのに豊かな尻が、びくん、と跳ねた。

「ああっ」

 尻を両手で掴むと、少し乱暴に打ちつけた。

 赤い髪が揺れて悶える。

 何度も何度も、ぬめる体の芯を突き刺した。

 ゴム越しにも強く締め付けてくるユキの動きが伝わる。

「いい…いい…いく…いく…」

 繰り返すユキの赤い髪を押さえてこちらを向かせ、唇を奪う。

 ユキはすぐ舌を絡めて吸うが、激しく後ろから突いているので唇はすぐ離れてしまう。

 ユキがびくっ、と体を震わせるのと同時に僕も果てた。

「もう…ずるい…」

 ごめんごめん、と謝る。

 ユキが荒い呼吸を吐きながらベッドに突っ伏した。

「よすぎた…今の…」

「不意打ちもたまにはいいでしょ」

 ユキが枕を投げてきた。

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