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後編
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風呂が溢れていた。
「もう…せめて止めてからしよや…」とため息をつきながら、ユキはカランを止めてシャワーのスイッチを入れる。
あとは泡でお互いの体を洗う。
ユキは僕の胸毛を泡立てて遊んでいる。
僕はユキの背中を泡で擦りながら、指で尻を撫でる。
弾力のある感触を楽しんでいると、ユキがくすくす笑った。
「変態」
「悪かったな変態で」
ユキは軽く僕の唇にキスをすると、シャワーで僕の体の泡を流した。
そのまま跪く。
「え?何してんの」
風呂の床に膝立ちになったユキは、僕のものを間近で見つめた。
「してもいいですか」
「いいけど…嫌じゃないの」
小さく首を振ると、恐る恐る口の中に僕のものを頬張った。
さっき放出したばかりで、力なく下を向いている。それをそっと手で包むと何度も優しく舌でぺろぺろと舐める。
「気持ちいい?」
うなずく。赤い髪が小刻みに揺れて、リズミカルに口が茎に刺激を与える。
ユキは時折口を離し、舌でカリの部分を刺激しながら、唾でいっぱいの口の中に含む。
「ん…くっ…ちゅ…ん…」
こんなに一生懸命に口でされたことがないし、ましてユキは今までフェラが好きではないと言っていたからこれまで積極的にしてほしいと言ったこともない。だから、ユキのこんな姿を見るのは初めてだし、なにより興奮した。
赤い髪をしたユキは別人のように淫美で、いやらしく、ショートカットのうなじを見下ろしているとすぐに放出してしまいそうになる。
「待ってユキ、だめだよ」
ユキの頭を止めて立ち上がらせる。
「ん?」と首を傾げるユキの口元が唾で濡れている。その唇にむしゃぶりついた。
激しめのキスになった。少しだらしなく開いた口の中に舌をねじ込み、出てきたユキの舌を吸った。
「ん…」ユキが子供のように言った。「おふろ」
少し温くなった浴槽に二人で身を沈めると、溜めすぎた湯が溢れて、いろいろなものが流されていく。「あーあ」とユキがもったいなさそうに言う。
肩まで身を沈めると、狭い浴槽で後ろから抱き抱えるような形になる。ユキを後ろから抱きながら少し風呂で暖まった。
目の前に赤い髪がある。シャンプーの匂いもいつもより心なしか甘く感じる。
「珍しいよね」
「何が?」
「さっき口でしてくれたじゃん」
「ああ」ユキの表情は見えない。「なんとなく、やね」
「危なく口に出しちゃいそうだったよ」
「それは危ない」ユキの笑い声が浴室に響く。
「本当、上手だった」僕は素直に認めた。「こんなに上手なんだって思った」
「そう?素直に嬉しいなそれ」
ユキは振り向く。
「でも口に出すのはあかんで」
体ごと振り向いて、僕に体を預ける。
重みが心地良い。
耳元でユキは囁いた。
「ちゃんとなかに出して」
テレビの明かりだけが部屋を照らしている。
音の出ないテレビをユキはぼんやりと眺めている。気だるそうで、いつものユキだ。
後ろから脇腹をつつく。
「や、くすぐったい」
つつくのをやめないと、もう、と言って布団の中に潜りこんだ。
布団から赤い髪と目だけ出してこちらを睨んでいるが、目は笑っている。
僕も布団に潜る。
ユキの裸の体をまさぐる。ユキはふざけて手を振り払う。構わず胸や尻を触る。ユキはきゃあきゃあ言いながら避けるけれど、そのうち捕まって「はぁ…」とため息をつく。
ユキにキスをする。ユキがキスを返す。小鳥のようなキスがそのうちお互いを貪るようなそれに変わり、そのまままた唇と舌でユキの体を愛撫する。ユキの声が僕の動きに応える。ユキのからだの太い血管の流れるところ、首を、脇腹を、太腿を撫で、その度に体がびくびくと跳ねるのを楽しむ。
「舐めて…」
ユキが足を広げる。
ユキの内腿を舌で汚すように舐める。そのたび体をくねらせる。だが、求めている場所はそこではないのだ。
「もう…そこちゃうの…」
「どこ?」
「おまんこ…」
よく言えました、と舌を割れ目に当てて、べろ、と舐める。
「やっ」
短い喘ぎが漏れる。
グチュグチュ、と下品な音をたてて蜜を吸うと、ユキの香りが口の中一杯に広がる。ユキの匂いは少し甘くて、クリトリスを責めていくとこれが少ししょっぱい苦潮の匂いに変化する。
口の中でユキのクリトリスをしゃぶる。硬くなったそこは軟体動物の目のようにこりこりとした感触で、やがて感極まったようにユキはびくびくと腰を浮かせて果てた。
そのまま舐め続けると、「あかんて…もういったもん…」と言って腰を逃す。だけどそれで許す気になれなくて、構わず腰を引き寄せて舐め続ける。「あかん…て…!」と逃げるのを構わず、指を差し入れて動かす。滑らかな粘液の中を指がピストンする。それが激しさを増すと、またユキが吹いた。
ユキのからだの中から溢れる苦い潮がシーツを汚す。
ユキが小さく叫ぶ。
「もうあかん…ねえ…あかんからっ」
ユキの指が宙を彷徨って、そのまま股間に伸びた。僕のものは激しく興奮して大きくなっている。それを掴むと、ユキは状態を起こして僕のものむしゃぶりついた。
「ちょっ」
ユキは僕のものを咥えると、激しく赤毛を上下に動かした。唇が暴力的に僕の亀頭とカリと竿を行ったり来たりして、僕は思わずユキの体から指を離した。
ユキは僕のものを喉奥まで咥えると、えづきながら口を動かし続けている。
何かの罰を自分で与えようとしているみたいに見えて、僕は思わずユキの肩を掴んだ。
「こほっ…くっ」
ユキが咳き込みながら顔を上げた。
涎まみれのその顔を舐めるようにキスして、押し倒す。
ベッドサイドのコンドームのケースに手を伸ばし、コンドームの袋を口で破る。
「入れて…」ユキがねだった。
コンドームをつけたそれを、ユキの体に一気に突き通す。
「あああっ!」
ユキが今まで聞いたことのないような大きな声で喘いだ。
目尻から涙がこぼれている。
「痛いの?」
「ううん…」ユキが首を振った。「気持ちいい…」
僕はゆっくりと腰を動かす。
「めちゃくちゃして」ユキがねだった。「もっとうごいて…めちゃくちゃして」
腰の動きが速くなる。
ユキの体は小さいから、僕のものでもちゃんと奥に当たる。
ユキの子宮の奥に僕のが当たるのが、ゴム越しでもちゃんとわかった。
激しい動きに呼応するようにユキが揺れ、悶え、蠢く。
ユキの中がビクビクっとなり、締まり、逝ったことを伝えてくる。
ぐしょぐしょになったそれを一旦抜くと、僕はユキの横に横たわった。
荒い息をしているユキの体を横後ろからもう一度貫く。
「あ、また…また…」
横背位から優しく貫くと、鼻の奥を鳴らすような声でユキは鳴く。さっきよりも甘く優しい感じの交わりに、一瞬暴発しそうだったのも少し落ち着いて、今度は肉壁を抉るようなゆっくりとした動きを楽しんでいる。
腰を尻に押し当てるようにしてゆっくり貫くたび、甘い息が漏れる。
「ねえ…」振り返ってまた舌を絡めると、ユキがねだった。「またさっきみたいにいっぱい突いて」
「俺逝っちゃうけどいい?」
「ええよ…いっぱい出して?」
僕はユキを抱えて立たせると、ホテルの壁に両手をつかせた。
「え、やだ、立ってするの?…んんっ」
有無を言わせず後ろから貫く。
立ったままなのでバランスは悪いが、小柄なユキを抱え込むようにすると、身長差でより深く刺さる。
「ちょっと…これ…いい…」
後ろから抱えるようにし、ばつんばつんと打ちつける。ユキの小ぶりだが弾力のある尻肉に当たる感覚が心地よくて、何度もつんのめりそうになりながら、激しく打ちつけた。
「やだ、やだ、やだあ!いく、いく、い」
崩れ落ちそうになるのを後ろから両腕を引き、さらに突き立てる。
「ああ、だめ、だめ」
ユキは振り返って言った。「顔見て逝きたい」
僕は抜くとユキをベッドに押し倒し、足をひろげ無言で貫いた。
そろそろ僕も限界だ。
「もう…だめかも」
「ええよ…」僕の首を掴み、足を絡めてユキが言った。
「なかに、出し…て」
その声と同時に僕はユキの中で果てた。
慌てて携帯を見た。
少し眠っていたみたいだ。
「やばい、寝てた…サービスタイム終わる」
ユキの裸の背を叩く。
「起きよう」
ユキは赤い髪を揺らして起き上がった。
「急がないと」
うん、と頷くユキを浴室に追い立てる。激しすぎて少し足にきている。
「今日ちょっとすごかった」僕が揶揄うと、ユキは静かに、
「そう?」と言ってにまーっと笑った。
二人で洗い合うこともなく適度に始末すると、そそくさと服を着る。余韻も何もない幕切れだ。
「ねえ」僕は化粧を直しているユキに聞いた。
「仕事…どうするの」
ユキは振り向いて、困ったように「どうしようねえ」と言った後、
「しばらくは失業保険あるから大丈夫」と微笑んだ。
「そうか」僕は下を向いた。「その、困ったことがあったら、いつでも言ってよ」
ユキは振り向いた。
少し驚いたような顔をして、口を開きかけて、閉じた。
「ありがとう」
いつもの捉え所のない笑顔でユキは言った。
「気持ちだけ、もらっとく」
その顔を見て、唐突に、改めて、
ユキは綺麗だ、と思った。
「飲んでいこう」という誘いを、「ラーメン残っちゃってるから、いいよ」と断ったユキと、新宿駅まで一緒に歩いた。
台風が去った後で風がなんだか生ぬるい。
夏が終わっちゃうね、とユキは言って、JR新宿駅の入り口で振り返った。
「じゃあ、ここで」
「うん、本当に飯、いいの?」
「うちにあるし。じゃあね」
ユキは手を振った。
「バイバイ」
それがユキを見た最後だった。
気がついたのは1週間後だった。
LINEも既読にならず、サイトからもユキは消えていた。
通話も繋がらず、ブロックされているのだとわかった。
ユキが髪を染めてきた理由を今でも考えることがある。
あの時、もっと親身になっていたら。
俺たち付き合おう、と言っていたら。
セックスで始まって、名前も知らないから、ユキが本当はユキだったのかさえ、僕にはわからない。
そういえば、ユキは、
僕を名前で一度も呼ばなかった。
そのことに気がついた時、僕は少し泣いたんだった。
「もう…せめて止めてからしよや…」とため息をつきながら、ユキはカランを止めてシャワーのスイッチを入れる。
あとは泡でお互いの体を洗う。
ユキは僕の胸毛を泡立てて遊んでいる。
僕はユキの背中を泡で擦りながら、指で尻を撫でる。
弾力のある感触を楽しんでいると、ユキがくすくす笑った。
「変態」
「悪かったな変態で」
ユキは軽く僕の唇にキスをすると、シャワーで僕の体の泡を流した。
そのまま跪く。
「え?何してんの」
風呂の床に膝立ちになったユキは、僕のものを間近で見つめた。
「してもいいですか」
「いいけど…嫌じゃないの」
小さく首を振ると、恐る恐る口の中に僕のものを頬張った。
さっき放出したばかりで、力なく下を向いている。それをそっと手で包むと何度も優しく舌でぺろぺろと舐める。
「気持ちいい?」
うなずく。赤い髪が小刻みに揺れて、リズミカルに口が茎に刺激を与える。
ユキは時折口を離し、舌でカリの部分を刺激しながら、唾でいっぱいの口の中に含む。
「ん…くっ…ちゅ…ん…」
こんなに一生懸命に口でされたことがないし、ましてユキは今までフェラが好きではないと言っていたからこれまで積極的にしてほしいと言ったこともない。だから、ユキのこんな姿を見るのは初めてだし、なにより興奮した。
赤い髪をしたユキは別人のように淫美で、いやらしく、ショートカットのうなじを見下ろしているとすぐに放出してしまいそうになる。
「待ってユキ、だめだよ」
ユキの頭を止めて立ち上がらせる。
「ん?」と首を傾げるユキの口元が唾で濡れている。その唇にむしゃぶりついた。
激しめのキスになった。少しだらしなく開いた口の中に舌をねじ込み、出てきたユキの舌を吸った。
「ん…」ユキが子供のように言った。「おふろ」
少し温くなった浴槽に二人で身を沈めると、溜めすぎた湯が溢れて、いろいろなものが流されていく。「あーあ」とユキがもったいなさそうに言う。
肩まで身を沈めると、狭い浴槽で後ろから抱き抱えるような形になる。ユキを後ろから抱きながら少し風呂で暖まった。
目の前に赤い髪がある。シャンプーの匂いもいつもより心なしか甘く感じる。
「珍しいよね」
「何が?」
「さっき口でしてくれたじゃん」
「ああ」ユキの表情は見えない。「なんとなく、やね」
「危なく口に出しちゃいそうだったよ」
「それは危ない」ユキの笑い声が浴室に響く。
「本当、上手だった」僕は素直に認めた。「こんなに上手なんだって思った」
「そう?素直に嬉しいなそれ」
ユキは振り向く。
「でも口に出すのはあかんで」
体ごと振り向いて、僕に体を預ける。
重みが心地良い。
耳元でユキは囁いた。
「ちゃんとなかに出して」
テレビの明かりだけが部屋を照らしている。
音の出ないテレビをユキはぼんやりと眺めている。気だるそうで、いつものユキだ。
後ろから脇腹をつつく。
「や、くすぐったい」
つつくのをやめないと、もう、と言って布団の中に潜りこんだ。
布団から赤い髪と目だけ出してこちらを睨んでいるが、目は笑っている。
僕も布団に潜る。
ユキの裸の体をまさぐる。ユキはふざけて手を振り払う。構わず胸や尻を触る。ユキはきゃあきゃあ言いながら避けるけれど、そのうち捕まって「はぁ…」とため息をつく。
ユキにキスをする。ユキがキスを返す。小鳥のようなキスがそのうちお互いを貪るようなそれに変わり、そのまままた唇と舌でユキの体を愛撫する。ユキの声が僕の動きに応える。ユキのからだの太い血管の流れるところ、首を、脇腹を、太腿を撫で、その度に体がびくびくと跳ねるのを楽しむ。
「舐めて…」
ユキが足を広げる。
ユキの内腿を舌で汚すように舐める。そのたび体をくねらせる。だが、求めている場所はそこではないのだ。
「もう…そこちゃうの…」
「どこ?」
「おまんこ…」
よく言えました、と舌を割れ目に当てて、べろ、と舐める。
「やっ」
短い喘ぎが漏れる。
グチュグチュ、と下品な音をたてて蜜を吸うと、ユキの香りが口の中一杯に広がる。ユキの匂いは少し甘くて、クリトリスを責めていくとこれが少ししょっぱい苦潮の匂いに変化する。
口の中でユキのクリトリスをしゃぶる。硬くなったそこは軟体動物の目のようにこりこりとした感触で、やがて感極まったようにユキはびくびくと腰を浮かせて果てた。
そのまま舐め続けると、「あかんて…もういったもん…」と言って腰を逃す。だけどそれで許す気になれなくて、構わず腰を引き寄せて舐め続ける。「あかん…て…!」と逃げるのを構わず、指を差し入れて動かす。滑らかな粘液の中を指がピストンする。それが激しさを増すと、またユキが吹いた。
ユキのからだの中から溢れる苦い潮がシーツを汚す。
ユキが小さく叫ぶ。
「もうあかん…ねえ…あかんからっ」
ユキの指が宙を彷徨って、そのまま股間に伸びた。僕のものは激しく興奮して大きくなっている。それを掴むと、ユキは状態を起こして僕のものむしゃぶりついた。
「ちょっ」
ユキは僕のものを咥えると、激しく赤毛を上下に動かした。唇が暴力的に僕の亀頭とカリと竿を行ったり来たりして、僕は思わずユキの体から指を離した。
ユキは僕のものを喉奥まで咥えると、えづきながら口を動かし続けている。
何かの罰を自分で与えようとしているみたいに見えて、僕は思わずユキの肩を掴んだ。
「こほっ…くっ」
ユキが咳き込みながら顔を上げた。
涎まみれのその顔を舐めるようにキスして、押し倒す。
ベッドサイドのコンドームのケースに手を伸ばし、コンドームの袋を口で破る。
「入れて…」ユキがねだった。
コンドームをつけたそれを、ユキの体に一気に突き通す。
「あああっ!」
ユキが今まで聞いたことのないような大きな声で喘いだ。
目尻から涙がこぼれている。
「痛いの?」
「ううん…」ユキが首を振った。「気持ちいい…」
僕はゆっくりと腰を動かす。
「めちゃくちゃして」ユキがねだった。「もっとうごいて…めちゃくちゃして」
腰の動きが速くなる。
ユキの体は小さいから、僕のものでもちゃんと奥に当たる。
ユキの子宮の奥に僕のが当たるのが、ゴム越しでもちゃんとわかった。
激しい動きに呼応するようにユキが揺れ、悶え、蠢く。
ユキの中がビクビクっとなり、締まり、逝ったことを伝えてくる。
ぐしょぐしょになったそれを一旦抜くと、僕はユキの横に横たわった。
荒い息をしているユキの体を横後ろからもう一度貫く。
「あ、また…また…」
横背位から優しく貫くと、鼻の奥を鳴らすような声でユキは鳴く。さっきよりも甘く優しい感じの交わりに、一瞬暴発しそうだったのも少し落ち着いて、今度は肉壁を抉るようなゆっくりとした動きを楽しんでいる。
腰を尻に押し当てるようにしてゆっくり貫くたび、甘い息が漏れる。
「ねえ…」振り返ってまた舌を絡めると、ユキがねだった。「またさっきみたいにいっぱい突いて」
「俺逝っちゃうけどいい?」
「ええよ…いっぱい出して?」
僕はユキを抱えて立たせると、ホテルの壁に両手をつかせた。
「え、やだ、立ってするの?…んんっ」
有無を言わせず後ろから貫く。
立ったままなのでバランスは悪いが、小柄なユキを抱え込むようにすると、身長差でより深く刺さる。
「ちょっと…これ…いい…」
後ろから抱えるようにし、ばつんばつんと打ちつける。ユキの小ぶりだが弾力のある尻肉に当たる感覚が心地よくて、何度もつんのめりそうになりながら、激しく打ちつけた。
「やだ、やだ、やだあ!いく、いく、い」
崩れ落ちそうになるのを後ろから両腕を引き、さらに突き立てる。
「ああ、だめ、だめ」
ユキは振り返って言った。「顔見て逝きたい」
僕は抜くとユキをベッドに押し倒し、足をひろげ無言で貫いた。
そろそろ僕も限界だ。
「もう…だめかも」
「ええよ…」僕の首を掴み、足を絡めてユキが言った。
「なかに、出し…て」
その声と同時に僕はユキの中で果てた。
慌てて携帯を見た。
少し眠っていたみたいだ。
「やばい、寝てた…サービスタイム終わる」
ユキの裸の背を叩く。
「起きよう」
ユキは赤い髪を揺らして起き上がった。
「急がないと」
うん、と頷くユキを浴室に追い立てる。激しすぎて少し足にきている。
「今日ちょっとすごかった」僕が揶揄うと、ユキは静かに、
「そう?」と言ってにまーっと笑った。
二人で洗い合うこともなく適度に始末すると、そそくさと服を着る。余韻も何もない幕切れだ。
「ねえ」僕は化粧を直しているユキに聞いた。
「仕事…どうするの」
ユキは振り向いて、困ったように「どうしようねえ」と言った後、
「しばらくは失業保険あるから大丈夫」と微笑んだ。
「そうか」僕は下を向いた。「その、困ったことがあったら、いつでも言ってよ」
ユキは振り向いた。
少し驚いたような顔をして、口を開きかけて、閉じた。
「ありがとう」
いつもの捉え所のない笑顔でユキは言った。
「気持ちだけ、もらっとく」
その顔を見て、唐突に、改めて、
ユキは綺麗だ、と思った。
「飲んでいこう」という誘いを、「ラーメン残っちゃってるから、いいよ」と断ったユキと、新宿駅まで一緒に歩いた。
台風が去った後で風がなんだか生ぬるい。
夏が終わっちゃうね、とユキは言って、JR新宿駅の入り口で振り返った。
「じゃあ、ここで」
「うん、本当に飯、いいの?」
「うちにあるし。じゃあね」
ユキは手を振った。
「バイバイ」
それがユキを見た最後だった。
気がついたのは1週間後だった。
LINEも既読にならず、サイトからもユキは消えていた。
通話も繋がらず、ブロックされているのだとわかった。
ユキが髪を染めてきた理由を今でも考えることがある。
あの時、もっと親身になっていたら。
俺たち付き合おう、と言っていたら。
セックスで始まって、名前も知らないから、ユキが本当はユキだったのかさえ、僕にはわからない。
そういえば、ユキは、
僕を名前で一度も呼ばなかった。
そのことに気がついた時、僕は少し泣いたんだった。
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