ワガママ公爵娘の暴走記

籠志摩琢朗

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 私の名前は鈴木千佳。
 文化人類学を中心に学んでいる大学生だ。
 一見聞くと頭が良さそうに聞こえるが、実際受験には死ぬほど頑張った自負がある。

 と、まぁ⋯⋯今こうして私は図書館で大学仲間と共に共同で発表する為の資料集めに来ていたんだけど、全然みんな帰ってこない。

「千佳~!」
「南ちゃん、どこ行ってたの?」
「んー? ちょっと色々あってさー」

 色々あったら勝手にサボっていいって思ってる?
 
「それでさー、ちょっとみんなごはん食べたいって言ってるから、少し一人で資料集めお願いしてもいい?」
「あ、うん!」
「ありがとー!千佳やっぱり優しいね」

 そう言って数人の男女らはご飯を食べに向かった。 
 
「あはは⋯⋯」

 楽しそうな男女を見送る私は、内心ボロボロだった。
 いつもそうだ。
 
 ⋯⋯私は頼みをあまり断れないタイプだ。
 だからこうしていつも損な役回りをしているんだけど。

 返ってくる言葉は優しいしかない。
 さすがにこっちも気付くよ。

 世の中のほとんどは頼む側と頼まれる側に分かれている。
 
 弱肉強食と同じだ。
 食うか食われるか。
  
 "捕食者と被捕食者"

 男には金を貸せと言われて、仕方なく貸さなきゃならないし、親にも頼み事をされてしまうと受けてしまう。

 人生って辛いな。
 
「あ⋯⋯」

 飲み物が切れそうだ。
 バックの中にある財布を取り出して、小銭を確認する。

「そうだ。蓮にお金貸したんだった⋯⋯」

 これじゃ夜ご飯も買うお金がないよ。
 そのまま私は夕方まで資料集めを進める。

「ごめん、彼氏から呼び出されたから帰るね」
「うん! ありがとね!」

 私はそのまま呼び出された場所まで向かう。
 集合場所は駅前。
 私は彼を驚かそうとゆっくり隠れながら向かったのだが、彼は電話をしていた。

「え?千佳?アイツ、言うこと聞いてくれるいい女だよ」

 近くで聞いていた私は、ガラスが割れたように胸が痛くなった。

「え? 必要な時に呼び出せば来てくれるし、まじ都合よくて助かってんだよね」

 その後も続く笑い声と私を出汁にして続く会話。
 
「それでさーっ──ごめん後でかけるわ!」
「⋯⋯⋯⋯」

 なんで? 言う事聞いてたじゃん。
 何がいけないの?
 好きだって言ってくれたじゃん。

「ご、ごめん!! たまたま彼女持ち同士で話合わせないと行けなくってさ! なっ?」

 私はただの都合のいい女ですか。
 喜んでくれるのかなって思って、貴方の好きな服装をしてみたり、髪も明るい茶色にした。

「ごめんって! 良いもん食べようぜ!」

 私は別に嬉しくはないけど、貴方が言うから身体も重ねた。

「なっ? 酒でも飲もう!」

 もう⋯⋯限界だ。

「ごめん、今日は帰るね」
「な、なんだよ! いつもはすぐ笑ってくれるじゃん!」

 うるさい。もう限界なの⋯⋯この生活も。

「これ以上何も言わないで」
「はぁ?」

 好きだったのに。
 でも、たった一瞬で──こんなに不快感を覚えるなんて。
 
 大好きだった記憶が消えていく。
 一緒にご飯を食べた事も、イルミネーションに行った記憶も。

「おい!待てって!!」
「離してよ!!!」

 交差点まで追いかけてきて彼の手を振り払う。
 だが、彼の言うことは間違ってはいなかった。

 私は赤信号の中、中間地点まで走ってしまっていたのだ。

 目の前には、乗用車が迫り、キィィィという音が私が聞いた最後の音だった。
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