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妖精の森
しおりを挟む朝食を終えるとトーリは皮袋とカゴを手にし、森の奥へと入った。道なりに少し進むと突き当たりに左右への分かれ道がある。精霊王がいる妖精の森へと続いているのだが、右を選んでも左を選んでも妖精の森へ行くことは出来ない。だからゲームでは薬師のヒントが必要となるのだ。
「いつも森の恵みをありがとうございます」
分かれ道の脇にある、一見石を積み上げただけに見える石碑。そこに妖精が好むレッドベリーを添え手を合わせながら感謝を伝える。あとは右でも左でも好きな方に進むだけ。これで妖精の森へと入ることが出来るようになる。
どこか不思議な雰囲気の森。風もなく穏やかなのに囁くように葉が揺れ、賑やかさを感じる。いつもの森とは違い空気も澄んでいて、トーリはこの森が大好きだった。
勇者であれば入った妖精の森を進み、大樹の根元にある泉にシロクサの夜露を捧げることで精霊王に会うことができるのだが、トーリは勇者ではない。精霊王に会う必要はないのだ。必要なのこの妖精の森にある水。
泉の少し手前に倒れた大木があるのだが、その幹の中に何故か湧き出ている水がある。その水を使った薬は効能が高く、街に持っていき納品すれば高値で買い取ってくれるため、入手できるのならしたい材料だ。
「お、あったあった」
いつ枯れるかわからないが、汲みすぎて妖精の怒りを買えば何をされるかわからない。その為必要な時に必要な分だけ汲みに来ているのだ。
「今日も少し貰うね」
周りにいるであろう妖精達に声をかけ皮袋に水を汲むと、お礼にレッドベリーを置く。これは森の恵を頂くのだからお礼はしなくては、と昔から習慣のなっている。
「ん?」
ふと視線を感じ振り返るが誰もいない。もしかすると妖精?と首を傾げる。
「……誰か、いる?」
返事はない。嫌な雰囲気もないし、いたずらされる様子もない。姿が見えないだけかもしれないと思い、視線を感じた方に向かってペコリと頭を下げる。
「いつもお邪魔してすみません。ありがとうございます」
皮袋を肩にかけると元来た道を戻り妖精の森を出た。そのまま必要な薬草を摘んで家に帰る。すると家の扉の前にキラキラとした草がてんこ盛りになっていた。
「キアヌ草だ。また小鳥達かな?ありがとうな」
数年前多数の死者を出した流行病ネオック病。その特効薬を作るために必要なのがこのキアヌ草だ。
崖の中腹に生息するため採りに行くのも命懸けなのだが、餌のお礼なのだろう、時々こうして小鳥達が持ってきてくれる。おかげで生成数も増え、平民でも治療を受けやすくなった。ただもう少し早ければ……と悔やむこともある。
「少し肌寒くなってきたからそろそろ流行り始めるよな……よし、今日はネオック病の薬を作るか」
いそいそとキアヌ草を抱えるとトールは作業台へと向かった。
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