モブの薬師が精霊王に会いに行ってみたら

ゆら

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勇者来訪

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「えーっと、ネオック病の薬と咳止め、傷と湿疹に塗る軟膏と保湿クリーム……よし、これくらいでいいかな」

 翌日、作った薬を鞄に入れ王都へと向かった。



「ペール先生」
「やぁ、トーリくん。いらっしゃい」
「薬持ってきたよ。そろそろネオック病の薬も必要になってくるかなって思って」
「助かるよ。最近ちらほらネオック病の患者も出始めてきたからね」

 訪れたのは祖父の代から薬を卸してる医院。ペールは貴族に媚びへつらうような医者とは違い、身分に関係なく患者に寄り添える信頼できる医者だ。

「良かった。昨日丁度キアヌ草が手に入ってさ。今日はとりあえず50持ってきたけど、来週また持ってくるよ」
「ああ、頼むよ」

 あとこれ、と持ってきた薬を見せると全て買い取ってくれた。

「トーリくんの薬はよく効くからね」
「ありがとうございます」

 代金を受け取り医院を出る。近くの定食屋で昼食を食べ、馴染みの雑貨屋にも保湿クリームを納品する。その後買い出しを済ませると帰路へと着いた。



 日が暮れる頃、ようやく自宅が視界に入る。

「あーやっと帰ってきた……ん?あれ?」

 見慣れた家の前に人らしい影が見える。
 来客の予定なんかなかったはずだ。もしかすると薬を必要としている人だろうか。
 荷物を抱え直し急いで家へと向かう。

「ショーマ、あれ」
「あ…?あーッ!やっと帰ってきたのか!」
「え?」

 1人の青年が不機嫌を隠すことなく露わにし声を荒らげる。その勢いに驚き、思わず足を止めた。

「いつまで待たせんだよ!てか、俺を待たせるとかガチ意味わかんねぇ」

 約束などしていただろうかと思い返すが、やはり全く思い当たる節がない。
 青年を見れば普段関わるような一般人とは違う出で立ちをしている。
 見てわかるほど高価な防具に腰には剣を携えており、まるで冒険者のような格好だ。
 男三人女一人。冒険者グループだろうか。一人は剣士、一人は魔法使い、残りの女性は白魔道士だろうか。だが白魔道士に必要な杖を持っていないな、などと考えていると、先程言葉を荒らげていた青年がぬっと近づいてきた。

「お前森の薬師だろ!早く精霊王の所に連れて行けッ!勇者を案内するのがお前の役目だろ!?」

 その言葉に目を見開き、そして一気に落胆した。

「これが、勇者……」
「そうだ!勇者に会えて嬉しいだろう」

 思わずこぼした言葉だったが、感動していると勝手に解釈したのかどこか自慢げに腕を組んでいる。

「えっと…」
「わざわざこの世界を救うために来てやったんだよ?さっさと精霊王とのイベント終わらせたいんだけど」

 言外に早く案内しろと言わんばかりに組んだ腕を指でトントンと叩き始めた。

「薬師殿、申し訳ない。俺は王国騎士のライアンだ。コイツはショーマ。魔王を倒すために異世界から召喚された勇者なんだ。前の村でこの森に精霊王がいると聞き訪ねさせてもらった」
「そうなんですね。僕はトーリ。この森で薬師をしてます」

 間に入ったライアンがここを訪れた経緯を説明してくれる。どうやらショーマより話せる相手のようだ。差し出された手をジッと見つめる。
 召喚されたと言うことはどこか他の世界から来たのだろうか。ショーマという名なら日本ということは十分有り得る。顔立ちも日本人のように見える。同郷ならぜひ仲良くなりたい、と思うところだが……如何せん横暴そうな振る舞いを見るだけでドン引きだ。正直転生者です、なんて知られたくないし、できるもんなら関わりたくないッ!
 そんな事を一瞬のうちに考えると、トーリはにっこりと笑みを浮かべライアンの差し出された手を握った。


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