モブの薬師が精霊王に会いに行ってみたら

ゆら

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騎士と魔法使い

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 5人分の食事で今日買い出しした食料は殆ど底をつき、食糧庫は今日の朝と殆ど変わらない様相になってしまった。明日また買い出しに行かなくてはいけない状態にガックリと肩を落とす。

「すみません、よかったらこれ受け取ってください」

 魔法使いのニコが話しかけてきた。その手には小袋が握られている。

「これは?」
「迷惑代」

 中には金貨が数枚。宿代にしては高額で、無駄遣いしなければ半年くらいは生活に困らない額だ。
 ショーマ達とのやり取りを静観していた彼は、普段からも率先して話す方ではないらしく、成り行きに身を任せるタイプらしい。その結果が勇者パーティへの同行だったのだと夕食の時ポツリと呟いでいた。
 迷惑代、という言葉に首を傾げればスッと2階を指さす。そこからはギッギッと木が軋むような音と微かに女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
 まさか、と目を見開く。

「あんなのに使われたあとは嫌でしょ。買い換えたいかなと思って」
「あ……ありがとうございます」

 絶望的な気持ちになりワナワナと手が震える。
 なにが「薬師さんやらしー」だ。聖女のクセに純潔散らすの早すぎだろ。
 無駄にクネクネとした仕草を思い出し掌の金貨を握りしめる。

「……もしかして、いつもこうなんですか?」

 ショーマとリリスの行為に対するニコの動揺のなさと慣れた対応に疑問を口にすれば、後ろからライアンが「そうなんだよー」と呆れたような声で答えた。
 作業台をテーブル代わりに囲みながらお茶を啜る。
 ニコが防音魔法をかけると2人の話が始まった。

「俺は元々王国騎士だったんだけど、召喚された時からショーマはあんな感じでさ。勇者だからって無駄に威張り散らしてたもんだから、魔王討伐を口実にして早々に王宮から追い出されたんだ」
「その時に招集されたのが僕とライアン、そしてリリス」
「俺とニコは国のためならって思って参加したんだが、リリスは違ったみたいで」
「魔王討伐した暁には莫大な報酬が与えられるし、勇者って肩書きが魅力的だったみたいで旅が始まってすぐリリスの方から」

 行く先行く先で情事に溺れ、雑用は全部2人に押し付けられていたという。わがまま放題で奔放な旅に段々疲れと不満が溜まっていたのだろう、夜が更けるまで2人の愚痴は続いた。



 翌朝、そのまま作業台で寝転けていたトーリはゴソゴソという物音に目を覚ました。

「悪い、起こしたか」
「僕達はそろそろ出ようと思う」
「そっか。あ、レッドベリーとシロクサの夜露は?」
「夜露はトーリが寝たあと森の中散策して取ってきた。レッドベリーは見つかんなくて」
「とりあえず探しながら妖精の森に向かおうかなって」

 シロクサの夜露を探してたと言うなら2人はほとんど徹夜ということだろう。ショーマとリリスは……当然協力するわけないか。

「よかったら持って行って」

 作業台の下にある箱から取り出したレッドベリーを渡す。ショーマの思い通りになるのは癪だが、渡さなくても2人が苦労する未来しか見えない。

「迷惑かけてすまない」
「ありがとう」

 嬉しそうに受け取った2人はショーマ達を起こすと妖精の森へと向かった。
 ライアン達は心配だが、ショーマとの関係も魔王を倒すまでだ。頑張れ、と心から応援を送る。

「さて……街に行くか」

 溜息を吐きつつトーリも家を出た。


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