モブの薬師が精霊王に会いに行ってみたら

ゆら

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同居

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「狭いのでゆっくりできないと思いますが…」

 隣にいるスイハに声をかける。一人とはいえスイハはトーリより頭ひとつ大きい。小柄だった祖父とは違うのだ。とてもゆっくり過ごせるとは思えない。

『さぁ、トーリの家に帰ろう』

 そう森で言われた時は冗談だと思ったが、帰ろうとするトーリに当然のように付いてきた。

「トーリと一緒に居ることに意味があるんだ。狭いというなら広くすればいい」

 言うと指をくるりと回した。
 すると家がズズズッ……と形を変えていく。
 大木が生え家が飲み込まれたかと思うと木の根元に扉が作られ、木の所々に窓が現れた。

「え、え、なにコレ…!?」
「前の家より広くなったし、これなら一緒に住んでも問題ないだろう」
「え!?一緒に住むんですか!?」
「もちろんだ」
「い……いやいや、意味わかんないですって!」
「愛し子のそばにいるのは当たり前だろ?」

 ゆっくりと頭を撫でられ、慈しむような笑みに頬が熱くなる。
 一体何なのだ。
 スイハは愛し子と勝手に呼ぶが、トーリには全く見当がつかないでいた。
 もちろんゲームにこんなストーリーはない。というか勇者が主人公の冒険RPGにこんなサブストーリーは必要ないのだ。それなのに出会ったはなから好意的で、待っていただのなんだの言われても全く理解できない。

「さぁ、日が暮れると寒くなる。早く中に入ろう」

 当惑するトーリを他所に、スイハはその肩を押しながらドアを開いた。

「気に入ってくれるといいが」
「僕は今までの家でも……っ」

 一階は暖炉のついたリビングに、ダイニングスペース、キッチンと浴室。リビングから滑らかにカーブする階段を上れば製薬や調合のための作業台と棚。手狭で作業台の下に押し込んでいた材料もきちんと棚の中に仕舞われている。

「すごい!こんなに広いと作業も捗りそう!ありがとうございます、スイハ様」

 理想的な作業スペース。最初戸惑っていたトーリも胸が弾んでいく。
 更に階段を上がれば、そう広くないスペースに大きなベッド。寝室だ。今までの狭いシングルサイズじゃない。トーリ3人くらい余裕で寝れるだろう。

「わぁ……でも、あれ?スイハ様も一緒に住むなら寝室が足りないですよ?」

 部屋はここで終わりだ。扉も上にあがる階段もない。もしかすると精霊には睡眠が必要ないのかもしれないが、人間の感覚しか持ち合わせないトーリからすれば寝床がないとなると落ち着かない。
 もしかするとここがスイハの寝室という可能性も……。

「一緒に寝るから寝室は一つで十分だろう?」

 当然とばかりの言葉にトーリは「は?」と言葉を漏らした。

「それよりトーリ、その他人行儀な言葉遣いをやめてくれ。寂しいじゃないか」

 押しの強いスイハにあれよあれよという間に押し切られ、気づけば一緒に住むことになってしまった。


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