モブの薬師が精霊王に会いに行ってみたら

ゆら

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勇者再来

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「おかしいなぁ……ここだったはずだけど」
「昨日こんな大木なかったよな?」

 騒々しさに目を開く。

「ッ!?」

 鼻が触れそうな距離にスイハの顔があり、トーリは驚きのあまり思わず身を引いた。

「そういえば昨日結局……」

 新しく寝室を作ることを提案したりソファで寝ると言ってみたが、結局二人で一緒に寝ることになったのだ。

「正直、悪くなかった……」
「何がだ?」
「え……お、起きて!?」
「ふっ……おはよう。可愛らしい寝顔だった」

 柔らかい笑みのあと額に唇が触れた。

「いッ……いま」

 口付けられた額を手で押え、キスされたのだと理解すると顔が熱くなっていく。
 甘い雰囲気に狼狽えていると、ドンッドンッと扉を叩く音が響いた。そういえば騒ぐ声が聞こえ目が覚めたことを思い出す。窓の外を覗くと見覚えのある姿に慌てて玄関まで駆け下りた。
 スイハと鉢合わせすればややこしい事になりかねない。「絶対に出てこないで」とスイハに念押しし、一瞬の躊躇ののちおずおずと扉を開いた。

「やっと出たな!」

 突然の怒声に扉を開いたことを早々に後悔する。
 スイハの言動に振り回されていたとはいえ、確認すればよかったのだ。勇者達の事について。

「お前が言う通り妖精の森に行ったのに、全然精霊王に会えなかったぞ!」
「え、どういうこと?泉には行きましたよね?足跡があったし」
「行ったけど精霊王は全然出てこないし、待つのに飽きたから帰ろうとしたら全然森から出られなくなったんだよッ!あれ絶対嫌がらせだろ!」

 余程不満が溜まっていたのだろう、イライラとした様子を隠そうともせず、眉間に皺を寄せている。
 確かにあの森で迷ったというなら焦りや不安に襲われただろう。それを他人にぶつけたくなる気持ちもわからなくもないが、理由もわからないままぶつけられる怒りには納得ができない。

「それが僕のせいだって言うんですか?」
「すまない、トーリ。なんとか妖精の森を抜けたと思ったら北の森で、夜通し歩いてようやくここまで戻って来れたんだ」

 泥に汚れた鎧と疲れ果てたライアンの顔に妖精の森を迷い迷った苦労が現れている。その姿にショーマへの怒りがいくらか薄れてしまった。

「大変だったのはわかるけど……僕は精霊王に会うための方法を教えただけで、敬意ある態度を見せれば精霊王にだって会えたはずです」

 キッとショーマに視線を向ける。
 家に来た時もそうだったが、ショーマは自分以外のものに対する敬意がなさすぎるのだ。加護を貰って当たり前という態度でなぜ受け入れて貰えると思ったのだろう。

「俺は勇者なんだぞ!精霊王の加護を貰うのは当然だろっ!」

 はぁ…。溜め息を吐くと、ショーマの後ろで同じように溜め息を吐く姿があった。ライアンとニコだ。

「ショーマ悪いが、俺とニコはこれ以上旅についていけない。この件は国王にも話を通してある」
「僕たちの代わりに旅に同行してくれる人がいるらしいから、一度王宮に行こう」

 なんで、どうして、と不服そうに騒いでいるが、それでも二人相手に何時もより勢いがないのは少なからず仲間として認めていたのかもしれない。

「トーリ、迷惑かけてすまない」
「いや全然……大変だろうけど頑張って」

 申し訳なさそうに頭を下げながら勇者一行は王都へと逆戻りした。


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