モブの薬師が精霊王に会いに行ってみたら

ゆら

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賑わう街

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「わぁ……すごい賑わいだね」
「久方ぶりだが、街並みはあまり変わってないな」

 祭りがあると訪れた王都の街は国中から集まったかのように人が溢れていた。
 ただ、普段はつけないフードのせいで視界が狭く感じるが。

「ロイス殿下の生誕祝いだからな。普段王族の誕生日と言ってもここまでしないが、今回は各領地からも貴族が集まってきてる」
「なんか……変な感じだよね」

 ライアンとニコは賑わいに少し目を細めながら呟いた。

「……トーリ、フードがズレてる。街にいる間はちゃんと着けるんだ」
「えー……今まで着けたことないんだけど」
「変な男に目をつけられたらどうする」
「いやいや、ないから」
「私が不安なんだ」

 家を出る時にフード付きの外套を着るように言ってきたのはスイハだ。冷え込むことも多くなってきたし、心配してるのだろうと素直に袖を通したが、どうやら違う方向で心配していたようだ。
 心配するなら自分をした方がいいのでは、とトーリはスイハをじとっとした目で見た。
 その長身でただでさえ人目を引いているのに、眉目秀麗な出で立ちでそこら中から女性の熱い視線を集めている。
「素敵な方だわ」「どちらの貴族の方かしら」などと、盗み聞きしてるわけでもなく聞こえてくる声はスイハに気づいて欲しいからだろう。髪をクルクルと指に巻き付けながらいじらしさを見せるが、その視線はこちらに気づけと言わんばかりにうるさい。
 なぜだか胸の辺りがモヤモヤとする。

「被るならスイハの方だと思うけど。周りの視線気づいてないわけないよね」
「見たい者には勝手に見せておけばいい。だがトーリは」
「はい、そこまで!」
「とりあえず、宿屋に行こっか」



 肩を押されながら着いたのは祭り会場から離れた宿屋。
 祭りに参加するなら夜も遅くなるだろうし、せっかくなら泊まったらどうかと、ライアンの提案で宿を取った。祭り会場近くは遠方からの客で既に埋まっているだろうと、ライアンの知り合いが経営する大通りから少し外れの宿屋。人通りはいつもより多いが、それでも祭り会場近くより静かだ。

「ふぅ……おっと」

 案内された部屋でやっとフードを外し息を吐く。外套を脱ごうと首元の紐を引くと、ネックレスが引っかかった。

「綺麗な石だな。水晶か?」
「やらしい目で見るな」

 不思議そうにライアンが覗き込むが、その視界をスイハの手が遮る。

「いやいや、トーリってネックレスはめそうにないなって思っただけで」

 慌ててライアンは体を引き、ぶんぶんと首を振った。

「もう、スイハってば」
「んー?……これ、どうしたの?」

 ニコが興味深げにネックレスを見つめる。

「母さんの形見だって、死んだじいちゃんから渡されたんだ。母さんのことは覚えてないんだけどね」
「ふーん……これ、魔力がこめられてるよ」
「そうなの?」
「ニコの言う通りだな。俺にはなんの魔力かわかんないけど」
「この石の部分に……光?……いや、違うな……んん?」

 ニコはペンダントトップになっている石に手を添えながら難しい顔で首を捻っている。

「近い」

 後ろから回った腕にぐっと体を引き寄せられた。

「ちょ、と、スイハ!?」

 有無を言わさず腕の中に抱きしめられ、あたふたしてしまう。

「あー……ハイハイ、すみません」
「そろそろパレードも始まるだろうし、祭りに行こうか」

 脱いだばかりの外套を頭から被せられ、結局荷物置いただけで宿を出た。


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