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浄化の旅へ
しおりを挟むシーミュ帝国の懇願に応え、トーリは皇都を出た。
まさか一介のモブ薬師が旅をすることになるとは、微塵も思ってなかったが。
浄化のため、帝国中を旅することを伝えると、ライアンとニコは同行を申し出てくれた。
ラゴ王国と違いシーミュ帝国は魔物も現れる危険な国。そのため、初めはその申し出を断った。
「俺たちこう見えて、勇者パーティの一員として旅してしてたんだぜ。コカトリスとかワイバーンも相手にしてたし」
「そうそう。この国の魔物ならゴブリンとかオークが多いし、トーリなんかより僕らの方が全然慣れてるから」
元々二人は勇者パーティに選ばれた騎士と魔法使い。魔物との戦いならトーリなんかより断然慣れているのだ。
安心させるというより、自信に満ちたその表情に、トーリは「ありがとう」と素直に頷いた。
とはいえ、浄化の旅は国からの正式な依頼。
仲間内だけで旅をし、命を落としました、とあっては帝国の面目も丸潰れになってしまう。
しかもシーミュ帝国の地理にも疎い三人を手放しで放り出す訳にはいかない。
道中の護衛、そして連絡係として同行したのが皇国騎士と皇国魔道士。
宰相のお墨付き通り、道中現れる魔物に対しても臆することなく剣を抜き、次々と倒していく。
ライアンとニコに引けを取らない強さに思わず感嘆した。
野営をして数日。
まず向かったのは皇都の隣の領地ルスト。そこにある聖堂だ。
訪れたルストは、もとは農村が多くあったのだろう。実りの悪い田畑が多く見受けられた。
領地の北西にある市街地。そこに立派な聖堂があった。
「ここが聖堂です。皇都には神殿がありますが、地方の領地にはこのように聖堂を建て信仰されてました」
魔道士が淡々と聖堂について説明をしている。
それに耳を傾けながらも、トーリは聖堂の中を驚嘆しながら歩いた。
聖堂といっても中の造りは神殿と変わらない。木製の長椅子が並び、正面奥には精霊像と祭壇。
そこでトーリは膝をつき、静かに手を合わせて握った。
この場が、この土地が、穏やかで自然あふれる元の姿に戻るように。スイハと同じ景色が見れるように。
淡い光が徐々に範囲を増し、広がっていく。
そして走るように広がった光が収束し、静けさがその場を支配した。
「はぁ……」
「大丈夫?」
「ありがとう、ニコ」
差し出された水をグイッと飲む。
何となく感じていたが、浄化をすると体が怠く力が入りにくい。それだけ魔力を消費してるのだろう。
その場に座り込み、トーリはぼんやりと聖堂内を見渡した。
かつて精霊が祀られていた場所。
石壁に刻まれた紋様は摩耗しているが、触れてみると確かに精霊の痕跡を感じた。
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