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寂寥感①
しおりを挟む「カラミティの最新ドレスが素敵でぇ」
「知ってます?ラケティのクランペットにレモンソースのトッピングが増えたらしいですわ」
「昨日の夜会でまた例の伯爵が愛人を連れてきたらしいぞ」
「見た見た!すごい美人だったな。前の愛人はオメガだったよな」
「あの伯爵の趣味ってわかりやすいよな」
休み明けの学園内は程よい騒がしさを見せている。
どうやら昨日はどこかの邸宅でパーティが行われたようだ。ランチの時間にもなれば下世話な話題に溢れていた。
「オリオールも昨日の夜会に行ったの?」
「行ったよ。招待状貰ったしね。ソリドール伯爵の噂は本当だったよ」
オリオールの耳にもしっかり聞こえていた様で、下世話な噂の真相を教えてくれる。
「そういえば、今日ローレンツは?」
「教師に呼ばれて行った。先に食べてていいって」
「だから俺誘ったのか。他にも友達作んないと。あ、この前のダニエルはやめな。あそこの親子は似たり寄ったりだから」
グッと言葉を飲み込んだ。ソリドール伯爵が生粋の女性好きという噂は公然の秘密のようだ。オリオール曰く、その息子であるダニエルに至っては男女問わず顔が好みなら声をかけて回るらしい。
ローレンツも知っていたのだろう。だから心配してくれたのだ。
情報通のオリオールから新たな情報を得つつ食事を済ませると、教室へと戻る。
「あれ、ローレンツじゃない?とカロリーナ嬢?」
「本当だ」
カフェテリアを出た先でローレンツとカロリーナが歩いてるのが見えた。
珍しい組み合わせだ。
カロリーナはいろんなん人に対し親しげに話しける姿を見ていたため「またか」と思うが、その相手がローレンツとなると目を見張る。
ローレンツはカロリーナのことを苦手だと思っていたが、並ぶその顔には嫌悪感など見受けられない。
確かに教師から呼ばれたと言っていたはずだ。なのにどうしてカロリーナと一緒にいるのか。
気持ちがずんっと沈んでいくのがわかる。
女性と並ぶ姿など初めて見た。
ローレンツもアルファなのだから番を見つけなくてはいけないのはわかっているのに、オメガの女性と歩いているのを見るだけでこんなにも胸を締め付けられるとは思わなかった。
いつかは離れなくてはいけないと覚悟していたはずなのに、その辛さを覚悟し切れてはいなかったのだと痛感させられた。
「ユリウス、大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込んでくるオリオールに、何とか口元を上げて返す。
「大丈夫」
公言したことはないが、多分オリオールは察している。だからと言って無理にアプローチを勧めてこないし、深く問い詰めてもこない。本当に見守ってくれているだけだ。
その優しさにユリウスは心から感謝していた。
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