転生した世界で深愛に触れる

ゆら

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寂寥感②

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 帰りの馬車。
 ローレンツはいつもと変わらない様子を見せている。興味深かった授業の内容や、剣や盾などの備品庫の手入れについて、気になったことを話しているがユリウスの頭にはあまり入ってこない。
 時々相槌を打つが、別のことに思考は囚われていた。

「今日……」
「今日?」
「えっと……」

 昼の光景が頭から離れず思わず口に出していたが、咄嗟に噤む。しかししっかりとローレンツに拾われてしまいどう誤魔化そうかと目を右へ左へと動かした。

「そういえば、今日のランチはオリオールととったらしいな」
「あ、…うん」
「一緒に行けなくてすまない」

 うん、と頷くことも、ううん、と首を振ることも出来ない。
 聞いてしまってもいいだろうか。
 昼、カロリーナと何をしていたのか。
 教師に呼ばれたと言っていたのは嘘だったのか、と。
 そんな束縛めいたことをたかが幼馴染が言ってもいいのだろうか。逡巡してる間にローレンツがユリウスの手を掴んだ。

「ユーリ、怒っているのか?」

 自然と下を向いていた顔を慌てて上げると、思ったよりも近い場所にローレンツの顔があった。その表情は悲しげに眉を下げている。

「お、怒ってないよ!ただ、」
「ただ?」

 ぎゅっと掴まれた手の力が強くなった。

「ただ……カロリーナ嬢と、一緒にいたから…」
「カロリーナ嬢……?ああ、昼間の。今日、教師に呼ばれたのは剣術練習で裏庭を使いたいから見て欲しいと相談されて見に行ったんだ。その時彼女もたまたま裏庭に来ただけだ。決して逢い引きなどではない」

 焦った様子もなく淡々とその時の状況を教えてくれる。嘘ではない。それはわかる。わかるが、偶然会っただけでローレンツがカロリーナに対する心証を良くするとは思えないのだ。

「……仲良くなれそう?彼女オメガだし、何かの縁かもよ」

 無理に笑うのは苦手だ。それでもユリウスは必死に口角を上げて見せた。
 婚約者も番もいないローレンツにとってはカロリーナと親しくなることに何のデメリットもないのだ。親しくなったのなら喜ばしいことだと、一緒に喜ぶのが幼馴染だと思う。

「ユーリ…」

 一瞬ローレンツの表情が曇った。

「彼女の肩に虫がとまったんだが……意外にも驚いたりせず、令嬢らしくないなとは感じた」
「そうなんだ……ロー言ってたもんね、辺境は虫が多いから虫が平気な人がいいって」

 辺境伯邸でカロリーナと並ぶローレンツを想像するだけで悲しくなる。
 2人並べは美男美女でお似合いだ。それに虫も平気ならあの辺境伯領でもやっていけるだろう。
 休みの日はピクニックに出掛け、川で魚釣りや木の実を採ったり……ローレンツとの思い出がカロリーナとの妄想に書き換えられていく。

「教室に戻る際、市街地を案内して欲しいと相談されて…」

 市街地という言葉につい先日の楽しかった思い出が蘇る。だがそれもカロリーナとの思い出で上書きされていくのだ。
 徐ろに首輪に触れる。新しくローレンツから貰ったばかりの首輪だ。
 つけた時「うん、良く似合う」と嬉しそうに笑ってくれた。それも今回が最後なのだろう。
 芽生えた寂しさが心に広がり、ローレンツの言葉は耳に入ってこなかった。


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