転生した世界で深愛に触れる

ゆら

文字の大きさ
12 / 48

転生先の世界

しおりを挟む


 あれから数日。入学式からは既に1ヶ月が過ぎ、学園生活にも慣れてきた。
 最近は時々アルファの人に声をかけられ話すことも増え、ローレンツとの時間は少し減った気がする。いや、実際減った。
 他のアルファと話したり、オリオールとの時間が増えたのだ。
 その間ローレンツが何をしてるのか、聞きたいと思うが、カロリーナや他の令嬢と一緒にいた、と言われればまた傷心するだけだと、聞く勇気を持てずにいた。それなのに一丁前に視線でその姿を探してしまう。
 それで気づいたことだが、カロリーナはランスといる時もあればアレクシスといる時もあり、常に特定の人物と一緒、という訳ではないようだ。
 かと言って誰でも、という訳ではない。関わりを持つ人物と言えば、ランス、アレクシス、ジェーク、それとローレンツ。時々オリオールとも話してるようだが、2~3話したら会話を終えている。
 まだ番は決まってないのだろう。
 ローレンツと話してる姿を見かけたことは無いが、2人の姿が見えないことも度々あるのでどこかで落ち合って話したりしてるのかもしれない。
 そんなことを考えるだけで、晴れ渡る空とは反対に心の中は曇天に覆われてしまう。
 スッキリしない気持ちを抱え、校舎の外へと出た。自然と足が向かったのは、中庭から裏庭へ続く道から脇に入った所にあるガゼボだ。
 何も考えたくない。番を探すことも、ローレンツのことも。
 眼前に広がる花畑に視線を落としながらぼんやり思考を止めていた。

「ユリウス見ーっけ」

 突然声をかけられ、ビクッと肩を揺らす。振り向いた先には今顔を合わすには少々気まづい相手。

「カ、カロリーナ嬢!?どうしたの?」

 驚きの表情を咄嗟に隠すことも出来ず、見開いた目を向けた。

「……やっぱり変」
「え?」

 カロリーナの言葉の意味が汲み取れず、首を傾げる。
 急に声をかけられ驚くことがそんなに変だったのだろうか。例えそれが王族であれ平民であれ、不意を突かれれば誰だって驚くものだ。

「前から変だと思ってたけど……あなた、転生者でしょ」

 予想もしなかった言葉に開いた目を更に丸くした。

「だってユリウスと性格が違うもの!」

 カロリーナとはこの学園で初めて会ったはずなのに、まるでユリウス・アイルを知っているような口ぶりだ。
 いや、知ってるのとは違う気がする。
 ユリウス・アイルとしてこの世界に生まれてから、ありのまま生きてきたユリウスにとって「性格が違う」とはまるで別のユリウスがいるような意味に聞こえる。

「性格が違うって……どういう事?」
「どういうって、そのまんまよ!ゲームと全然正確違うじゃない。私このゲームが大好きで裏ルートの逆ハーのために何周もしたんだから、ユリウスの性格を間違えるはずないわ!だからあなたも転生者で何か考えがあって行動してるんでしょ?だからゲームと性格が違うんだわ!」
「ゲーム……」
「だいたい初対面の時からおかしかったもの。入学式でユリウスに会うためにはこのガゼボに来ないと会えないはずなのに、中庭で会うなんて…本来あそこで会うのはランスだったんだから」

 言われてみれば、初めて会った日もどこかおかしかった。そこに居ないはずのランスの名前を呼び、ブツブツと一人何かをボヤいていた。
 不審に思いその場を離れたが、カロリーナにとってはユリウスの方が不審だったのかもしれない。

「ごめん、ゲームってどういうこと?この世界ってパラレル的なやつじゃないの?」

 堪らずカロリーナに問いかける。
 するとキョトンと気の抜けそうな顔を見せたかと思うと、面食らったような顔へと一変した。

「この世界はルイチル学園~番に出会う運命の物語~でしょ!?ユリウスはその攻略対象じゃない!」
「攻略対象って」
「私がヒロインのカロリーナで、学園で会った攻略対象のランス、アレクシス、ジェーク、ローレンツ、そしてユリウスの中の1人と愛を育んで番になるっていう!本当に知らないの!?」
「う、うん。前世でゲームには縁がなかったから」
「うそ!?こういうのって作品のファンが転生するのが定番なんじゃないの?私なんてこのゲームの逆ハー目前で事故にあったから未練過ぎて転生したと思ってたのに!」
「さぁ…?そのゲームのファンでもなかったし、普通にサラリーマンだったし……」

 ゲームの世界に転生したなどと思いもしなかった。
 そう漏らせばカロリーナは信じられないといった顔を見せる。

「……サラリーマンだったってことは、あなたも事故か何か?」
「うん、歩道橋から落ちて……」
「そう……はぁ、でもこれでこの世界でも逆ハーは無理ってことかぁ」

 一瞬の沈黙のあと、カロリーナが盛大に溜息を吐いた。そして心底残念そうに眉を下げる。

「なんか、ごめんね」
「ユリウスのせいじゃないわよ。まぁ、残念だけどね。でも前世を知ってる同志がいるのも心強いかも。この世界に生まれ変わったって知った時嬉しかったけど不安もあったし」
「それは、僕もわかる……バース性とか未だによくわかんないし」
「そうよね。しかもオメガって。ユリウスってゲームではアルファだったのよ。なのにこの世界ではオメガだったから驚いたわ」
「そうなの?アルファだったら色々悩まなかったかもなぁ」
「それは……」

 カロリーナが口を噤んだ。不思議に思い首を傾げる。

「アルファはアルファの悩みがあるものよ」

 よくわからないままふーんと相槌を返した。
 もしかするとゲームのユリウスはアルファとして何か悩みを持ってたのかもしれない。
 だが、オメガとして生まれた今のユリウスにとってはきっと理解できない悩みだろう。
 前世の記憶を持ったオメガの気持ちをゲームのユリウスが理解できないように。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結 第三章 完結

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

処理中です...