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引き継がれる意志 壱
しおりを挟む「ねぇアオ、皆楽しそうね!」
「ああ、なんてったって、兄さんが1ヶ月ぶりに帰ってくるんだからな。ミイ、明日は無理でも明後日ぐらいに3人で城下の祭りへ行こうか。」
「本当!?こんな大きなお祭り久しぶりだから、楽しみにしておくわ!」
ここは光魔法が盛んな国。
この国の祭りは、各々の魔法で作った色とりどりの光球を空に浮かべて祝う光景が他国の人には珍しく人気が高いと、いつかずっと昔に父様に聞いたことがある。
今日の街は大賑わい、王が無事に帰国したことを祝うためお祭りの準備で皆忙しそうだ。
その王こそが緋彩兄さん、私達双子の3つ上の兄である。早くに亡くなってしまった両親の代わりに私達の遊び相手になってくれていた優しい兄さん。
いつだったか、私達に昔から仕えてくれているメイドの依織に
「優しく聡明な緋彩様、素直で可愛らしい蒼彩様と水彩様!はぁぁっまさに理想の兄妹像ですわぁ!」
と、妙にハイテンションで言われたこともあった。
事実、兄さんに対する評価は賛成できるものだ。だが蒼彩が素直...というのはあまり理解ができなかった気がする。
兄さんは成人してすぐに王位につき、【 争いのない平和な国 】を作るために約2年間、他国との外交に明け暮れている。そんな兄さんは憧れの対象でもあり、人間としても尊敬している。
そして、明日が兄さんの20歳の誕生日。
明日行われるパーティーのため、外交を切り上げて国に戻ってきてくれる。
城下町に面する部屋の窓から外を眺めていると、誰かが大急ぎで城内に入って来た。もしかして、兄さんが予定より早く帰国するのかもしれない。
そんな希望を胸に秘め、私は隣にいた彼の手を取り部屋を出た。
2人でゆっくりと階段を降りていると、向こう側から依織が走ってきた。
珍しい、マナーに厳しい彼女が城内を走るなんて。それになんだか顔色が悪い。
...なにか悪いことでもあったのか、浮かんできた考えを振り払うように笑顔をつくり、彼女に話しかける。
「依織、何かあったの?」
「っ、水彩様、蒼彩様っ...」
「緋彩様がっ____」
その続きは聞きたくない。
だって今日は大好きな兄さんが帰ってくる日。
きっと兄さんは帰ってきたらいつも通り私達の頭を優しく撫でてくれて、
夜は3人でゆっくりお喋り、
明日のパーティーを目一杯楽しんで明後日は城下におでかけする、
はずだったのに。
嫌だよ兄さん、お願い。早く帰ってきてよ。
大好きなあの声で「ただいま」って言って。
私達の名前を呼んで。
ねぇ、兄さん。
兄さんまで、私達を置いていかないで...
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