彼岸に近づく

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引き継がれる意志 弐

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「緋彩様がっ_____!」

依織の口からは荒い息が漏れるばかりで言葉にならない。
兄さんがどうしたと言うんだ、と一言聞いてしまえばきっと彼女は真実を語る。
だが、その一言で全てが崩れ去ってしまう予感がして言葉が出ない。

聞かなければいけないのは分かっている。それでも、どうしても勇気が出ない。

今兄さんのことで伝えられることと言えば、帰国が早まったか少し遅れるぐらいの話だろう。真面目な兄さんが帰国しないなどないはずだ。

なら何だ?その程度ならこんなに依織の顔色は悪くならないだろうし、言い淀むような話ではない。

チラリと横にいる彼女を見る。悪い予感がするのだろう、平静を装い笑顔をつくってはいるものの、握られたままの手は少し震えていた。


「...兄さんがどうしたんだ。」

途端、依織の目からはポロリと涙が溢れた。

「...緋彩様が、外交中に...っ殺害されました...!」


_____永遠にも思えるような静寂。
兄さんが、殺された?意味が理解できない、否、理解したくなどない。

ふと、握られた手から力がぬけた。

「っ、水彩!」

ふらりと倒れた水彩をどうにか腕の中に抱きとめる。

「水彩様っ大丈夫ですか!?」

依織の焦る声が聞こえる、だが俺の瞳は、意識は、少しずつ闇の中に落ちていった。
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