不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.40 悔恨と分不相応と思う

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 ベッドで仰向けに寝ていると天井が目に入る。
 以前ここに担ぎ込まれて目覚めた時の天井。あの時を思い出す。
 悔しいという思いと分不相応と思う気持ちが交錯する。

 悔しいのはモンスター相手に対処できなかったこと。むざむざと怪我を負わされ倒すことすら敵わず。シルヴェバーリのメンバーならば、上手く躱してモンスターを排除できたのだろう。咄嗟の判断と行動が駄目だから。腕で防御なんて無謀なことをせず、後退するとか横に逃れるとか、避けた際に銃で攻撃するとか。
 幾らでもやりようはあったんだろう。でも何もできなかった。腕しか動かせなかったのだから。
 だから悔しい。

 分不相応なのは己の力量で、国内最高峰レベルのパーティーに居ること。
 見事に足を引っ張り撤退を余儀なくさせてしまった。
 全員が実力者で優れた技能持ち。ただ単に技能が優れているだけじゃない。パーティー全体がひとつの生命体の如し。連携が優れているのもあるんだよ。
 長く一緒にやって来てるから、と言えばそれまでだけど。
 そこに俺だ。
 経験は浅すぎて話にならない。荷物持ち程度の存在が、実力者のパーティーに居るってのが、すでに分不相応。

 ここに居たら迷惑になる、そんな風にも思えてる。
 でも、少しでも期待されていたのであれば、それに応えたい自分も居る。
 いつまでも役立たずな荷物持ちでいいのかって。無能と言われ続け耐えてきた日々。そこから救い出してくれた。ならば応える必要はあると思う。
 ただ、今の実力だと足手纏いでしかない。
 俺に何ができるんだろう。

 みんな優し過ぎる。
 責められて当然だと思うのに、誰も俺を責めることをしない。銃がジャムるなんて当たり前のことなのに、それを想定することもなく無謀な行動に出た。
 トラブルはあって当たり前。そのために予備の拳銃を装備してる。咄嗟に持ち替えて撃っていれば、少なくともモンスターを怯ませることもできた。
 それすらできないのに、なんで優しいんだろう。
 キャリアが不足してるから? でも、そんなのラビリントで通用するはずがない。みんな命懸けでトライしてるはずだから。

 ひとりでも気を抜いていれば、深い階層では取り返しが付かなくなる。
 ひとりのミスがパーティー全体に影響してしまう。

 バカだ、俺。
 頭で理解していても行動が伴ってなかったのだから。

 やっぱり、俺なんかが居ていいとは思えない。
 まさに分不相応だ。無能は無能らしく牛の代わりに、農家で荷物を運ぶのが相応だと思う。
 探索者と一緒の行動なんて、そもそも無理があったんだよ。
 目頭が熱い。悔しい。なんで何もできなかったんだろう。痛い。腕が痛いだけじゃない。痛い。胸が、腕が、体中が苦しい。

 暫く意識を手放していたのか、寝ていたのだろうと思う。
 壁に掛かる時計を見ても暗いから見えない。
 夜中なのか。時間は?
 口惜しさと虚しさと不甲斐なさ。
 それなのに腹は減るんだな。仕事もできない癖に飯だけは一丁前に欲する。

 ドアがノックされた気がした。
 いや、ノックされてドアが開くと、誰かが覗き込み様子を窺っているような。廊下の明かりのせいでシルエットしか確認できない。

「誰?」
「あ、イグナーツ。起きた?」

 デシリアだ。

「お腹空いてない? ご飯食べる?」

 足手纏いなのに気を使ってくれてる。何もできずに無様な姿を晒し、みんなに迷惑掛けてるってのに。
 飯を恵んでもらうだけの物乞いだ。役に立てなくても生きている限り、腹は減ってしまうのだから。

「食欲ないの? 怪我が痛む?」

 余計な心配掛けてる。

「あ、あの。少し腹減って」
「じゃあ持ってきてあげるから少し待っててね」

 ドアが閉じられパタパタと足音が去っていく。
 少しするとドアがノックされ、開くと「明かり付けようね」と言って、部屋に入って来てガス灯に火を灯すデシリアだ。火を灯すと眩しさが半端無いな。ガス灯って明るすぎる欠点がある。
 室内が明るくなるとトレーに食事を載せ、デシリアがベッドサイドに持ってきてくれる。

「起きれる?」
「あ、はい」
「無理しなくていいんだよ」

 起き上がろうとすると背中に手を当て、起きる上で補助をしてくれるようだ。
 体を起こすと膝の上にトレーを置き「痛いんだったら食べさせてあげる」とか言ってるし。右腕は問題無いから食べる上で不便はない。
 それでもなんか知らないけど、スプーンですくって食べさせるデシリアだ。

「あの、介助は」
「不便でしょ。暫くは甘えていいから」

 食べさせてもらい食事が済むと、ベッドの端に腰を下ろし俺を見る。その目は同情だろうか。哀れみ、とは少し違う感じで。

「最初にここに来た時と同じ感じだね」

 担ぎ込まれた時もデシリアが面倒見てくれた。

「前も左腕だったよね」
「そうですね」
「左腕でガードする癖があるんだと思う」

 何やらごそごそ、袋も持参していたようで中から取り出してる。

「じゃじゃーん! これ、何だか分かる?」

 俺の目の前に差し出し見せてくるもの。

「イグナーツ専用、鋼の腕用防具」
「え」
「保護する部分は肉厚に作ってあって」

 少しの攻撃なら防ぐこともできると。ただし、俺だから装備できるのであって、普通の人には重すぎて使い難く動きが鈍ると。

「重いんだよね。治ったら着けてみようよ」

 なんで?
 不思議そうな表情を見せていたのだろうか「人の癖って、そう簡単に直らないから」と言う。
 ゆえに咄嗟に腕でガードした際、負傷し難いように防具を装備させる、と全員一致で決定したらしい。防具があればリスクは減らせる。早々何度も攻撃を受けることは無いはずだから、一回だけでも凌げれば儲けもの。
 不測の事態に備えておくようで。

「だからね、今後はこれを装備して」

 袋に仕舞い込み「ここに置いておくね」と言って、ベッドの下に置いたようだ。
 また俺に視線を向けると、眉尻が下がり情けない表情を見せる。

「肝が冷えた」
「え」
「イグナーツが死んじゃう、って」

 自分で感じていたのと、周囲で見ていた状況に幾らか差があるようで。
 物凄い勢いで弾き飛ばされ、転がる俺を見て血の気が引いたと。勢いがあり過ぎて助からないのではと、一瞬でも思ってしまったそうだ。
 デシリアの目頭に水滴が溢れ流れてる。

「もう、絶望しかけた」

 一瞬でも頭が真っ白になり、行動に移せなかった。そんな自分が嫌だとも。
 そう言うと抱き着いてきて「あたしを盾にしてもいいんだからね」と、少しだけ肩を震わせて言ってる。デシリアに抱き着かれた。心配掛け過ぎたのかも。
 盾にとか言われても、女子を盾になんてできるわけない。
 離れると、今後は自分で対処しようとせず、周りを巻き込んで欲しいと言われる。

「イグナーツは後衛。だから遠慮なく前衛を頼って」

 前に出る必要は無い。卑怯なくらいに後ろから銃を撃ち捲ればいいと。
 前衛は後衛の盾なのだから、常に前に立たせておけばいいと言う。それで文句を言うモルテンやアルヴィンではないし、それが前衛の仕事なのだからだそうで。

「モルテンの後ろに居ればいいんだよ」

 体を張って守ってくれるそうだ。

「イグナーツは安全な場所から、ひたすら攻撃すればいいの」

 みんな、そのつもりで俺を連れているのだと。
 いざとなれば荷物を放り出してでも、自分の命を優先して欲しいとも言ってる。

「分かった?」
「あ、はい。でも」
「でもはないの」

 心底肝が冷えたから、二度とこんな思いをさせるな、だそうで。

「大切な仲間なんだからね」
「はい」
「じゃあ、次からは防具を装備してモルテンを盾にして」
「はい」

 そんなんでいいのかな。
 でも確かに俺が前に出れば足手纏いになる。だったら後衛として徹底した方が、結果、みんなに迷惑を掛けずに済むのか。

 なんか、さっきまで俺なんて居ない方が、とか思ってたけど。

「あの、俺って居ても」
「何言ってんの?」

 パーティーの要だと言ったはず、だそうで。
 今後の攻略に必要と念を押された。
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