転生王女の破滅回避プラン90! ~無自覚人たらし王女、アリスが来るまでに美形側近を溺愛モードにしていました~

とびぃ

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第5章:権限を掌握し、心を癒やす(白ウサギ√導入)(残り50日)

5-6:美形側近、執務室での火花

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 王配クロードの承認印により、リリアは名実ともに、この国の行政という『頭脳』の大部分を掌握した。
 この日以降、宰相ラビの執務室は、リリアのもう一つの『戦略拠点』となった。部屋はリリアの整理術によって完璧に秩序立てられ、午後の光が差し込む窓際には、ハーブティーのセットと、常に新鮮な空気。もはや、以前の『魔窟』の面影はない。
 リリアは、優雅な王女のドレスではなく、動きやすい簡素なローブを纏い、ラビと共に、行政文書の処理に没頭した。彼女の事務処理能力は、ラビの知性と正確さと相まって、行政の効率を劇的に改善し、女王の無駄な命令による『行政コスト』を、劇的に削減していった。
 ラビは、リリアのそばで働くことで、疲労を忘れ、活力を取り戻していた。彼の赤い瞳は、常にリリアの顔を追っている。その視線には、事務処理の効率を学ぶための知的な探究心だけでなく、恩人であり、自分の魂を救ってくれた『主君』への、熱烈な崇拝の眼差しが宿っている。
「リリア様。この請願書は、従来の法典では却下案件ですが、貴女様の『費用対効果』の論理を適用すれば、長期的な国益に繋がります。このまま決済を進めますか」
「ええ、ラビ宰相。国益に繋がる案件は、すべて優先順位を上げてください。私たちが目指すのは、女王の機嫌取りではなく、最強の『経営国家』の構築です」
 二人の間に流れる空気は、極めて事務的で、知的で、そして深い信頼に基づいていた。彼らは、女王の暴政という共通の敵を前に、最高の『業務チーム』として機能していた。
 その時、執務室の重厚な扉が、厳格なノックと共に開かれた。入室の許可を待たずに、中に入ってきたのは、真紅の騎士服に身を包んだハートの騎士団長、ジャックだ。
 彼は、王女を護衛する職務の名の下に、毎日、この執務室へ顔を出す。彼の眉間の皺は、以前の『疲弊』によるものではなく、リリアがラビという『別の男』と親密に協力していることへの、強い『嫉妬』と『独占欲』によるものだった。
「リリア様。本日の護衛報告に参りました」
 ジャックの声は、冷たい氷のように低い。彼の青い瞳は、一瞬で部屋全体を査定し、リリアの顔色を確認した後、ラビの顔に釘付けになった。ラビの顔色は、以前よりも遥かに血色が良く、ウサ耳は力強く上向きだ。その変化が、ジャックの警戒心を、一気に最高潮まで引き上げた。
「宰相殿。貴女は、リリア様から過大な業務を押し付けられてはいないか、確認に来た」
 ジャックは、護衛騎士としての建前を使い、ラビに厳しく詰め寄った。その言葉の裏には、「私の主君(リリア)を、貴様の仕事で独占するな」という、熱い縄張り意識が隠されている。
 ラビは、羽ペンを机に置き、神経質な笑みを浮かべた。彼の瞳には、ジャックという『忠誠を競うライバル』に対する、優越感が宿っている。
「ご心配には及びません、ジャック団長。リリア様が、私に『生きる意味』を与えてくださいました。彼女は、私の命(リソース)を最大限に活用し、業務の効率を向上させている。貴方の『武力』は、その行政という『頭脳』を守るための『防衛資産』に過ぎない。私とリリア様の間にあるのは、貴方には理解できない、高次元の『知的な献身』です」
 ラビの言葉は、ジャックの『愚直な忠誠』を、暗に一段下に見る、知的なマウントだった。ジャックの青い瞳に、激しい怒りの炎が燃え上がる。彼は、剣の柄に手をかけた。
「貴様、リリア様に対する言葉遣いに気をつけろ。リリア様を『資産』や『効率』で語るな。貴女の命は、私がこの剣と引き換えに守るべき『至上の存在』だ。貴様のような、事務屋に、その存在の価値が理解できるはずがない」
 二人の間に、目に見えない火花が散った。執務室の空気は、一瞬にして、極度の緊張で固まった。ラビは椅子から立ち上がり、ジャックと正面から対峙した。二人の間に挟まれたリリアは、その緊迫した空気を、まるで『熱心な業務報告会』のように冷静に捉えていた。
 その対立が最高潮に達した時、第三の介入者が、予測不能なタイミングで現れた。
「おやおや。今日も君たちは、リリアを巡って吠え合っているのかい?」
 天井の梁の上から、猫の喉鳴りのような、楽しげな声が響いた。音もなく、姿を現したのは、情報屋チェシャ猫だ。彼の金色の瞳は、ジャックとラビの対立という『最高のエンターテイメント』を前に、歓喜に満ちて細められている。彼の黒いマントの裾は、窓から差し込む光を受けて、キラキラと鈍く輝いていた。
「ジャック。その剣を収めなよ。リリアが求めているのは、君の粗暴な武力じゃない。ラビ。君の『高次元の献身』とやらも、単なる『過剰労働への依存』に過ぎないよ」
 チェシャ猫は、梁から優雅に飛び降り、ジャックとラビの間に、猫のようにしなやかに着地した。彼は、リリアの顔を見上げ、その歪んだ笑みを向けた。
「リリア。俺の今日の『気まぐれスコーン』は、シナモンと干し葡萄だったね? その味は、君が俺という『情報』を、誰よりも独占し、誰よりも『特別』に扱っている証だ。俺は、君という『おもちゃ』の『所有権』を、誰にも渡さないよ」
 チェシャ猫の言葉は、ジャックの『忠誠心』と、ラビの『知的な献身』という二つの感情を、一気に『独占欲』という一つの醜い感情のカテゴリーに括り入れた。ジャックは、その侮辱的な言葉に激昂し、ラビは神経質な顔をさらに青ざめさせた。
「貴様! リリア様を『おもちゃ』だと! 許さん!」
「情報屋。王女様を侮辱するなら、貴様も排除対象だ!」
 三人の美形側近が、リリアを挟んで、互いに剣の柄や、隠し持ったナイフに手をかける。執務室は、三者三様の熱い感情の奔流で、煮詰まったような緊張感に満たされた。
 リリアは、羽ペンを静かに置き、三人の男たちの顔を、一人ひとり、観察した。
(なるほど。ジャック団長は『護衛の範囲』について、ラビ宰相は『業務の分担』について、チェシャ猫は『情報源の重要性』について、それぞれ熱く意見交換しているのね)
 リリアの恋愛偏差値ゼロの脳内では、彼らの激しい独占欲と、互いへの嫉妬の炎は、一切認識されていなかった。彼女の目には、彼らの行動が、すべて『私の生存というRTAを成功させるための熱心な議論』として映っていたのだ。
「みんな、落ち着いてください」
 リリアは、静かに、しかし、王女としての揺るぎない声で言った。三人の男たちの動きが、一瞬で止まる。
「ジャック団長の『護衛』も、ラビ宰相の『行政効率』も、チェシャ猫の『情報』も、どれ一つ欠けても、私のRTAは成立しません」
 彼女は、三人の顔を、最高の『営業スマイル』で見渡した。
「貴方たちは、私の命を守るための、最高の『プロジェクトチーム』です。みんな、私という共通の目標のために、こんなに熱心に意見交換してくれて、本当にチームワーク抜群ね!」
 リリアのこの『究極の勘違い』の言葉に、三人の美形側近の表情は、一瞬で固まった。ジャックは、己の熱い忠誠を『チームワーク』と称されたことに困惑し、ラビは、高次元の献身を『意見交換』と片付けられたことに衝撃を受け、チェシャ猫は、最高の独占欲を『チームワーク抜群』と総括されたことに、激しい苛立ちと、新たな興奮を覚えた。
 三人の男たちの胸には、「この無自覚な主君を、誰にも渡すわけにはいかない」という、共通の、そして最も強烈な『溺愛フラグ』が、確固たる形で打ち立てられた瞬間だった。リリアのRTAは、彼女の知らないうちに、逃げ場のない『逆ハーレム争奪戦』へと、その難易度を跳ね上げていたのだ。
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