誤召喚された異世界でチート魔法使いと旅をします

桐戸李泉

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2章

20話 雑談

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 食堂には既にお菓子と紅茶が用意されていた。
 焼き菓子の良い匂いがふんわりと部屋の中に充満している。

「さぁさぁ、そんな所で突っ立ってないで座ってくれよ」

 スカルドに促され、三人横になって席に座る。
 スカルドも向かい側に座る。

「さて、改めて自己紹介をしておこうか。僕はスカルド。この街の学院で教授をさせてもらってる」
「お、俺はリザの助手をやらせてもらってます、ユウトって言います」
「わ、私は……リザさんの弟子の……ノノ……です」
「何緊張してるのよ、あんた達は」

 リザは俺たちが自己紹介をしている横でお菓子を頬張っていた。

「そりゃお前にとっては知り合いかもしれないが、俺たちにとっては初対面なんだぞ」
「初対面だから何になるのよ?」
「いや、普通少しは緊張しないか?」
「そうなの? あんまり人と会う機会が無かったから分からないわ」

 そう言うと再びお菓子の方に目を向ける。

「これ、本当においしいわね」
「この街は貿易で栄えているからね。各地から美味しいものが集まってるんだよ。……それよりも、君が二人も弟子を取っていたなんてね」
「片方は弟子じゃないわよ。助手よ、助手」
「助手?」
「えぇ。話せば長くなるのだけど……色々あったのよ」
「そ、そうかい。まぁ深くは聞かないとしとくよ。それにしてもあんなに人間嫌いだった君が……」
「わーわーわー」

 再び大声でスカルドの話を遮るリザ。
 昔の自分について語られることをよっぽど避けたいようだ。

「どんだけ嫌いなんだよ、昔の自分について言われるのが……」
「誰だって突かれたくない過去ってあるものでしょ?」

 すごく引きつった必死な顔だった。
 こいつにも弱点はあるんだな。

「残念だけど昔話はよしておくとするよ。それより、あれをお願いするよ」
「分かったわよ、これでしょ」

 リザが再び師匠の魔導書を盗り出し、スカルドに渡す。魔導書を受け取ったスカルドは、その表紙をゆっくりと撫でる。

「しかし、本当にもう書き切ってしまうとはね」
「そうね。少し早かったわね」

 少し疑問を感じ、リザに小声で質問する。

「師匠ってどれくらいの年齢だったんだ?」
「年齢? そうね、具体的な年齢は分からないのだけど、おそらく40前後くらいだと思うわ」
「わ、若すぎじゃないか」
「そうね。ただ、あまり求めすぎてしまうと魔導書に手を付ける前に寿命で亡くなる場合もあるから、少し早めに手掛ける人は多いわ。それでも私の師匠は少し早すぎるけど」
「な、なるほどな」

 確かに寿命で亡くなってしまうことを考えれば、少し余裕をもって書き始めるに越したことはないように思える。
 そんな異世界の文化に納得している間に、スカルドが机の上に魔導書を置き、ため息をついていた。

「読み終わったの?」
「一応ね、まだざっくりとしか読んでいないけど」
「何か分かった?」
「いや、全く。さっぱり何も分からない」

 スカルドが笑う。

「学院の教授の肩書も形無しね」
「そう酷いことを言わないでくれよ。彼がとんでもなく複雑で難解な術式を書いているのは事実だし、何より僕には専門外だからね。読めば彼の考えが少しは理解できると思っていたけど、どうやらそれは僕の思い違いだったようだね」
「あ、あの、スカルドさんの専門って何なのですか?」

 先ほどまで緊張で石のように固まっていたノノが質問する。

「僕の専門かい? 僕の専門は討龍魔術だよ」
「と、討龍魔術なんですか!」

 ノノが興奮した口ぶりで言葉を発する。

「討龍魔術? この世界には龍がいるのか」
「えぇ、そういえば教えてなかったわね。そもそも魔法自体、龍と対峙するために生みだされたものなのよ」
「へぇぇ」
「で、この街、つまりスタドロンが人類の魔法の発祥の地とされてるのよ」
「それでノノが魔法使いなら一度は行きたい場所、みたいなことを言ってたのか」
「そういうこと」
「なるほどなぁ」
「少しいいかな?」

 スカルドが会話に入る。

「どうしたの?」 
「ノノ君がこの街の図書館に興味を示しているんだけど、どうかな?」
「あぁ、それね。後で向かおうと思っていたのだけど」
「そうなのかい。それならちょうど良かった。せっかくだし、僕が案内しようという話になったんだけど、いいかな?」
「別に私に許可を取る必要はないわよ。よかったじゃない、教授様直々に教えて下さるらしいわ」
「は、はい」
「そういうことなら早速向かおうか」
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