誤召喚された異世界でチート魔法使いと旅をします

桐戸李泉

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2章

22話 『カグマ』

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「さて、彼のことを語る際、どこまでを語るかということは悩ましい問題でもある。ただ一つ、彼が作り出した魔導書は完成度こそ高いものの実用性に欠ける点があったということだ」
「完成度が高いのに実用性に欠ける?」
「うん。『カグマの魔導書』は龍を倒すという点においては、他の討龍魔術を圧倒しているといってもいい。というのも、『カグマの魔導書』は発動さえしてしまえば、確実に対象にした龍を倒すことができる、いわば必殺の魔法だからだ」
「な、なんだよそれ……」

 某モンスターを戦わせるゲームの一撃必殺が頭に浮かぶ。ただ、そういうものはかなりのデメリットを持ち合わしている。それこそ先ほどのゲームの一撃必殺も他の技と比べて極端に命中率が低い。
 その点を考えれば、どんな龍も倒すことができる『カグマの魔導書』にもそういったデメリットがあったに違いない。
 そしてそれが実用性が低い要因になっているのだろう。

「いや、実際私も最初に見た時は同じ感想を抱いたよ。大抵の討龍魔術はある程度対象を絞った魔法になっている。極端に言えば、その龍専用の討龍魔術なんだ。しかし一方、『カグマの魔導書』は理論上どの龍に対しても有効な魔法なんだ」

 あれ、デメリットが無いような気がする。むしろ実用性しか感じない。

「ここまで聞くと実に汎用性がある素晴らしい術式だ。ただ一つ、この魔法にはとんでもない落とし穴がある」
「……落とし穴?」
「あぁ。そしてそれは、同時に保有量が少ない人類だからこそ獲得した新しい魔法の形だった。それが……」
「足りない魔力を補うための代償と呼ばれるものよ」
「代償?」
「さすがリザ君、その通りだよ。そしてカグマは魔法を扱った際、自身の妹を代償として使ったとされている」
「妹を?」
「うん。『カグマの魔導書』の中身を簡単に説明すれば、術者の最も大切な人間を殺すことで対象の龍を道連れにするというものなんだ」
「え……」
「本来龍の脅威から助けたかった人間を犠牲にすることで龍を殺すことを可能にした魔法。討龍魔術としての完成度は素晴らしいが、本末転倒とも言えるものだった。実際カグマは、『カグマの魔導書』にこんな言葉を遺している」

 スクリーンに文字が現れる。
 しかし、例の如く全く分からない。
 隣にいるリゼにこっそりと聞くと教えてくれた。

『後世の人間が幸福を手にする礎として、この魔法が役立つことを望み、この魔法が使われない世の中を望む』

 その言葉は悲哀に満ちているように感じた。
 自分の大切なものを犠牲にしなければならない苦しみか、思惑通りにならない無情さか。

「彼はおそらく自分の魔法が完成したものではなかったと思ったのかもしれない。もしかすれば、考えていたものと違う結果を起こしたのかもしれない。ただ、『カグマの魔導書』は各地に伝わり、それぞれの場所で独自の発展を遂げ、人類は龍の支配から脱することができた。それは、彼の願った形になったと考えられる。そうした彼の努力と苦悩の結晶は、魔導書として今も僕たちの前に現れているということだよ。魔導書という文化を反対する者も多くいるけど、魔法の発展には欠かせないものであり、それがあるからこそ魔法史はここまで発展することができたんだ……と、また話が逸れてしまったね。これ以上は専門的だし、そろそろ僕の話にも飽きてきた頃だと思うから、学院でも覗きに行こうか」
「が、学院の中に入ってもいいんですか!」

 ノノが身を乗り出す。

「あまり興奮しないの」

 リザがノノの頭にチョップする。
 
「ご、ごめんなさいです」
「あなたは私の弟子なんだから毅然とした態度をとってもらいたいわ」
「わ、わかりました」
「いい返事ね」

 リザがにっこりと笑う。
 その様子が微笑ましい。
 スカルドも同じことを思ったのだろう。俺の腰に肘をあて、そっと囁く。

「君たちはリザ君とかなりいい関係を築けてるみたいだね」
「……ノノはともかく、俺はいつもゾンザイに扱われてますよ」
「そういう風に彼女が接するのは、君に心を許しているからですよ。数年前の彼女からは考えられないことですよ」
「そう、なんですか?」
「うん。彼女も色々と苦労をしてきた人間だからね。僕と最初にあった時なんか……」
「そこ、何をブツブツ話してるの? さっさと学院に行くわよ」
「おっと、じゃあ行こうか。……この話はまた今度機会があれば」
「あ、はい」
「じゃあ行こうか」
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