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スライムと親睦を深めてみた
しおりを挟む『考える事を止めるんじゃないぞ、そこで終わってしまうからな』
うちの父さんの口癖だ。
『聞くは一秒の恥、聞かぬは一生の恥って言うからね、考えて分からなければ聞けばいいんだよ』
言い足す様にばあちゃんが言ってた。
でも父さん、ばあちゃん、俺は今聞き過ぎて頭パンクしそうです。
*****
グルグルしていても馬車は進む。
時間も進む。
夕方近く、森のすぐそばまで行き、そこで野営する事となった。
カクムンドさんは山へシバカリニ…ではなく薪を集めに、アスリムは狩に、シルジットさんとスケエリアは食事の準備だ。
俺は見張りをしている。
料理はできるんだけどね。
目玉焼きとか、レトルトカレー温めるとか、カップラーメンにお湯を注ぐとか…
適材適所って言うよね。
俺の横にはスライム。
「ねえ、そう言えば名前はなんて言うの?」
『何だ?そりゃ。
俺はスライムだぞ、知ってるだろ?』
「スライムって種族の呼び名だよね?
名前って一人一人に付く個体名?
んー、スライムって他にも居るだろうけど、ここに居る君だけの呼び名は無いの?」
『俺だけの?そんなのは無いな。
他の奴は俺を見て昨日のスライムだ!とかこの前のスライムだ!とか言うけど。
俺だけの呼び名か。
人族ってあんなに沢山居るのに、一匹ずつに呼び名が有るのか?』
逆に聞かれたので四人の特徴と名前を教えた。
「で俺がコウイチ・ササキノ。
そう言えば皆苗字に同じ文字が入ってるな、俺もだけど。
もしかして、それも選ばれた理由の一つだったりして」
後半ボソボソと独り言を言ってたら、隣のスライムがぴょんと跳ねた。
『俺も欲しいぞ、俺にも名前つけろ』
うんうん、テイムしたモンスターに名付け、これぞまさしくファンタジー。
しかしどうしよう…スライムだからスーちゃん?
スライム…スライム…ライム?
あかん、センス疑われそう。
隣からはワクワクした雰囲気と、仄かに香るアプリコットジャムの香り…
「アンズとかどう?」
発音はズが落ちる複数形の~'sっぽくね。
アプリコットジャムの香りの杏…
大丈夫、和名なんてここの世界の人はわからない…と思うし。
名前なんて覚えやすいのが一番だよね。
『アンズか、良し、これからは俺の事はアンズと呼ぶが良い』
本人が良いと言うから良いか。
『俺は人族の見分けとか付かないけど、俺の事アンズと呼ぶ奴は守ってやろう』
「見分け付かないんだ」
『大きいとか小さいとか、古そうとか未熟そうとか、大まかに分かっても見分けるのは難しいな。
お前らもスライム五十匹くらい居て俺の事見分けられるか?』
そりゃそうか。
同じ日本人であっても、コンビニバイト中、作業着の年配の集団なんて見分け付かなかったし。
「じゃあ助けて欲しい時は名前呼ぶ様に伝えておくよ。
心強いな、スライムって最強種族って教えてもらったから」
俺の言葉にぴょんぴょん跳ねるスライム…アンズ。
嬉しそうな気配を感じる。
『おお、分かってんじゃん。
スライムは最強だからな。
何かあればいつでも呼びなよ』
なんだか可愛いな。
ペットとか飼ったことないけど、会話で意思の疎通ができる分、絶対アンズの方が可愛いと思う。
用心棒感覚でいる本人にペットなんて、聞かれたら怒られるだろうけどね。
俺はそのまま食事の準備が整うまでアンズと楽しく話をして過ごした。
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